脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Song】星野源 / アイデア [2018]


星野源に弱点を。


今年は昨年に比べると世間的な”ヒット曲”が多いなーって気がする。

最近はもうすっかり「売上=ヒット曲」ではなくなっているので、
CDランキング眺めてても流行なんて分かりっこない状態だけど、
でも肌感覚として「流行ってんな~」と思える曲がそれなりに思いつく。


そんな中、まやもやこの男がすんごい曲をぶちかましてきやがった。

星野源。なんなんだコイツは。そしてなんなんだこの新曲は。
俺は同じ男として自分が不甲斐なくなるくらい星野源の存在が眩しい。
憎い。悔しい。そして羨ましい。5%でいいから俺に才能をよこせ。


フルバージョンが解禁されるや否や話題沸騰のこの『アイデア』。
朝ドラで1番だけ披露されて以降、発売はまだかまだかと焦らされて
悶々とした日々を過ごしていた日本国民の意思が爆発中だ。

つーかやっべーよこの曲。文句なしに今年の年間ベスト級の曲じゃん。
くそっ。星野源くそっ。やっぱ俺は星野源の事なんか嫌いだ。
でもそんな俺にも星野源は優しくしてくれそうで、そんなとこも嫌いだ。

さて、そんな俺の天敵、星野源の特別冠番組
『おげんさんといっしょ』が8/20の『アイデア』配信当日に
NHKで生放送された。1年3か月ぶりの第2回目の放送だ。

当日の昼に録画予約を忘れていた事に気付いた俺は、
嫁に録画予約をお願いして何とか無事に録画する事ができてホッとした。
憎き星野源の動向をチェックするためにも録画は必須条件なのである。

mantan-web.jp


くそっ。星野源くそっ。いい番組じゃねーか。
あと高畑充希のお父さんがかわいい。紅歌ってるよりこっちが好き。

1時間以上の放送が短く感じたし、まだ観たいと素直に思った。
観たのは録画だったんだけど、第1回と同様に生放送ならでは空気と
出演者たちの音楽にまつわるよもやま話でほっこり出来る内容だった。

くそっ、なんなんだ星野源。ちくしょう、早く第3回やってくれ。


そんなおげんさんの中で最後に披露された新曲が『アイデア』だ。
番組内では「銭湯ver」と題して銭湯のセット内で
ちょっと籠った音で生演奏されたんだけどまぁこれがとても良い曲で。

俺と一緒に俺の娘(3歳)も録画おげんさんを観ていたんだけど、
娘も見事にこの曲にハマったようで「もう一回!もう一回!」と
大塚愛みたいな事を言い出したもんだから
『アイデア』の部分だけめちゃ繰り返して何度も観てしまった。

しかしこの『アイデア』って曲は本当に凄いと思うんですよ。
これまでの星野源の集大成とも言えるくらいの渾身の一曲だ。
これが流行らなくてどうするよ2018年。どうするよ日本。


星野源チェッカーである俺は当然、
NHKの朝ドラ『半分、青い』で一番だけは先に聴いていた。



俺は別に朝ドラは観ていないんだけど、
星野源の曲だけは聴いておかねばなるまいと思って
初回放送のときだけはガン見していたのだ。

そしてイントロが始まった瞬間「あーきた。完全に星野源だわ。」
みたいな安堵感と共に「いい曲だけど真新しさは無いかなー」などと
上から目線の評価を下した。星野源らしいけどただそれだけ。
そんな曲だなってーのが朝ドラで『アイデア』を聴いていた時の感想。


しかーし、そんな俺の声が聞こえていたのか、星野源。
2番以降で完全に予想外の展開をぶち込んできやがった。
くそっ。星野源くそっ。なんでお前はいつもそうなんだ。
所詮、凡人の思考なんて星野源にはお見通しなんだろうな…。


1番はいつもの星野源らしい音楽。マリンバが鳴り響き、
メリハリのあるリズムと切り込んでくるギターがとってもスマート。
この空気感はまさに俺らが良く知っている星野源である。
歌詞も爽やかで気分が晴れやかになる軽快なポップソング。

だが2番になると突如として雰囲気がダークサイドに堕ちる。
1番で見せた星野源節は鳴りを潜め、暗めのダンスビートが始まる。
一応メロディラインはそのまま引き継がれているんだけど、
歌詞も急に暗転する。いいぞ星野源。人のダークサイドは好物だぞ。

独りで泣く声も
喉の下の叫び声も
すべては笑われる景色


日常の何気ない一幕にメロディを感じていた1番から打って変わって、
いきなり内省的な心象模様が歌われている。

特に2番のサビ前の

生きてただ生きていて
踏まれ潰れた花のように
にこやかに 中指を

にはブルっときたね!中指を立てる星野源、いいぞぉ~。
1番が表の華やかさを歌った内容だとしたら、2番はその裏側。
光あれば影もある。そういう人間の表裏一体の心模様を表現している。


そして間奏になると今度はなんとアコースティック。
落ち着いたムードに急変する。しかも拍の取り方まで変わっているので
カラオケで戸惑うヤツですコレ。ここまでの進行から突如の裏切りだ。

しかしラストの大サビでまたいつもの星野源節に戻り大団円。
急転直下の展開をみせながらもうまく着地して終わる。
色々なアイデアが詰め込まれた曲がこの『アイデア』なのだ。

一聴すると、ただ星野源がやりたかった音楽を繋げただけの
思い付きを曲にしたような散らかった曲に思えるかもしれない。
でもね、この曲には不思議なくらいに連続性を感じるんですよ。

