脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】DADARAY / DADAISM [2017]


川谷さん、遊びが過ぎませんか。

DADAISM DADAISM
DADARAY

曲名リスト
1. イキツクシ
2. block off
3. ダダイズム
4. 美しい仕打ち
5. 灯火

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ゲスの極み乙女。のニューALも話題になっているが俺はまだ聴いてない。
でもとりあえずその前哨戦としてこのアルバムだ。
DADARAYの1stミニアルバム『DADAISM』。

何が前哨戦かって言うと、このDADARAYというバンドは、
ご存知あのゲス乙女のフロントマン川谷絵音
楽曲提供を行っているバンドという事で話題になっているからだ。

言わば完全に川谷の傀儡政権別プロジェクトみたいなもんで
ゲスの極み乙女が最新作で本格的な活動再開を迎えるための
ソフトランディング的なポジションにあるバンドだ。


と、説明するとなんだかゲスの噛ませ犬みたいなイメージになってしまう。
ゲスが本丸でその他のプロジェクトなんてお遊びなんだろう、て。

でもね、えのぴょんは本当にお遊びが上手だと思った。
さすが色々と危険な遊びに興じるだけある。
というかゲスだって多分最初はお遊びだったんじゃないかって思うぜ。
実はindigo la Endがメインだったとかそんな気がする。


このバンド、ゲスのベース休日課長と、
キーボード・ボーカルの女性が2人の計3人組という珍しい構成だ。
てか休日課長ハーレムかよ。いい想いしてんなあんちくしょう。
奴が雑誌の裏表紙とかにある札束の風呂で女性従えてる
成金男みたいに見えてきてなんか無性にイライラしてきた。

そんな俺のイライラもあってかこのアルバムを最初聴いたときは、
正直そこまで良くは無かった。悪くは無い。でも何かが足りない。
休日課長へのイライラとは別に、俺の中で納得出来ないものがあった。


おそらく、俺の中ではこの手の曲は
あの川谷絵音の声とセットであるという印象が強すぎたんだと思う。
女性のボーカルの声も綺麗だが、悪く言えば凡庸。個性的って感じではない。

だからえのぴょんの曲をえのぴょんが歌っていないというその事実が
やけに際立ってしまって俺はその違和感を払拭できなかったのだ。

恒常的に病んでる俺は多分毒っ気みたいなものを求めていたんだよな。
えのぴょんのあの声から生み出されるあのムードに
ダークさがあったから、俺はそれを無意識的に欲してしまっていたのだ。
あーあ、ロック常用者の辛いとこね、これ。


それでも、だ。このアルバムの持つ雰囲気はやはり不思議だったのだ。
そこまで良くなかったといいつつ、俺は何かを確かめるように繰り返した。
ミニアルバムってのも良かったのかな。フルだったらしんどかったかも。

すると、5回目くらいからなんだか良さが徐々に沁み渡ってきた。
えのぴょんの呪縛が解かれたのだろうか、
それとも休日課長を許せるようになったのだろうか。
とにかく俺には良さを理解するのに時間を要するアルバムだったようだ。

ゲスと比べてしまいがちだが、良く良く聴いてみれば
女性ボーカルだからこそだな、という部分がこのアルバムには多い。

川谷自身がゲスのイメージが染みついた自分が歌うよりも
クリアで透き通った声の女性が歌った方がいい、面白い、
そういった考えに基づいた曲を提供している感じがする。


このバンドの由来でもあり、収録曲にもある「ダダイズム」というのは
芸術思想的な用語で否定・破壊といった攻撃的な様子を指している。
ダダイズムとは随分と大きく出たな」と思わないでもないが、
そんなコンセプトを自分自身は直接参加しないバンドでやる辺りが
川谷絵音らしいとも思うのだ。ちょっとした実験も兼ねてそうで。

ちなみに『ダダイズム』という曲は、
川谷お得意のプログレ風ラップを女性ボーカルでやっている曲で、
このアルバムの構成の中でも特に重要と思われる。

さらっとしたポップスが多い中でこの曲はちょっと変わり種。
ボーカルもこの曲では捻じ曲がっている。性格も曲がらないか心配だ。
でも綺麗なボーカルの曲が続く途中にこういう変異があるのは好き。


そして個人的に良いと思ったのがラストの『灯火』である。

諦めて大人を知り過ぎて もっと腰が曲がっても
君はそのままで どうせ想うから ごめんね 

達観・希望・羨望・自虐…色んな感情がごちゃ混ぜになった曲だ。

時折、曲の途中でガスコンロのスイッチを回したような音が
シンバルで表現されており、火を点ける様子が想起させられる。
時間が過ぎて、消え入りそうで、でも抗って再び灯そうとする。
そんな静かな緊迫感がうまく現れてて憎い。


ゲスの川谷はやはり只者ではない。
ゲスの新作の前哨戦とかいいながら、しっかり聴いてしまったアルバム。
これは自然とゲスの方のアルバムも期待値が高まってしまうぞ。

あ、でもDADARAYもまた5月末に出すのね。
相変わらず忙しいねぇ、えのぴょんも。
でもまぁいいんじゃない。休日課長には休日を与えるな!


【採点】
・川谷新プロジェクト   30点
・川谷のダダイズム実験場 30点
・川谷の呪縛を解け    20点
・休日課長には呪縛を   -5点
75点