脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Song】 森田童子 / 僕たちの失敗 [1976]

心にポッカリ穴が空いた感。

 

ドラマ高校教師の印象があってか、
聴いているとカーテンの隙間から光が差す放課後の教室のような
寂しくて暖かいぼんやりとした映像が浮かんでくる曲。

ほわほわしたムードが漂う中で
一人佇み語っているように歌われている。
しかし、内容はすごく厳しい現実。
『僕たちの失敗』だ。


まあみんな失敗なんてあるもんだし、
もう俺なんか失敗だらけというか、
そもそも存在が神様の失敗作というか、
そんなレベルになると共感通り越して
情けない気分にもなったりもするのだが。


さて、この曲は俺ら世代には馴染みのない
学生運動の歌という一説もあるのがポイント。

森田童子さんはいわゆる全共闘世代で、
彼女の作品には学生運動の影響を受けたと思われる表現が散見されるらしい。
そう思ってこの『僕たちの失敗』を聴くと、
直接的な表現はないもののそう思える節がある。

学生運動で結局失ってしまった色々なものを反省と共に振り返る。
曲のほわほわしたムードが、よりその敗北を空虚で虚しいものにしている。
そう考えながら聴くと心にポッカリ穴が空いたような感覚に襲われるのだ。

確かに俺らの世代からしてみれば、
学生運動の頃の話題をテレビなんかで観ると、
「昔の人ってこんな事にエネルギー使ってたのかぁ」と
少し冷めた目線で見てしまう。

それはそれで間違いないんだけど、
やはりそれは現代の価値観での話だ。
今の時代はモノに溢れ、日常に忙しく、考える暇も与えられない。

しかし、
第二次世界大戦での敗戦の傷跡がまだ強く残っていた時代において、
一部の若者とはいえ世の中に対する不満の捌け口を知らない者が、
その熱量を放出する術として選んだのが武力的実力行使だったのだ。

勿論当時としてもそんな暴力行為は
傍迷惑だし問題行為だし社会悪に他ならないのだけど、
それを行動に移す事で何か変わるという
『価値観』が共通認識として彼らにあった。

いやはやスゴイ。
単なるベトナム戦争反対や共産主義的な思想だけでなく、
とにかく色々な不満を運動によって変えるんだという
意思の下にあんな行動に出るわけですから。

中には主張の内容よりも憂さ晴らしで参加した人もいたらしいし、
その手段も決して正しかったとは思わないけどね。

そしてそれが沈静化すると
「何だったんだろう」という虚しさに苛まれてしまう。
それがこの時代の空気感だったというわけだ。


ちょっと話が外れましたが、
まだ価値観が整わない若いときに犯した失敗。
この曲が何の失敗なのかは謎のベールに包まれたままだが、
その失敗に気づいた後で結局何も残らなかった空虚感。

実は友人の死という話もあります。
そんな喪失感が見事に曲に現われている曲だ。
淡々とした歌に乗せられた強いメッセージが響きます。


【採点】
・物凄いポッカリ感     30点
・失敗して虚しい感     30点
・エネルギーが爆発した当時 10点
・冷めた目で見てしまう現代 ー1点
69点

ぼくたちの失敗 (CCCD) ぼくたちの失敗 (CCCD)
森田童子 石川鷹彦 千代正行

曲名リスト
1. ぼくたちの失敗
2. 蒸留反応

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