脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】チャットモンチー / 誕生 [2018]


これぞチャットモンチー。

誕生(通常盤) 誕生(通常盤)
チャットモンチー

曲名リスト
1. CHATMONCHY MECHA
2. たったさっきから3000年までの話
3. the key
4. クッキング・ララ feat.DJみそしるとMCごはん
5. 裸足の街のスター
6. 砂鉄
7. びろうど

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2018年7月、チャットモンチーが「完結」した。

今振り返ってみてもチャットモンチーと言うバンドは
とても不思議な魅力を持ったバンドだったと思う。


それまで持て囃されてきた本格派ロックとは違う音。
でもそのしっかり地に足がついた演奏と飽きさせない曲の構成、
類稀なるポップセンスになんといってもあの強力な歌詞。

明らかに本格派には聴こえないのに、
彼女達のスタイルはガールズバンドの一つのフォーマットになり
そしていつの間にか新たな本格派になった存在。
今活躍中のガールズバンドが彼女達にどれだけ影響を受けた事か。


そんなチャットモンチーがこの度「完結」したのだ。
活動休止でも解散でも無い。「完結」なのだ。カッコエエ…。

そんな完結アルバムのタイトルは『誕生』である。
むむむ。最後の最後でデビューアルバムみたいなタイトルつけやがって。
このセンスが憎い。このセンスがIT'Sチャットモンチー。
いいなぁ、俺もマネしたい。デビュー曲を出して『完結』ってつけたい。


そんなラストアルバムの1曲目は『CHATMONCHY MECHA』だ。
これまでバンドサウンドを基軸としてきたチャットモンチーからは
想像できない打ち込みサウンド主体のオープニングナンバー。

つまりこの最後のアルバムは今までとは違うんだよという事を
最初に告げる役割になっている曲でもあるわけだ。
この時点で感極まって泣きそうになる俺。ずるいよチャットモンチー。


でも実はこの”メカ”というコンセプトは少し前のツアーからあって、
自分達自身を『チャットモンチー・メカ』と打ち出しながら
打ち込みの音源を使ったパフォーマンスを行っていた。



この「パソコン」って手書きしてあるのチャットっぽくてめっちゃ好き。


そして今作のリードトラック『たったさっきから3000年までの話』。
この曲も独特だ。チャットモンチーっぽくない曲だけど、
でもとてもチャットモンチーっぽい曲。ん?俺言ってる事大丈夫?


この曲、サウンドはやっぱりバンドサウンドじゃないし
曲展開が珍しいというかよくあるJ-POPのような分かりやすさが無い。
大きく盛り上がるところもなく「え?終わりなの?」って感じで終わる。
そこが最初チャットモンチーっぽくないなーっと思った点だ。

しかし描いている内容は凄いチャットモンチーっぽいんだよなー。

あいも変わらず地震大国で北朝鮮とアメリカの狭間で
揺れているでしょうか


西暦3000年になっても色んな意味で「揺れて」いそうな日本を歌う。
そしてその3000年になった時に私という人間もまた

あいも変わらず優柔不断で今とさっきの狭間で
揺れているのでしょう


揺れていると歌う。
壮大な話を思わせておいてふと身近な話題でリンクさせる距離の縮め方。
このセンスが憎い。このセンスがIT'Sチャットモンチー。


つーか3000年まで生きとるんかいというツッコミを入れたくなるが
医療技術の発達とかあと自分の思念をデジタルに保存するとか
なんかそういう未来がくればあり得そうだな、とか思って妙に納得。

チャットモンチーもそんな事を想像しながらこの曲を書いたのか、
あるいは3000年になっても聴ける曲をと思いを込めながら書いたのか。
どちらにしてもなんだかタイムカプセルのような素敵な曲だ。

あと3000年が視野に入っているのでここで言う「たったさっき」は
多分10~20年前くらいという事になるんじゃないかと推測。
つまりチャットモンチーが始まってから3000年までの話という事かな?