あの1番を経て、2番を経て、間奏を経て、そしてラストのサビ。
この構成がとてもしっくりくるし最適解のように思えてくる。
これぞ星野源マジック。まさにタイトル通りの『アイデア』曲だ。


ちなみに上記に挙げた様々な曲のアイデアは、
実は朝ドラが始まった後から盛り込まれたらしい。

つまり朝ドラで最初に放送された時にはまだ曲の完全版は出来ておらず
1番のみの曲だったんだけど、星野源自身も「これじゃ面白くない」
と感じて2番以降に上記のようなアイデアを取り入れていったそうだ。

恐ろしい。決して自分に満足しない、向上精神の塊のような男。
短期間でも高速で自己PDCAサイクル・FFAプロセス・
OODAループを回転させる事で理想的なプロダクトを作り上げる、
そんなコンテンツメーカー星野源。なんだろう書いてて腹立ってきた。


そしてこのジャケットもまた良いじゃないですか~。



人の形をした水たまりも
ちょっと90年代のかほりがするデザインも
すべては星野源のポリシー。

「芸術的」というよりもちょっとした「アイデア」って感じがする
粋なジャケット写真だ。インスタ映えしそう。つーか既に誰かが
似た事やって「星野源~」とか言ってそう。なんだろう腹立ってきた。


そして何と言っても触れないわけにはいかないのがこのMVである。
これを最初に観た時、俺の中で何かがぐっとこみあげてきた
くそっ、星野源め。泣かせてくれるじゃないか。


MVの冒頭から赤→黄→桃→青と続く背景は、
過去に星野源が発表してきたCDのイメージカラーだ。
『YELLOW DANCER』『恋』『Family Song』『ドラえもん』。
過去の自身の楽曲を総括している事がここで示されている。

あと最初のマリンバを奏でる映像は、
SAKEROCKの頃に発表した曲と同様の構図らしい。なるほどー。
1番の歌詞にSAKEROCK時代を思わせるフレーズが入っているのも
星野源自身の過去のアイデアをおさらいしようって意図があるわけか。

ちなみに間奏のダンスは三浦大知クンが振り付けをしたらしい。
おげんさんといっしょにも三浦大知が出演しててそんな話をしてた。
良く見たらMVの2:30辺りにちらっと三浦大知が映ってるのね。


そして敢えて機材やら何やらを隠さずに映して、
MVを撮影してまーすって感じを出しているのも
きっと星野源なりの「アイデア」なんだろうな。

徹頭徹尾「アーティスティック」な見せ方に拘るのではなく、
程よく現実世界に寄りそった「アイデア」のような見せ方にする。
凄い曲なんだけど決して遠い存在ではなく馴れ馴れしく感じる曲。
「アイデア」という言葉の持つ絶妙な距離感が見事に表現されている。

そんな色々なギミックが仕掛けられたこのMVもやたら好評で
アメリカのビルボードでも秀逸なMVとして取り上げられたらしい。
そして今日、MVの再生回数も1000万の大台を突破したニュースが。

news.biglobe.ne.jp
まったく、なんて奴だ星野源。
お前の弱点はなんなんだ。教えろ。
星野源に中指を。星野源を倒すアイデアを。いつか俺に届け。


しかし、物すご~く嫌な言い方をすれば
過去の自分の作品から引用して複数の曲調を混ぜただけの曲である。
そう考えたとき、それは「新しい」音楽なのか?と問われると
ちょっと怪しいかも…と思ってしまうだろう。

だが俺が何度も言及しているように、
この曲はタイトルの『アイデア』こそが全てを物語っていると思う。


他人のアイデアについて後からどうこう言う事なんて誰だって出来る。
でもそのアイデアを自分で考えて実践することが大切なんです。
だから決して馬鹿にされるようなアイデアなんて存在しないハズです。

あああ、なんかすげー安っぽい自己啓発本みたいな事言っちまったけど
でも星野源のこの『アイデア』という曲は
「小さな思い付きだけどやってみた」的な事の積み重ねで
ここまで感動できる曲に仕上がっているという事、
その事実をこうやって提示してくれている点に物凄い価値があるのだ。

「アーティスティック」「クリエイティブ」とまではいかなくとも、
何気ない「アイデア」を連続させる事で生まれる面白さ。
アイデアさえあればきっと色んな事も乗り越えていける、
そんなライフハックみたいな楽しさを感じさせる素敵な曲なのである。


くそっ、結局星野源を褒めてしまった。
いつもそうだ。そうなっちまう。
次こそは星野源をメタメタに責め立てようと思ってるのに
ヤツは常に俺の予想のはるか上を行く。憎い。悔しい。羨ましい。

そんな間違いなく2018年を代表する一曲、『アイデア』。
多分紅白で歌うのはコレに決定だろうなー。
『ドラえもん』がきたらそれはそれでウケるけどw



MV内で星野源は黒ネクタイで喪服のような恰好をしているんだけど、
それは過去の自分のアイデアに対する告別の意味があるんだろう。
これまでの星野源を総括し、別れを告げ、新たなアイデアの道に進む。

そんな集大成の楽曲であると共に力強い決意のような曲でもある。
これじゃあますます星野源の今後に注目せずにはいられないって話だ。

というわけで長らくアルバムを出してないおげんさん、
そろそろアルバムのお時間じゃないですかねー?

よーし今に見てろ、次こそ叩いてやる
だからアルバムを出すんだ。さぁ早く。待ってるから。お願い。


【採点】
・やっと出たアイデア  30点
・予想を裏切る2番以降 30点
・ギミック沢山のMV  30点
・不甲斐ない俺に中指を -3点
87点