脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】電気グルーヴ / TROPICAL LOVE [2017]


裏切られてホッとする。

TROPICAL LOVE TROPICAL LOVE
電気グルーヴ

曲名リスト
1. 人間大統領
2. 東京チンギスハーン
3. 顔変わっちゃってる。
4. プエルトリコのひとりっ子
5. 柿の木坂
6. Fallin’ Down (Album mix)
7. ユーフォリック
8. トロピカル・ラヴ
9. ヴィーナスの丘
10. いつもそばにいるよ

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何か音楽流そうかなーって時は、
その時のテンションや精神状態に左右されるもんだ。

ノリノリでアゲたい時はダンサブルな曲、
しんみり落ち着きたい時はバラードナンバー、
フラストレーションを爆発させたい時はゴリゴリのロックなど、
その時その時の気分で聴きたい曲ってのは変わってくる。

そういった意味ではね、電気グルーヴの曲ってさ
どういった時に聴きたくなる音楽なのか分からないの。
テンションが上がるわけでも下がるわけでもなくて。
電気グルーヴのファンの方々はいつ聴いてるんだろう?
休日の午後のティータイムとか?わーい、エキセントリック!

俺の中では、そんな誉め言葉だかなんだか分からない
謎の位置づけとなっているアーティストである電気グルーヴの新作だ。
いつ聴こうかタイミングに迷った挙句、
結局休日出勤の出社中の車中で聴いた。なんかそんな気分だった。


さて、というわけでこの『TROPICAL LOVE』。
電気グルーヴ自身は最高傑作という自信に溢れた一枚らしいのだが、
この手の言葉は消費者はそのまま受け取ってはいけないぞ。
本人達が目指すものと俺らが期待するのは案外違ったりするからだ。

アーティストというのは常に最高傑作を目指している(と思う)し、
そのタイミングで受けた刺激やその時の趣味趣向等もあるわけで、
後から振り返った時にあくまで「その時点での自分を出し切っている」
かどうかがポイントなわけだ。だから俺は最新作というのは必ず
その時のそのアーティストの最高傑作である(あって欲しい)と思っている。


と持論を展開したところで『TROPICAL LOVE』だ。
電気グルーヴにしてはタイトルがかつてない程に甘美な響きである。
少し前にゴキブリの曲を作っていたとは思えない。


トロピカルラブ…
南国のビーチでアハハウフフしてるカップルが目に浮かぶ…。
ああ、張り倒したい。ゴキブリ投げつけて絶望させてやりたい。


そんな南国の陽気な雰囲気を感じさせるアルバムの一発目がコレ。
『人間大統領』


ああ、良かった!電気グルーヴだ!
「とろぴかるらぶ」の欠片も感じない一発目!
不思議だよ。裏切られた事に対する安堵感。この感覚こそが彼らだ。

だがこの人間大統領、MVも非常に面白い。
電気と昔から親しく過去も数回MVを制作してきた天久聖一が担当。
バカドリルで有名な方だ。最近は書き出し小説大賞でも注目されている。

このビデオ、「初見で嫌悪感、二度目で苦笑、三度目で失笑、
 四度目で爆笑、五度目で中毒。」みたいな紹介がされていたんだけど、
俺は初見で面白かった。というかそんなに嫌悪感示す人いるのかな?
ネタの混ぜ合わせ方が最高にシュールだし曲とも良く合っている。

「誰でも大統領になれるんだ!」とかいう小学生が描きがちな夢を
応援してくれるような歌詞が、とても皮肉っぽく聞こえる素晴らしい曲。
歌詞のワードのチョイスがどれも秀逸。ニュアンスで感じる文学である。


そんなパンチ力抜群の一曲目から次は『東京チンギスハーン』。
この曲への入り方も凄い良くて引き込まれるんだけど、
相変わらずトロピカルラブからは遠い位置にいて全然トロピカらない

そして次の曲は『顔変わっちゃってる』。
もう完全にトロピカルラブと真反対の方向に走っちゃってる。
本当に何故このアルバムタイトルにしたんだ。女子ウケ狙いか。


だが次の4曲目『プエルトリコのひとりっ子』辺りから
ややトロピカル感が感じられ始める。プエルトリコは赤道近辺だしね。
この後8曲目のタイトル曲『トロピカル・ラヴ 』まで
徐々に親しみやすくなっていきアルバムタイトル感が出てくる。

序盤で裏切っておいてからのこの切り返し。なるほど、納得。
このアルバムは最初からトロピカルなわけではなく、
徐々にトロピカルな世界へと導いていくというストーリーだったわけだ。
『トロピカル・ラヴ 』は本当に心地よい身を預けたくなる曲である。


そしてそんな流れで最終曲は『いつもそばにいるよ』。
おお、このアルバムの締めくくりでついにラブラブ感があるタイトル。
なんとも青山テ○マ臭がする曲名だけど、まぁラストにはいいんじゃない。

謙虚な態度装ってくる 土産も持ってくる
いつだってそのやり方でわかってる人にゃわかってる


ですよねー。
電気グルーヴがそんなベタな「そばにいる」曲やるわけないですよねー。
イントロの不気味さから「あ、絶対これラブじゃない奴だ」と思ったよ。
良かった。最後の最後でまた裏切られて安心した。ああ、マゾだな俺。


そんなわけでとにかく電気グルーヴに翻弄されるアルバムだった。
だがそれこそが心地よい。そう考えると最終的にタイトルは
『TROPICAL LOVE』で正解だったんじゃないだろうかと思えてくる。

これを女子高生とかが「へーTROPICAL LOVEだって~、聴いてみよっ♪」
とか言って手に取る事を切に願っている。


【採点】
・コンビニ袋にスタンガン  20点
・産まれも育ちもプノンペン 20点
・勉強机に手榴弾      20点
ベネチアグラスの火炎瓶  20点
80点