そして気になった曲は『砂鉄』である。

同じクラスだったら 友達にはなってないだろうな
ジャンル違いのオタクだもん プリント回すだけの関係さ


冒頭からこんな入り方をするセンスがIT'Sチャットモンチー。
同じクラスだったら友達にはなってないなんて、まぁ意味深なこと。
これは誰かの事を歌っている?メンバーの事?気になる部分である。

そしてサビのメロディはまさにIT'Sチャットモンチー。
音は相変わらずバンドじゃないけれどこのメロディの運び方は
間違いなくチャットモンチーのそれである。

好きでも嫌いでも 好きさ
会っても会わなくても 忘れない
だめでもだめだめでも 許すよ
友達でもないのに


ん…?この「だめでもだめだめでも許すよ」って…
どっかで聴いたフレーズだなぁって思った調べたらアレだっ!
 2009年発売のアルバム『告白』に収録された『やさしさ』の歌詞だ!

明日ダメでも 明後日ダメダメでも 私を許して


この部分に対するアンサーがこのラストアルバムで登場!
漫画の伏線が回収されたみたいな気分でなんか嬉しいです。

そしてよくよく見てみるとなんとこの『砂鉄』の作詞は
2011年にチャットモンチーを脱退したドラムの高橋久美子だった。
ラストアルバムでまさかこんな歌詞の曲を提供してくれるなんて素敵。


他にも『クッキング・ララ』とか『裸足の街のスター』とか
ボーナストラックのベボベの小出さん出演の『恋の煙 (同期ver.)』とか
素敵な曲が満載で全7曲のアルバムなのにとっても充実した一枚だ。


確かにこのアルバムはこれまでとは違う異質な存在だと思う。
それなのにこのアルバムはとても心に残るアルバムになった。
なんだろう、それはやっぱりこれが「完結作」だと分かっているからか。

きっとこのアルバムは単体ではだめなんだ。だめだめなんだよ。

これまでのチャットモンチーのアルバムをずっと通して聴いて、
そしてこのアルバムがその最終章なんだという位置付けで聴く。
そう意識するとこのアルバムは一気に新たな光を帯びてくる。

シリーズ映画の最後の作品、そういう締めの作品なのである。

『耳鳴り』
『生命力』
『告白』
『YOU MORE』
『変身』
『共鳴』
そして『誕生』。

こうやって並べると『YOU MORE』だけ
もうちょっとどうにかならんかったんかと思うけど。

でもこれらのアルバムのまさに「完結編」となったのが
この『誕生』だったというわけだ。
チャットモンチーという歴史は長い間ストーリーを描き続け、
そして今回『誕生』で終わったのだ。



『誕生』のジャケットはメカみたいな恐竜2匹。
現メンバーのえっちゃんとあっこの事を現しているんかな。

恐竜と言う太古の生き物をモチーフに、
近未来的なメカのようなデザインで「誕生」というタイトル。
このちぐはぐさ、IT'Sチャットモンチー。
やっぱり最後の最後までチャットモンチーはチャットモンチーだった。


チャットモンチーは完結したけど、何かが『誕生』する。

チャットモンチーが最後に誕生したと言っているのは
チャットモンチー後に誕生した後続バンド達の事なのか、
はたまたこのデジタル空間に残り続ける「メカ」の概念なのか。
もしくはバンドサウンドは終わりを告げ、
今後はデジタルサウンドだという事を暗に示しているのか。

でも本当に最後の最後に相応しい、
”締め”のアルバムを出してくれた。
解散でも活動休止でもない。
チャットモンチーという歴史はこれにてしっかりと「完結」した。

そういう明確な終わりの意思をもって制作された最後の一枚。
本当に素敵なアルバムだった。ありがとうチャットモンチー!
そして俺はこれからもチャットモンチーを聴き続けます!


そんなわけでベストの発売も決定です。

www.chatmonchy.com


ベストが出たらまた改めて、
チャットモンチーに対する想いを垂れ流そうかな。


【採点】
・「完結編」アルバム 50点
・高橋久美子が登場  20点
・小出祐介も登場   10点
・DJみそしるとMCごはんも登場
            3点
83点