脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

初音ミクは結局「ソフトウェア」だったのか。その歌手人生を振り返る。

波乱万丈、初音ミクの歌手人生。

 

先日Mステの30周年特番のウルトラFESに
見事テレビ出演を果たした初音ミク
ツイッター等でもかなり盛り上がっていたようだ。

⇒初音ミクさんがMステに生出演! タモリさんとの交流にTwitterが大盛り上がり


最早説明は要らないと思うが、
初音ミクについて簡単に説明すると
2007年に発売されたボーカル音声合成ソフトであり、
誰でも歌入れをする事が出来るバーチャル歌手だ。

単なるボーカル合成ソフトとしてではなく、
可愛らしいキャラクターが自分が作った曲を
歌ってくれるという視点からの売り出し方が功を奏し、
ニコニコ動画等のネットを中心に人気が爆発した。


今回、そんなミクが生身の歌手たちのライブに混じって
Mステで地上波初パフォーマンスという事で話題になり、
バーチャルなのに何故か楽屋まで準備されるという面白い事態に!
…まあスタッフの待機部屋なんだろうけど。


しかしやはりというか色々な反応が吹き荒れた様子。

⇒ネットの声は手厳しかった…Mステ初登場「初音ミク」に賛否

「こんなのは場違いだ」「引いた」という否定的な意見から
「人気あるの知らないの?」「いい加減認めろよ」といった、
批判する人は頭の固い人といった考えの人もいたようだ。


ただ、俺の感想としては正直かなりの今更感だった。
地上波出演を喜ぶべき?いやいやもう逆に遅すぎだ。

黎明期から初音ミクの盛り上がりを見てきた人達なら、
俺だけではなくかなり多くの人がそう思ったハズ。
そもそも選曲の『千本桜』も疑問だったんじゃないか?
まあ一般的な知名度が高い曲だからこれは仕方ないとは言え。


さてさて、何が今更感なのかというと
実はもう初音ミクは既に斜陽だという話が
少し前からちょくちょく議論されているという事である。

これは実際にニコニコ動画初音ミクに詳しい知人からも
「最近は再生数が伸びていない」という話を聞いている。

バンプや安室ちゃんと初音ミクがコラボしたり、
テレビでも盛り上がっているように見えるのに、
実態はかなりのユーザが離れているのは何故か。

単純に飽きられたという側面もあるだろうけど、
根本は初音ミクアイデンティティが薄れてきているという事だ。


今回披露した初音ミクが披露した『千本桜』だが、
この曲自体は2011が初出なのでちょっと昔の曲になる。
そしてちょうどこの頃から初音ミク文化は変質し始めている。


初音ミクアイデンティティとはどういう事か。



『みくみくにしてあげる』だ。懐かしいー!
2007年の初音ミク黎明期の曲だよ。良く聴いてたぜ。
初音ミクと言えばコレを思い浮かべる人も未だに多いと思われる。


そしてMステで披露された『千本桜』


さて、上記2つの違いについてだ。

『千本桜』も全然悪い曲じゃないし良い曲だと思う。
むしろ楽曲としてのクオリティは
『みくみくにしてあげる』よりも『千本桜』の方が高いだろう。


でも「初音ミクが歌う事に意味がある」曲はどちらかという事だ。


正直『千本桜』に関しては和楽器バンドがカバーしている方が好きである。
しかし『みくみくにしてあげる』は初音ミクでしか味が出ないのだ。


さて次は2009年の『初音ミクの消失』。
 

このまくしたてるようなボーカルの速さよ。
これも初音ミクが機械だからこそ成しえるワザであり、
生身の人間とは一線を画す(実はカバーした人間もいるが…)
ボーカロイドとしての魅力が発揮された曲なわけだ。


つまり、初音ミクに歌手としての意味を持たせるには、
初音ミク=ソフトウェア」であるという事を歌詞なり音なりで
うまく活かして表現する事が重要になってくるのだ。

抑揚などの歌のテクニックで人間に太刀打ち出来ないならば、
機械である事を逆手にとるような気概とも言うべきアプローチが必要だ。

初音ミクに曲をプロデュースしたい!」という思考、
初音ミクに何らかの個性を見出して表現したいという気持ち、
これが初音ミクアイデンティティを形成していたわけである。



しかし最近の初音ミクを始めとするボーカロイド文化は、
自分の曲を披露するためのツールとしてのボーカロイドになった。

作品単位では「いい曲」は勿論あるのだが、
「歌手」としての初音ミクはもう消えかかっている。
みんなプロデューサーの「いい曲」を求めている時代となったのだ。


でもこれは初音ミクが誰でも使えるソフトウェアであるが故の
宿命だったのかもしれない。やはり彼女はソフトウェアなのだ。

ジャニーズでもSMAPにしろTOKIOにしろKinkiKidsにしろ、
それぞれに「彼ららしい曲」という何かしらのイメージがあるのは、
彼らのカラーを崩さないようにプロデュースされてきたからだ。

しかし初音ミクにはそれこそ全国津々浦々、
様々な人が自由に曲を提供するわけで、
むしろアイデンティティを保てという方が無理難題だ。
逆に少なからず歌手像があった数年間の方が異常事態である。


しかし思えば、
生身の歌手でも一部の例外はあるとしても
全盛期は大体5年前後という感覚なので、
ある意味初音ミクも生身の歌手と同じような
サイクルでの消費期間だったとも言えるのかもしれない。

そう考えると今回のMステ出演も含め、
不特定多数のプロデュースにより人気を得た初音ミクが、
生身の歌手と同じように扱われたという
その一連のムーブメントこそが面白いのだと言える。


だから今後、
初音ミクは本来のソフトウェアという形に戻るのだろう。

ソフトウェアが強烈なキャラクター性を帯びていたために、
皆がそれを歌手のように仕立て上げたという、
この事実の方が特殊であり奇跡的だった。
まるで一人の歌手の成長を見守るように…。

色んなプロデューサーの色々な曲を幅広く歌うというのは、
人間的な視点だと「成長」なんて前向きな捉え方もあるだろう。

でもその見方はあまりに綺麗すぎると言うか、
結局「成長」という言葉とは元来無縁のソフトウェアに
それを望むという事自体が幻想だったのかもしれない。

人間同様に歌手としての寿命が尽き始めた初音ミク
これからどういう方向に向かっていくのか。
全国幾多数多のプロデューサーと
初音ミクファン達にその未来は委ねられている。

初音ミク 5thバースデー ベスト 縲彿mpacts縲鰀 初音ミク 5thバースデー ベスト 縲彿mpacts縲鰀
(V.A.)

曲名リスト
1. 39
2. みくみくにしてあげる♪【してやんよ】
3. マトリョシカ
4. 初音ミクの消失
5. 千本桜
6. 裏表ラバーズ
7. 桜ノ雨
8. 恋スルVOC@LOID
9. よっこらせっくす
10. Nyanyanyanyanyanyanya!
11. トリノコシティ
12. エンヴィキャットウォーク
13. ネトゲ廃人シュプレヒコール
14. 腐れ外道とチョコレゐト
15. 二次元ドリームフィーバー
16. アカツキアライヴァル
17. はやぶさ 【ちょっと忙しい人向けver.】
18. 心拍数#0822
19. Birthday Song for ミク

1. 39
2. Birthday Song for ミク
3. カゲロウデイズ
4. LOL -lots of laugh-
5. 二次元ドリームフィーバー
6. Chaining Intention
7. 3331

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