脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Song】GINZAN BOYZ / ギンギラ銀山パラダイス -GGGZPDS-[2017]


これぞ完璧な地下アイドル。


アイドル戦国時代と言われ始めて早幾年。
世間は今なお数多くのアイドルで溢れており、
ローカルアイドルから2次元のアイドルまで百花繚乱。

ここまでアイドルが跋扈した世の中だと、
「さぁ貴方のお好きなアイドルはどれですか?さぁ早く決めろ。」
と人は皆何かしらの偶像を崇拝しなければならないような圧さえ感じる。


そしてこれだけアイドルが多様化・分散化した今の時代、
メジャーなアイドルにはならずとも、マイナーなんだけれども
地道にファンを獲得していく「地下アイドル」と呼ばれる存在もいる。

もっとも「地下アイドル」という呼称そのものは結構昔からあって、
大手メディアに露出しないライブ中心のアイドルという意味が本来だ。
ただちょっとその闇っぽい言い方にアングラな響きがあるので、
インディーズバンドのようなニュアンスに近い形で使われている感じ。


さて、そんな地下アイドルが群雄割拠する平成の終わり、
昨年に最強の地下アイドルが爆誕したのをご存知であろうか。
その名もGINZAN BOYZ(ぎんざんぼーいず)である。

現在は閉山した史跡、兵庫県生野銀山
そこで労働者の様子として展示されていたマネキン達が、
去年の夏になんとアイドルデビューしたのだ。

総勢60名の大所帯で地下880メートルの坑道で活躍している。
つまりこれがガチの意味での地下アイドルだ。
なんてたって地下アイドル。地下1階2階のライブ会場じゃないぞ。

www.ikuno-ginzan.co.jp


しかしかなり銀杏BOYZに近いネーミングだ…。
大丈夫?峯田は絡んでこない?
そういや最近は峯田もかなりまるくなった気がするなぁ。


さて、そんなGINZAN BOYZは調子に乗ってきて
先日はなんと総選挙が開催されたそうだ。
神セブンならぬ鑿(ノミ)セブンが決定したようだ。

ginzanboyz-sousenkyo.com


しかし1位を獲得したのは…

なんと特別参加した朝来市長が扮するキャラShi☆Choだった。
おいおいそういうノリ嫌いじゃないけど、そりゃ忖度するだろみんな。
漫画の人気投票に意図せず作者がランクインするパターンと違うぞ。

というわけでさすがに空気を読んだのか最終的に市長が辞退したので
1位となったのは「飛鳥くん」。これは確かにイケメン。
名前もカッコイイしね。くれぐれも覚せい剤には気を付けてね。


そんなGINZAN BOYZは近々待望の2ndシングルを発表するらしいが、
ここで彼らの衝撃のデビュー作となった2017年発表の
「ギンギラ銀山パラダイス」(GGGZPDS)を振り返ってみる。


タイトルといい曲の感じといい平成の終わりとは思えない
なかなかにノスタルジーを禁じ得ないセンスだ。そこでタイトルに
GGZPDSと無理矢理にピコ太郎感を捻じ込むという英断がまた凄い。

しかし曲のキャッチーさには目を見張るものがあって、
一聴したらもう「ギンギンギンギン銀山ボーイズ」と口ずさんでしまう。
曲の雰囲気は最近のアイドルソングっぽくはないものの、
往年の王道アイドルソングのポテンシャルを秘めていると言える。

それに幅広い年代の観光客に訴求するには実はこの選択は戦略的だ。
「最近流行りの音楽はちょっと…」という年配の方にもウケがいいし、
若い人にも逆に新鮮に聴こえるかもしれない。


そしてちゃんと観光地のアイドルらしく銀山をPRする歌詞、
さらにMVの作り込み方もただの地域おこしのレベルじゃない。
ツッコミ待ちを想定した小ボケを散りばめて笑いを取りにいく手法、
これは昨今の面白MVのムーブメントにしっかりキャッチアップしており、
最近の音楽文化に造詣が深いブレーンが存在すると思われる。


アイドルの活躍には実はブレーンとなるプロデューサーの力量が
試されているという面もあるので、このGINZAN BOYZについても
間違いなく聡明な仕掛け人が存在してそう。イベントとかも面白そうだ。



こういったローカルな取り組みって少しうすら寒いとこがあるんだけど、
でもその寒さすらもコンテンツの一部になりうるというのが面白いのだ。
ローカルなイベントって滑ってるけどまぁいいよね的なとこあるじゃん。

特に銀山なんて過酷な労働環境でもあったわけで、
でもそういった過去を暗くなり過ぎずにちょっとしたお笑いに変換して
現代に新しい形で提示するというのはこの生野銀山の歴史にとっても
一つのターニングポイントになりうる出来事なのである。


そういう事を考えているとね、
やっぱりGINZAN BOYZは地下アイドルとしての属性を
十分に兼ね備えた存在だと思えてくるわけですよ。

今やアイドルはなんでもアリの時代だ。何それ!?みたいな
うすら寒いコンセプトですらアイドルは自らのコンテンツとして
飲み込んでしまうし、またアイドルの暗い過去といった物語でさえも
そのアイドルを楽しむ上での重要な要素となっている節がある。

だからこのGINZAN BOYZは、そのパロディー的な名称や曲に、
マネキンを使うという斬新だけどちょっとうすら寒いアイディア、
そして辛い事もあったけど明るく生きようという物語性、
しかも年を取らないときた。ほーら完璧な地下アイドルである。


ただデビュー曲でほぼ出し切った感があるので、
2ndがどういう方向に行くのかに注目が集まっていると思われる。
また同じような観光地PRの歌詞でいくのか?曲調は?MVは?
気になるところである。

あと生野銀山の中は夏でもとても涼しいらしいので、
この暑い夏には生野銀山に行って、涼んで、アイドルに会って、
本物の地下アイドルって奴を目に焼き付けてくるのもいいかもしれない。

【採点】
・最強の地下アイドル 30点
・高いポテンシャル  30点
・市長が空気読んだ   5点
・夏でも涼しいよ    3点
68点