脱R論

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【Album】St. Vincent / Masseduction [2017]


ヘイ、尻!

Masseduction Masseduction
St. Vincent

曲名リスト
1. Hang On Me
2. Pills
3. Masseduction
4. Sugarboy
5. Los Ageless
6. Happy Birthday, Johnny
7. Savior
8. New York
9. Fear The Future
10. Young Lover
11. Dancing with a Ghost
12. Slow Disco
13. Smoking Section

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今回も昨年の洋楽からピックアップ。
というわけで「カッコイイ女性」の代名詞となった
St.Vincentの最新作『Masseduction』を紹介したい。

メディアで「異彩を放つ」なんて表現がやたら飛び交う昨今だが、
もうそんなセリフは彼女を見てから言って欲しいよね。
そしたら「異彩を放つ」⇒「個性的」ぐらいにトーンダウンするから。

それくらいに圧倒的なオリジナリティで人気を集める
St.Vincentことアニー・クラークことSt.Vincent。
俺も3rdの『Strange Mercy』から虜になってるアーティストだ。


St.Vincentと言えばその前衛的なアート・ロックが特徴。
今まで聴いた事が無いような癖のあるサウンドを武器に、
各種音楽メディアから高い評価を受け続けている。
当然のように今作『Masseduction』も高評価の模様だ。

ちなみに『Masseduction』は造語らしい。
知らない単語だったからぐぬぬ…英語力が足りない…」
と悔しさを噛みしめながら泣く泣く検索したら
ヒットしなかったんで造語だったと分かった。良かった。

意味はMass(大衆)+Seduction(誘惑するもの)で
「大衆を誘惑するもの、人を呑み込んでしまうもの」といった
なんだか新興宗教の開祖的な意味を持たせているらしい。
かなり大きく出たタイトルのようにも思えるな…。


そしてアルバムジャケットは赤色の背景にピンクの尻。
このなんとも言えないシュールさがすっごいアートである。
良く分からないものはとりあえずアートと言っておきたいという
俺の劣情をチクチクしてくるデザインなのである。

ちなみにCD版では右半分に彼女の尻があるが、
LPの限定版ではどどんとアップでど真ん中にあるらしい。
彼女のヒップが大きな絵で欲しい場合はLP盤をどうぞ。
そして玄関とかに飾っておけば訪問者がびっくりする事間違いなしだ。


そんなインパクトがあるジャケットなんだけど、
彼女のこのアルバムはヴィジュアル面も注目すべき点だ。
元々彼女はヴィジュアル面にも力を入れており、
ジャケットやMVもサイケデリックなモノが多いが、
今回は特にヴィジュアル面が強烈だと思った。

今回のアルバムの収録曲のMVも
この赤やピンクの目に優しくない配色が非常に印象的である。
見てると無性にマンゴーとかオレンジが食べたくなる。



だからこのアルバムを聴くときは
このジャケットのイメージがやたらと浮かんでくる。
でもそれこそがヴィジュアル面も絡めてしっかりと作品を作る
彼女の狙いでもある。彼女の音楽は耳から聴くだけではなく、
ヴィジュアルもセットで楽しむのが正しいのだろう。


曲はまたもや独特で一癖も二癖もある音楽。
1回聴いただけじゃ好きか嫌いかも判断できないような音楽だ。
これまでのアルバムを聴いていたとしても、
こうやって毎回新鮮な気分になれるから凄いのだ。

でも今までのアルバムと比べると聴きやすい方かなと思った。
曲になめらかさがある。でもこれがアルバムのテーマである
「大衆を誘惑するもの」であるとするならば気を抜いちゃいけない。
彼女は我々を惑わすためにこのアルバムを作ったとも言えるわけだから。


しかし扇情的なジャケットと言い「惑わす」というテーマと言い、
彼女が性的な魅力をフィーチュアしたアーティストかと言うと
俺は決してそんな事は無いと思う。確かにアメリカには
セクシャルな部分で注目を集めたアーティストも多いが、
St.Vincentからはそんな匂いを全く感じないのよね。

確かに今作には「性」を扱った曲も収録されているけど、
彼女は「女性版デヴィット・ボウイ」と呼ばれる程に
変幻自在に自分を切り出す根っからの表現者なのだ。
どちらというと「職人」と呼ぶ方が近いのかも。
自分の中にある想いを作品としてただただ提示し続けている。


以前、彼女は女性モデルとの交際を報じられ、
ゴシップの格好の的にされた事があった。

以前よりマシになったとは思えるけど、
LGBTやセクシャルな問題については
まだまだ意識が浸透しているとは思えないのが現状だ。

そんなご時世にゴシップが報じられた彼女の最新作が
ヒップを突き出しているジャケットというのは非常に挑戦的だ。
「ゴシップにするならお好きにどうぞ。でも私は私よ。」
そんな一人の強い女性としての存在感を示している気がする。

いや、強い「女性」とか「女性版」デヴィットボウイなんて
言い方がむしろ失礼ですね。訂正しますね。すみませんね。
ポリコレポリコレ物騒な昨今、軽はずみな発言をしちゃ危ないね。


でも冗談抜きで彼女はそういった「社会に挑戦している」女性だ。

タイトル曲『Masseduction』と日本盤のボーナストラックの
『Power Corrupts』では「セイケンノフハイ」という
日本語でのシュプレヒコールが聴ける。どこで仕入れてきたんだろ…。


つまり性的なテーマだけではなく、
彼女はこのアルバムで政治や薬物など
「人を虜にしてしまいそうな誘惑」を色々と詰め込んで、
「あなたは耐えられますか?」と言った問題提起をしている。

こんな彼女の姿を見て「カッコイイ」と思わずにはいられないのだ。
このアルバムは言わば彼女からの「挑戦状」である。
社会に存在するあらゆる誘惑に打ち勝ち、
いかに自分という存在を世間に示していけるのかを問いかけている。


と、このアルバムについて色々と考えていると
なんだかんだで結局大きく出たアルバムだったな。
でもこういったアーティストに人気が出るのもアメリカの魅力。
日本じゃこの手のアーティストはキワモノ扱いされて終わりそう…。

彼女から「このアルバムに浸っているようじゃダメだよ」と
そんな事を言われている気がして、でも浸りたいというパラドックス
大衆を惑わす不思議な世界が構築された挑戦的なアルバムでる。

どこからどこまでが仕組まれた作品なのか。
ただ分かるのがこれが凄くアーティスティックな一枚という事。
俺が持ってるのはCDだけど、玄関に飾ってみようかな。


【採点】
・挑戦的なアルバム 40点
・ゴシップも逆手に 20点
・強くてカッコイイ 20点
・目に優しくない  -3点
77点

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