脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】Paul McCartney / Egypt Station [2018]


日本よ、これがポールだ。

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ポール・マッカートニー

曲名リスト
1. オープニング・ステーション
2. アイ・ドント・ノウ
3. カム・オン・トゥ・ミー
4. ハッピー・ウィズ・ユー
5. フー・ケアズ
6. ファー・ユー
7. コンフィダンテ
8. ピープル・ウォント・ピース
9. ハンド・イン・ハンド
10. ドミノズ
11. バック・イン・ブラジル
12. ドゥ・イット・ナウ
13. シーザー・ロック
14. ディスパイト・リピーティッド・ウォーニングス
15. ステーションII
16. ハント・ユー・ダウン/ネイキッド/C-リンク
17. ゲット・スターティッド (ボーナス・トラック)
18. ナッシング・フォー・フリー (ボーナス・トラック)

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来日が話題になりがちなポール・マッカートニー、
5年振りの新作アルバムがリリースされた。

その名も『Egypt Station(エジプト・ステーション)』!

なんだこのタイトル…。
発売前にこのタイトルを聴いた時の正直な感想。

曲名ならなんか分かるけどアルバム名でこれはビビる。
待望のニューアルバム!「品川駅」!みたいな感じだぜ。
あの世界的アーティストのポールの5年振りのアルバムでこのタイトル。
前作が『NEW』という強気のカッコ良さだったが故にギャップが凄い。

そんな俺の中でのファーストインプレッションはあんま良くなかった
ポールのNEWアルバムだが、アメリカではなんと初登場1位を獲得。
ポールとしては36年振りかつ初登場1位は初めてだそうだ。


マジでか。これだけヒップホップが席巻しているアメリカのチャートで
76歳のロックおじいちゃんポールが1位とかどないなっとんねん。
人生100年・生涯現役みたいムードが世間的に浸透しつつあるけど、
ポールみたいな天才にずっと現役でいられるときっついですな~。


というわけで新作&来日&全米1位と話題になっております
ポールの新作『エジプト・ステーション』。
そんなフィーバー状態ならもう聴くしかないじゃないですか。

特に「全米1位」みたいなワードにとことん弱い日本人としては
「日本よ、これが○○だ」と言われたら「ぐぬぬ…」みたいに
自分の中のアナ・コッポラちゃんが出てくるわけじゃないですか。


だから聴いた。
…うーんなるほど、これは完全にポールだ。
誰もが納得するポール・マッカートニーの音楽が詰まっている。

伸びやかで耳馴染みの良いメロディの嵐。
すっごい真面目で決して手を抜かない職員芸。
これはまごうことなきポールである。

メロディーメーカーとしてのポールの才覚が
70後半である今も尚健在である事を思い知らされるアルバムだ。
優しくて温かい、「やっぱポールだよねぇ~」みたいな感じ。

だがそれを踏まえたうえで、言わせて貰おう。
俺は前作の『NEW』の方が好きだった。今回のアルバムは保守的。
かつてのポールらしい曲が多い半面、『NEW』で見せたような
キレ味のある曲が少ない。そこが俺には物足りなかった。


確かに「やっぱポールの音楽は良いよねぇ」と言えるアルバムだし、
浸るには十分に魅力的なアルバムとも言える。
気になる曲もいくつかある。『Fuh You』とかはとても良いよね。



だがすっごい悪意のある言い方をするならば、
このアルバムへの好意的な世間の空気の中に居ると
ポール好きの中高年が「やっぱポール最高やな~」と言いたいだけの
同窓会に付き合っているような気分になってしまう俺がいるんだ。


だってさ、みんな『NEW』の事忘れてない!?

