脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】RADWIMPS / 君の名は。 [2016]


君の前前前世は。

君の名は。(通常盤) 君の名は。(通常盤)
RADWIMPS

曲名リスト
1. 夢灯籠
2. 三葉の通学
3. 糸守高校
4. はじめての、東京
5. 憧れカフェ
6. 奥寺先輩のテーマ
7. ふたりの異変
8. 前前前世 (movie ver.)
9. 御神体
10. デート
11. 秋祭り
12. 記憶を呼び起こす瀧
13. 飛騨探訪
14. 消えた町
15. 図書
16. 旅館の夜
17. 御神体へ再び
18. 口噛み酒トリップ
19. 作戦会議
20. 町長説得
21. 三葉のテーマ
22. 見えないふたり
23. かたわれ時
24. スパークル (movie ver.)
25. デート2
26. なんでもないや (movie edit.)
27. なんでもないや (movie ver.)

Amazonで詳しく見る by G-Tools


いい加減この話題をやってやる。

映画「君の名は。」の勢いがすげぇ。興行収入150億突破だよ。

てかジブリ以外のアニメ映画で興行収入100億突破は初めてだろ。
でも日本のアニメ映画もいつまでも宮崎監督ってわけにもいかないしね。
ここで新海監督の名が一気に広まったのは良い事ではないか。


そしていきなりだが俺は映画「君の名は。」は観てない。
観てないけど、観てないからこそ観てない上でこの記事を書く。

別に新海監督がキライとか言うわけではない。
学生時代に新海監督初の劇場作品「ほしのこえ」を観たときは衝撃だった。
エヴァの路線を踏襲しつつより身近に感じられるセカイ系
今思えばあの頃から間違いなく彼は次世代アニメの担い手だった。

だが今回の「君の名は。」だ。
まぁ俺もそのうちレンタルとかで観るだろうけど、
映画館には足を運ぶ気になれない。
なんでかってもうリア充がすっごいの。キラッキラしてんの。

この前会社の後輩も「え?こへいさんまだ観てないんですか?君の名は。
とかそれはもうキラッキラした顔で言うわけよ。もうイラッイラだよ俺。
「僕の友達なんかもう6回観たらしいっすよー」とかなんだよもう。
みんなリア充の度が過ぎてない?その足で『聲の形』も観るんだろ?


2000年代後半になるとサブカルとオタクの境界が徐々に曖昧になった
というかサブカルがオタクの領域喰い始めた結果サブカル寄りのリア充
旧来オタクコンテンツと言われた領域にまでじゃんじゃん流れ込み
最近はもう一億総オタクかつ一億総リア充みたいな変な状況なのコレ。

そして今回、新海監督のこの映画が100億を突破した出来事をもって、
旧来のオタクコンテンツのリア充化作業は完了となった。
俺は泣いた。アンチリア充アイデンティティが静かに壊れた。


そんなリア充化したアニメなんて俺は映画館で観たくない!!

だって映画館にはキラッキラしたカップルがわいのわいのしてんだろ?
座席でイチャイチャしながら手とか繋ぎながら一緒に映画を観て、
そして既にお互いの色んな事を知ってるにも関わらず
映画の真似して「君の名は?w」とかとぼけた会話して胸キュンなんだろ?
終いには一緒に前前前世を歌ったりして満満満足なんだろ?

やばい、寒気がしてきた。もうそんな季節だしな。羽織ろう。

恋愛に溺れる恋愛至上主義者は大人しく月9ドラマで我慢してくれ。
もうやめて。とっくに俺らのライフは0なんだから。追い打ち良くない。


と前置きが大分長くなったが、この同名映画のサントラ的位置付けの
RADWIMPSのアルバム『君の名は。』だ。

映画は観ていないくせにこのアルバムは聴いた。
本来ならこんな記事書く資格も無いと思われるが、そこは捻くれた俺だ。
敢えて映画観ないでアルバムだけ聴いた俺のコメントを見やがれ。


まず、これまでの話から察して戴けると思うが、
俺は今までラッドの曲はあまり進んで聴いてこなかった人間だ。
良くラッドとセットで語られるバンプは好きなんだけどね、
ラッドはあの恋愛ソングのクラクラ具合がヒリヒリしてしまうんだよ。

だがテレビとかで『君の名は。』の話題になったときに
『前前前世』が流れまくってるのを聴いてたら自然に脳がやられてた。
だって凄いだろこの曲。こんな歌詞誰が書ける?野田洋次郎ぐらいだろ?

