脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】Radiohead / A Moon Shaped Pool [2016]


だってレディへだぜ?

A Moon Shaped Pool A Moon Shaped Pool
Radiohead

曲名リスト
1.Burn The Witch
2.Daydreaming
3.Decks Dark
4.Desert Island Disk
5.Ful Stop
6.Glass Eyes
7.Identikit
8.The Numbers
9.Present Tense
10.Tinker Tailor Soldier Sailor Rich Man Poor Man Beggar Man Thief
11.True Love Waits

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レディオヘッドはいつだって洋楽好きの心を満たしてきたバンドだ。
いつも邦楽を見下している貴方、この気持ち分かるだろう?

本当は音楽のジャンルに洋楽も邦楽も無い。
ポップがあってロックがあってR&Bがあって国境はない。
しかし間違いなく邦楽的なモノ、洋楽的なモノ、そんな違いはある。
具体的に何かと言われれば難しいが違いは確実にあるのだ。

例えばこのレディオヘッドのような音楽が受け入れられる雰囲気とか。
日本にもレディへみたいな音楽に取り組むアーティストはいるだろうが、
残念ながら日本はそれが表立って注目されるような環境ではない。

故にこういった音楽に触れる機会は圧倒的に洋楽が多い。
洋楽好きが邦楽を見下しがちな理由はココだろう。
奴ら「違いが分かる人間」的な特権階級意識を持ってやがる。
邦楽もいいよ!みんな違ってみんないいんだよ!金子みすゞだよ!


しかし事実、レディへはいつの時代も音楽の次なるステージを見ていた。
97年の『OKコンピューター』で世界の音楽業界に激震を与えて以来、
作品を出す度に彼らは多くの人間を熱狂させ、追随させ、崇められ、
今なお新時代のバンドとして君臨し続けているのだ。

ちなみに俺は『OKコンピューター』は過大評価だと思っている。
そう、皆が支持するものを敢えて支持しない俺カッケーだ。いいじゃん。


というわけでそんな洋楽好きの御神体とも言えるレディへは、
新作を出す度に洋楽好きが群がる宿命にあると言える。
何せそこには新たな音楽のステージを指し示した答えが転がっている、
そう皆に信じ込ませる程の不思議な力を彼らが持っているからなのだ。


ぶっちゃけかなりビミョーだった前作『The King of Limbs』から5年、
待ちに待っていたレディへの新作がついに登場した。

『A Moon Shaped Pool』、月が形どるプール。うーん、良く分からん。
でもそんな事はどうでもいい、きっと何かいい意味があるんだよ。
レディへのアルバムだぞ?意味があるに決まってるんだ。黙って聴け。

そんな今回のアルバム、一言で表すなら「綺麗」である。
「美しい」でもいい。ビューティフォー。いっつそーびゅーてぃふぉー。
そうか、コレが次の時代の新しい音楽になるのか。いいじゃないか。
レディへがそうおっしゃるのならそういう事なのだろう。


一曲目『Burn The Witch』から
いきなり溢れんばかりに美しきストリングスが飛び込んでくる。
一気にアルバムの世界に引き込まれる程に強力な入り方だ。

そして綺麗な曲とは裏腹にタイトルは『Burn The Witch』、
つまり「魔女狩り」である。歌詞はなかなかに怖い。
昨今蔓延する言葉狩りのような風潮を
昔行われていた魔女狩りになぞらえた内容だろうか。

ネットが発達したのに、結局みんな言いたい事が言いづらい雰囲気。
このテーマは最近みんな良く歌にしたがる題材ではあるのだが、
トムヨークが言うとまた違う響きになる。なんか俯瞰してそう。

他の曲も陰鬱な雰囲気ながらも美しく広がるような音楽が多い。
アルバムは全体的にアコースティックで落ち着いた感じだ。

前作キンリムはズンとビートが響いててお腹に優しくない音楽だった。
そんな前作でお腹を下した我々に、そっと痛みを和らげる薬が届いた。
アメとムチかよ。次はまたお腹にくる音楽を持ってくるんかいな。


レディオヘッドが次に目指した場所はここだったのか。
綺麗で落ち着いた憩いのような音。しかし焦燥感は拭えない。
ぎりぎりポップであり限りなく日常的。そんな気分の作品だ。
この絶妙なバランス感覚こそがレディへの成せるワザだろう。


これこそが次に音楽業界が向かうべきステージらしいぞ。
レディへがそう言ってるんだからそうに違いない。
みんな心してついて行こう。

ただトムヨークのソロとの違いは良く分からなくなってきた。
バンドでやる意味はどれだけあるのだろうかとは思わんでもない。
でもレディへの事だ。きっと何かした意味があるんだろう。
レディへなんだからきっと意味があるに違いないんだよ。

もうダメだ、思考停止になってきた。
意味が分からなくてもスゴイと思わせるレディへの魔力恐るべし。

今度のサマーソニック、彼らのステージに注目である。


【採点】
・俺らのレディへの新作 30点
・美しくも陰鬱な世界  20点
・次の音楽が向かう場所 20点
・だってレディへだぜ?  5点
75点