脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】GLIM SPANKY / BIZARRE CARNIVAL [2017]


ゆとりとおっさんを繋ぐ。

BIZARRE CARNIVAL(通常盤) BIZARRE CARNIVAL(通常盤)
松尾レミ GLIM SPANKY

曲名リスト
1. THE WALL
2. BIZARRE CARNIVAL
3. The Trip
4. 吹き抜く風のように
5. Velvet Theater
6. END ROLL
7. Sonntag
8. ビートニク
9. 美しい棘
10. 白昼夢
11. アイスタンドアローン

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クラスの中にちょっとおっさん趣味みたいな女子いませんでした?
少し人と違う雰囲気だけど喋ると意外と面白いみたいな。

そう、あなたの事ですよ、あなた。こんな文章読んでる暇あったら
ネイルサロンとか行って女子力磨いた方がインスタ映えしますよ。
そしてその瞬間から俺は貴方の敵になります。
俺はインスタ映えしない全ての女子と松尾レミちゃんの味方です。

そう、GLIM SPANKYのボーカルの松尾レミちゃん。
控えめに言ってもめっちゃ好きなんだけど、
彼女はおっさん趣味でありかつインスタ映えもするという稀有な存在だ。

ハスキーボイスと渋い音楽性で注目を浴びている彼女は、
クラスで周りに趣味が合う友人とかいなかったんじゃないかと予想する。
完全に俺の勝手だけど、彼女にだけはリア充キャラでいて欲しくないの。


しかしGLIM SPANKYは今や邦ロック界でもかなり独特の存在になった。
ロックキッズ達が嗜んでいる音楽とはやや離れたポジションにいて、
邦楽の若手の話題になっても名前が挙がる事はかなり少ないし、
俺の周囲の音楽好きにも全くと言っていい程名前が浸透していない。

実際に彼らのライブに行くと、ライブキッズは殆どいなくて
集まっているのはおっさんばかりだと本人たちが語っていた。
流行に根差さない位置でおっさんファンを拡大し続けているのが彼らだ。


そんなGLIM SPANKYの3rdアルバムである。
率直な感想は「マニアックやなー」である。

しかし、おそらくこれこそがGLIM SPANKYのルーツ・ミュージックだ。
1st,2ndは良くも悪くも音楽市場を意識した節があって、
「若いバンド」を感じさせる曲も結構あった。

だが今回の3rdは毛色が違う。あの若いバンド臭が消えている。
完全にライブキッズ置いてけぼりでおっさんに照準を合わせている。
そういった意味で今度のアルバムは「マニアック」なのだ。

かなりサイケデリック感が強い。彼らの趣味であり好物なんだろう。
平成も終わろうとしている時代に、60~70年代の息吹を感じる作風。
先行のミニアルバムからその気配はあったがこれで確定申告だ。


『The Trip』に「ニールが歌ってくれる」という歌詞があるけど、
これはアメリカの歌手ニール・ダイアモンドの事だと想像している。
こういったおっさん向けのネタを入れてくる辺りがもう趣味全開。

ニール・ヤングという可能性もあるが、
2番で「ルーシー笑って消える」という歌詞があり、
コレをビートルズの曲『Lucy in the Sky with Diamonds』と考えると、
ダイアモンド繋がりでニール・ダイアモンドの可能性が高いと推察。
でも音楽的にはニール・ヤングの方が近いのかも…
なんて妄想をしてしまう俺はもう既にGLIM SPANKYの掌の上だ。


そしてもう一つ、今回のアルバムから感じられるのはノマドだった。

特にアルバムのリード曲『吹きぬく風のように』は
そんなノマドの自由感を歌った爽快なナンバー。



自由を歌った歌は星の数ほどあるわけだが、
こういったヒッピー文化が花開いた時代のような、
開放的でノマド的な自由観を今の時代に再構築した曲は珍しい。


そういえばGLIM SPANKYの2人がwowowのインタビュー番組で
『自分達を構成する9枚のアルバム』を紹介してたんだけど、
その一覧がこちらになります。

White Stripes / Elephant【2003】
Beatles / Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band【1967】
③Temples / Sun Structureskakko【2014】
PIZZICATO FIVE / overdose【1994】
KASABIAN / VELOCIRAPTOR!【2011】
The Black Keys / El Camino【2011】
Led Zeppelin / Houses of the Holy【1973】
⑧Derek and the Dominos / Layla and Other Assorted Love Songs【1970】
Wilco / Sky Blue Sky【2007】


…シブ。

ゆとりのロックキッズは基本知らないorスルーしてるヤツばっかじゃん。
通じるのってギリギリKASABIANくらいじゃないですかね。
しかしLed Zeppelinで4枚目じゃなくて5枚目を選んでる辺りさすが。
俺もツェッペリンは断然5枚目派だ。気が合うね。いつか飲み行きたい。

そんな俺が周りとも合わないように、彼らも周りと合うわけがないんだ。
特に松尾レミちゃんは声がハスキーな事がコンプレックスで
合唱コンクールが嫌いだったという大山のぶ代的エピソードを語っていた。

そうそう、レミちゃんは実はGoose Houseの前身ユニットにいたんだって。
HEPTAGON(通常盤)

絶対合うわけがないじゃん

いやGoose Houseに恨みがあるわけじゃないんだけどさ、
つーか勝手な推測だけどさ、レミちゃん居心地悪かったんじゃない?
俺だって会社の飲み会とか居心地悪いから気持ち分かるよ!

先行ミニのタイトルトラックでアルバムのラストを飾るナンバーの
『アイスタンドアローン』。1人でも力強く立ち上がるという孤高の歌。
自分を形作るのは集団でも場所でもなく自分自身のみ。そういう事ですね。

もうなんだか一曲一曲の重みに大御所感が出ていて、
レミちゃんとか亀ちゃんとか呼んでるこっちが逆に恥ずかしい。
レミ様と亀本様に訂正です。彼らはゆとり世代の重鎮です。
バカにしてたら痛い目見ます。ああ、レミ様にハイヒールで背中を(略


あとこれも先行ミニでお披露目済みだった曲だが、
個人的に心に沁みた曲が『美しい棘』。



切なく響くサビのメロディで謳われる歌詞が響く。

棘に刺さりながら少女は今
深い傷を増やして喜びを知っていく
今までとなりに居たあなたから手を離せば最後
もう知らぬ人

少女が様々な苦難を経験して大きくなっていく姿を歌った曲だが、 
俺も娘を持つ身としてはね、この歌詞は非常にグッと来るものがある。

少女は知らぬ間に成長して、そして気付けばもう知らぬ人なんだよ。
この曲がもし娘の結婚式とかで流れたら泣かずに立ってられる自信は無い


そんなわけでマニアックな路線に走ったグリム渾身の3rdアルバム。
ジャケットはビートルズのサージェント・ペパーズを想起させる構図で、
今までジャケットが微妙だと思っていたグリムだが今回はかなり好み。
サイケデリック感がある。あとレミ様の服装がステキです。

今後も邦ロック界で独自のポジションを貫き通すといった
覚悟を感じられるアルバム。とっつきにくいかもしれないが濃厚だ。
おっさんもおばさんもゆとり世代ノマドワーカーも、皆仲良く聴こう。


【採点】
・グリムの趣味炸裂  30点
・孤高のポジション  30点
ノマド的自由の歌  20点
・娘がいる人は泣く   5点
75点