脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

ドラマ電車男から10年。オタクについて再考察してみる。 その2


触れるな危険。

 

前回からの続き。

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かつてオタクが犯罪者予備軍などと言われていた時代があった。

今現在青春を謳歌している若い人たちはおそらくピンと来ないだろう。
でもそれはある意味でオタク文化が世の中に浸透してきた事の裏返しなのだ。

※注)ココでの「オタク」は漫画・アニメ・ゲーム等を好む人の意味です。
個人的には本来のオタクの意味とはもう懸け離れていると思うのですが、
一応便宜的にそう扱わせて戴いています。前回触れましたが念のため注釈。


さて、前回「オタク=犯罪者」という図式を浮かべる人は
80年代末の連続幼女誘拐殺人事件を経験したかどうかが
大きな境目になっているのではないかという話で中断した。


80年代末に低年齢の女児が次々と誘拐され
計5人が殺害されるという痛ましい事件があった。

あの残虐な事件の犯人である宮崎勤
幼女が登場する漫画・アニメを所持してロリコン嗜好だった事、
普段は大人しくて事件なんか起こしそうになかった事、
そしてそういった人物像(=オタク)の報道が加熱した事。

オタクという危険な人種がこの世にいるという人々の意識は
この事件と一連の報道の在り方から始まったのである。
あれから90年代にオタクは受難の時代に入った。

「え?オタク?やだそれ危険なんじゃない?」
みたいな腫物を触るというより汚物を触るような扱い。
そんな認識がスタンダード化してしまう。
まだ今のような価値観は醸成されていない時代だ。


しかし、皮肉な事に「社会のオタクの発見」は
むしろここからスタートしたとも言えるのがなんとも。
この事件により「オタク文化?何それ?」と
興味を抱く人も現れ始めたという事だ。

これにより90年代後半にはエヴァブーム等もあり、
オタク人口はかなり増加していたと推測される。
気持ち悪いという層もいれば気にせず楽しみたい層もいたのだ。


そして俺らゼロ年代に青春を過ごした人は、
この事件の余波は直接的には受けていないので、
オタクが事件を起こす人種という感覚は殆どない。

そこに電車男を始めとするオタク絡みのコンテンツが
続々とメジャーシーンに登場したとなると、
当時の若い人は昔のオタクを忌み嫌っていた人種とは違い、
むしろ純粋な好奇心から興味を持った人が多かっただろう。

そういった意味でオタクを題材にした電車男は、
オタクが危険という記憶が薄らいだタイミングで、
若い世代の絶好のオタクへの入り口の一つとなったわけだ。


ただ、前回述べたようにそれが作用したのは
おそらくは若い人達の一部だけであり、
結局一般的なオタクの陰気臭いイメージは払拭されずに、
「オタクはこういう人達」というオタクの生態の印象付けたという
ある意味で残念な一面もあると思われる。

それは勿論観る側の問題でもあるのだが…。


しかし00年代後半になると、
ニコニコ動画等の新しいコンテンツからの流入もあって、
吸収力の強い若い人程どんどん偏見なくオタクの世界に入ってきた。
当時の勢いは本当に凄かった。

その頃俺は家庭教師で中高生を結構受け持っていたんだけど、
半分以上の生徒が漫画もアニメもゲームも好きだし、
2007年頃に受け持った生徒はクラスではみんな当たり前に
深夜アニメの話題をするというのだから驚いた。

やはりニコニコ動画等のオタク文化への援護射撃は大きいようだ。
ニコニコ動画にカードゲーム実況動画を生徒がアップしたという時は
素直にスゲー時代になったなと先生感心したもんだ。

でもやっぱり上の世代の人の理解は
あまり進んでいない事は感じ取れるし、
それはあの事件がいかに衝撃的だったかという事でもある。


そして今現在、
10年前に電車男が拍車をかけたオタクのイメージの定着は
その少し歪な形のまま現在まで引き継がれているような気がするのだ。

電車男はまさにあの時代の空気をそのままパッケージしていた。
そういった意味ではとてもよく出来ていたと思う。

だが、電車男よりも後にオタク文化に流入してきた若い世代は
確実に俺らの世代とは違う感覚を有している。

少なくとも10年前の電車男のオタクのイメージを
今尚引きずっている人種は、
それこそあの連続幼女誘拐殺人事件で
オタクの印象が止まっている上の世代と同じ道を進んでしまうのだ。


秋葉原は完全に「萌え」化したし、
ネット語も時差はあれど大分浸透したし。
それが良いか悪いかは置いておいたとしても、
変化してきた事だけは間違いない。


そして時代に取り残されるというのは、
間違った認識を産んでしまう事と同義である。
今は旧来のオタクという定義は最早適用出来ない状況にあるのだ。
”今までオタクと言われていた趣味”は完全にメジャー化していく。

それが故にオタク文化が何なのかもう分からなくなって、
一部の人にはとりあえず「電車男」みたいなイメージで定着してしまった。

電車男」以降は、
一般的な文脈として通じるオタクの共通認識は多分生まれていない。
というかきっともう生み出されないのかもしれない。
メジャー化して浸透すると感覚がマヒしていくのだ。


…さて、なんかまだまだ書けそうなのでさらに続かせようか。

次回も、サービスサービスぅ! 

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