君の前前前世から僕は君を探し始めたよ

こんなん言える?言えないだろ?
言えて「前世から僕は君を探してた」くらいだよ。

そう、普通のアーティストならこの「前世」くらいで想像力が止まる。
もしくは恥ずかしくて歯が浮くような感じのセリフになるのを避けるか。
どちらにしてもさらにその一歩先の表現になかなか辿り着けない。

ところが、だ。
野田洋次郎はその一歩先どころか二歩先の「前前前世」まで行った。
こいつぁヤバい。マジか。前前前世から君を探してるとか正気じゃない。

まず今の年齢を16歳の高校生としよう。
「前世」は今から16年前だ。しかしさらにその前世「前前世」となると、
天寿を全うしていたとしたら約80年追加されるので96年前である。
そしてさらにもう一つその前世「前前前世」だ。
96年前の平均寿命は大体42歳くらいなので加算すると138年前。

しかしちょうど138年前だともう晩年であるため青春時代まで戻す。16歳になるまで平均寿命から逆算するとさらに約26年前になる。
以上から計算すると「前前前世」とは164年前、1852年である。

そう、なんとペリーが来航する前年から君を探してたのだ。
君の前前前世に彼は君を探しつつ黒船も見たかもしれない。

前世がよほど短命な人生だったか、
あるいは人外の生物に輪廻転生していたか、
そうでもない限り君の前前前世を遡るとそうなるのだ。

「そんなわけないやろ!」と思うだろ。そう、そんなわけないハズだ。
でもそんなわけない歌詞を堂々と何の恥じらいもなく書けちゃうのが、
野田洋次郎その人だ。これをオリジナリティと呼ばずしてなんと呼ぶ。


そんな「前前前世」収録の『君の名は。』のアルバム、
「前前前世」以外には歌入りの曲は4曲収録されており、
その他は映画の劇中音楽が入って合計27曲となっている。

また歌以外の曲も全て野田洋次郎が担当しており、
この映画全編を通してラッドが全面的にバックアップしている。
そもそも映画の企画を始めたのが新海と野田の二人だったという話だ。
ラッドがあってこそこの映画は成り立っているわけだ。

だからラッドのアルバムといいつつもこれは完全に劇伴音楽集だ。
つまり映画を観ていない俺には正直歌モノ以外の部分が全然分からん
『糸守高校』どこやねん。『奥寺先輩のテーマ』誰やねん。
『飛騨探訪』行ってこい。『町長説得』頑張れ。

いやマジでなんで俺コレ聴いて今こうやって記事書いてんだろ。
レビューになってねーじゃん。いつもの事だが今日は輪をかけてひどい。
ごめんなさい。映画見てないくせに聴いちゃってごめんなさい。


でもこれらの曲一つ一つが映画を観た人にとっては感動するんだろう。
感動して何度も観た人が沢山いるという事は、
これらの音楽もそれだけ彼らの思い出に焼き付いているわけだ。
それだけラッドの音楽がこの映画に貢献していた事が伺える。

また、映画を観ていない俺でも、
なんだかんだでサントラ部分でほんのりとした情景が浮かぶ。
音楽が持つイメージが新海誠のあの美麗な映像をバックに膨らむ。

これはまさに新海誠の方もラッドのアルバムに深くクロスしている証だ。
ラッドと新海誠、共に造り上げた世界がこのアルバムでも感じられる。
観てない俺でコレだ。何度も観た人は強烈にフラッシュバックするだろう。


真面目な話、このアルバムは音楽の新たな可能性も示したと思う。
オリコンでは2週連続一位となる売上を記録し、
サントラとしては異例の大ヒットを飛ばしている。

海外の映画でサントラがバカ売れするのは良くある話だったが、
シングル文化が根強い日本ではサントラは殆ど需要が無かった。
しかしここ数年でアナ雪のサントラがヒットとなったり、
ゴジラのサントラも話題になったりと音楽+αの形でブームが起こった。

そして今回の『君の名は。』だ。今回はただのサントラと違い、
RADWIMPSという人気バンドで全力投球しているのはデカい。

以前サザンの桑田が『稲村ジェーン』の映画のサントラで
ミリオンヒットとなった事もあったが(ちなみにあのアルバムは名盤)、
桑田自身が映画監督までをやったあの時とは違い、
こちらは人気アニメ映画監督の映像と人気バンドの音楽が
オーバーラップする事で生まれる相互作用という点が重要である。

こういった音楽をただ音楽としてリリースするだけではなく、
それに伴うストーリーを映画という別の文脈に持たせる事で、
映画も音楽もどちらも大ヒットとなるロールモデルが出来た。

これは今後似たような展開でまた新しい何かが生まれるのか、
それとも「二番煎じ」のレッテルで終わるのか、注目したい事案である。


聖地巡礼でも話題になった『君の名は。』だが、
映画館が無かった聖地で上映会をする事が決定したそうだ。
まだまだ世間のリア充熱は収まりそうに無い。

しかも『聲の形』と『君の名は。』で互いにブーストかかってない?
てか聲の形は漫画読んだけどアレそんな万人受けする映画か?
あれもかなり大ヒットしてるっぽいけどまたリア充の仕業ですか?

今日の記事の半分はリア充への文句で終わってしまったけど、
とりあえず「前前前世」はいい曲だよ。一緒に幕末を感じようぜ。


【採点】
・ラッドと新海のコラボ炸裂 20点
・映画と共に爆発的ヒット  20点
リア充コンテンツ爆誕   20点
・前前前世は幕末       5点
65点