脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

ここは『想いはきっと伝わる』という妄想列島だ。


一億総コミュ障。

 

2015年も終わりだ。本当に早いものである。
そして最近ブログも意外に続けられるもんだと思うようになった。
折角なので来年はもっと面白くシフトしていけたらと考えている所だ。


さて、今年も色々なニュースがあったわけだが、
特に今年は複数の事案に共通して感じた事があった。

それは『想いはきっと伝わる』という
J-POPにありがちな歌詞みたいなステキな勘違いのお話しである。
むしろJ-POP病とでも命名すべき?

もう上記のようなJ-POPにありがちな歌詞の蔓延が
昨今のこの状況の原因の一部ではないのかと疑いたくもなる。
みんな悪い意味で良い人過ぎる。
ああ、みんな俺みたいに荒めばいいのに!



今年の夏にかけて盛り上がった安保反対デモ。
俺は安保法案については「やむなし」と消極的に賛成な立場なわけだが、
反対デモに対して思う事の一つが「本気で廃案にする気があったのか」だ。

我々社会人は日常的にプロジェクトを達成するために動いている。
ある目的があってそれのために行動するというのはそりゃ当然の事だけど、
その中にはちゃんとした計画がある事もまた当然なのだ。

「納期がココだから、最低どの時期までにこれをクリアして、
どの時期までにどれを進めておいてどの時期までにどの準備をする。」

こんなの当たり前過ぎる話だが、さて安保反対デモの方々は
「廃案にする」という目標に向かって計画的に動いていたのだろうか?

台湾のひまわりデモなんかは単なる声を上げるデモに留まらず、
目標を達成するための戦略的かつ具体的な方法を色々実施し、
結果的には見事な立ち回りで目的を実現した。

ただただ国会前で言葉を上げ続けてさえいれば
「いつかは分かって貰える」などと考えていなかったか?
いつまでに何をどのくらいやるといった目標達成への段取りはあったか?
声さえ大きければ「想いはきっと伝わる」とか思ってなかったか?



日本と中国で争ったインドネシア高速鉄道計画の受注。
最終的に中国が勝ち取ったが、その後の日本では
「中国なんかにできるわけない」「インドネシアは分かってない」
といった自分達の方がうまくやれたのにという論調が多数見られた。

おそらく日本の方が質が高いのは間違いないだろう。
俺だって中国よりも日本の高速鉄道に乗りたいよ。
でもそれが本当の事だとしても結果的に日本は中国に負けたのだ。

これも企業の入札案件では良くある事。
「ウチがやった方が確実だ」なんていくら言ったところで
他の様々な条件や要因で他社に負ける事なんてしょっちゅうだ。

結局戦略的に負けたという事だ。
「日本がやった方がいいものが出来る」というのは多分そうでしょう。
でもそれをただ言い続けさえすればインドネシアも分かってくれるって?

中国は採算度外視でも金額や納期などで圧倒的に差をつける方向で
アジアで実績を得るだけでもと割り切って受注に心血を注いだ。
日本は「鉄道なんだから質が良いものがイイよね」という、
そこだけ伝われば受注できるという思い込みが無かったと言い切れるか?



先日の「夫婦同姓の法律は合憲」という最高裁の判決。
「別姓が認められなかった」と泣いた原告はどういう戦略で臨んだのだろう?

俺は夫婦別姓を選択できるようにする事については全然賛成だけど、
今回の判決は正直こうなってもしょうがないとしか思えなかった。
だって原告の主張が「同姓の制度によって不利益を被ったので賠償を求める」
だもん。そこをポイントにして訴えられたら「そこまでは言えない」だ。

だから最高裁も訴えられた内容について「同姓は合憲」としたまで。
訴えられた内容に素直に回答しただけでそれ以上でも以下でもない。

そして今回の判決の中で最高裁が「夫婦別姓違憲」とは言っておらず、
「別姓の法的枠組みについては国会で」と言っている事には注目すべき。
ここのところ、メディアも間違って伝えているから注意な。
最高裁は「夫婦別姓違憲」とは言ってないぞ。

日本は三権分立で立法と司法は別。裁判と政治を混同しちゃいけない。
今回に限った話ではないけれど、ここって意外に忘れられがちに思われる。
現に最高裁が「夫婦別姓については国会の問題」と言ってるわけだ。

だから本当に「夫婦別姓」を訴えるなら
裁判所ではなく国会へ法整備をアピールすべきでは無かったのでは?
勿論そっちにも働きかけているだろうし実際過去にも法案提出の動きはあった。
しかし今回裁判へ訴えた事がそちらへの追い風になるとはどうも考えにくい。

夫婦別姓を言い続ける事は結構ですが、完全に言ってる方向と言い方が違う。
言っている内容がどれだけ支持されようとも戦略が無ければ撃沈なのである。



自分たちが正しいと思う事を言い続けるというのも、
大事な事ではあるがそこに戦略が無ければただ喉が渇いて終わり。
本気で実現を望むなら『想いはきっと伝わる』という妄想から脱却すべし。



今年中国は南京事件を30万人が犠牲になった虐殺だとして
世界記憶遺産へ登録する事を実現した。

そりゃ俺も多少の事件レベルならあったかもしれないと思うけど、
30万人なんてどう考えたって無理があるし真実とは思っていない。

しかしこれも戦略が大事な世界である。中国はまたもやうまくやった。
日本がただただ「そんなの嘘っぱちだ!」と言い続けたところで
そこに明確な目的と戦略が無ければ事態は好転などしないだろう。

先日の韓国との慰安婦に関する合意についても、
日本側の対応は非常にお粗末なものだったと思う。
本当にこれで韓国が引き下がるのか不安でしょうがない。


『想いはきっと伝わる』

そんな言葉の垂れ流しを繰り返すだけのロボットにゃ未来は変えられない。
日本人の妄想コミュニケーションが色々と感じ取れた2015年だった。



さて、そんなわけで2015年の最後は結構な長文&なんか暗いという
全然パッとしない締めくくりになってしまった。えへ。
来年はみんながワクワクするような年になりますように!良いお年を!

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