あの時も「ポールの新境地!」とかみんな騒いで喜んでたのに
今回みたいなポールが基本に立ち返った音楽になると今度は
「やっぱこういうポールが良い!」ってみんな世渡り上手すぎだろ。
俺はそんな器用なマネが出来ない。俺は『NEW』の事が好きなんだ。

あと今回のアルバムにキレが足りないみたいに思ったのは、
前作と比較してしまうのもあるけどやっぱ年齢も仕方ないなと思う。
声や体力は勿論の事、心情としてももう若者と同じようには出来ない。

ポールは最近のインタビューでも
「テイラースウィフトのような事は出来ないよね」みたいな
旨のコメントを語っていたみたい。
本人も自分ならではの役割ってもんを自覚しているんだろう。


だがそれ故に色々な時代を見てきたポールならではの味って奴もある。
今回は特に曲の内容・テーマにかなりの意気込みを見い出せる。

平和について歌った『People Want Peace』や、
最早ここ数年のミュージシャンのお家芸いなっている
トランプ大統領をテーマした曲『Despite Repeated Warnings』など
ちょっとジョンレノンっぽい一面が聴ける。

だから自分の想いをこういった作品として残そうという
強い意志を感じる作品にはなっている。

あと『Back in Brazil』はビートルズ時代の『Back in the U.S.S.R.』の
セルフパロディみたいなタイトルの曲だけど、
曲の途中に「イチバン!イチバン!」と日本語のコールが入る。
これは日系人が多いブラジルに行った際に耳にした言葉が元ネタらしい。



…しかし「イチバン!」ってコールをみんなどこで使うんだろう?

ナンバーワンよりオンリーワンな日本人は今はもう逆に
一番なんてあまり使わないんですけど、日系人の方々は結構使うんかな。
実はブラジルでは今カステラ一番のCMとかが流行ってるんかな。
この辺のコールの事情はちょっと気になる部分である。


そしてこの『エジプト・ステーション』という謎タイトル、
最初見たときは何コレと思ったんだけど
どうやらこれはこのジャケットの絵の題名の事らしい。

さらにこのジャケットはもう20年近くも前に
ポールが開いた個展で披露されたポール自身の作品という事だ。

つまり今回の作品は、駅を巡るようなコンセプトアルバムであり
世界の車窓からの様に様々な風景を楽しみながら聴くアルバムだそうだ。

曲が駅という位置付けか…
アジカンの『サーフブンガクカマクラ』を思い出すなぁ。

サーフ ブンガク カマクラ
サーフ ブンガク カマクラ

そういやコレも最初タイトル聞いたとき「うわぁ…」て思ったけど、
ちゃんと聴いたら凄いいいアルバムだった。おススメ。


音楽を聴くと言えばYoutubeやストリーミングが主流のこのご時勢、
アルバムで聴くと言う流れを意識する機会が減っているので
どちらかというと曲を流れで楽しみたい俺はちょっと寂しくもある。

だからポールがその事を今作で示してくれるのは歓迎なんだけど、
このアルバムがそんなにコンセプチュアルだったかと言うと…
うーん俺は言われればそうかもくらいの印象だったなぁ。


あのコンセプトアルバムとして名高いビートルズ時代の
『Sgt.Peppers Lonely Hearts Club Band』の事も思い出す。

サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(紙ジャケット仕様)
サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(紙ジャケット仕様)

これもポールが主導したアルバムで、名盤と言われる作品なんだけど
実際にそんなにコンセプチュアルな構成かと言われると
俺はそうでもないと思うんですよ。曲を無理矢理まとめた感がある。

さらに言うと、今回のアルバムはコンセプトに注目と言いつつ、
ボーナストラックの『Get Started』と『Nothing For Free』の2曲が
やたら良かったりする。コンセプト外の曲が良いとはちょっと皮肉w


という事で話題になったポールのNEWアルバムだけど、
俺にとってはぼんやりとしたアルバムだったかなー。

しかしこれが現在のアメリカで1位を取るとは…なんのかんの言っても
ポールは俺なんかよりずっと時代を捉える感覚を持っているんだろう。
ちなみにイギリスでは3位、日本ではオリコン6位だったっぽい。
アメリカ程では無いけど、どこでも人気が衰えないのは凄いですなぁ。


人生100年時代とは言いつつも、さすがに70後半ともなると
体力的に色々と懸念があるだろう。でもポールはまだ次回作がある。
例え80歳になったとしても新作を出してくる。そんな気がする。

あと俺はポールにはテイラースウィフトだってやれると思ってるぜ。
だから次は是非とも若者もぶったまげるような、
あと中高年の同窓会をぶち壊すようなそんな新作を待ってるよ。

そして次は日本でもイチバンになろうぜ!


【採点】
・76歳のニューアルバム  30点
・36年振りの全米1位   20点
・これぞまさしくポール印 15点
・次はよろしくテイラー印  2点
67点