脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Song】椎名林檎と宮本浩次 / 獣ゆく細道 [2018]


飲み込んでみると意外と美味しい。


はいはいまた椎名林檎椎名林檎。

日々ネットでトレンドを追う事に余念の無い常識人の方々にとって
椎名林檎の話題なんてのは嫌でも飛び込んできているだろうし、
俺も頻繁に椎名林檎の話をしてるので「またか」といった気分でしょう。

しかし長きに渡り椎名林檎に多大に教育されてきた俺としては、
こういった新曲が発表される度に反応せざるをえないんですわ。
パブロフの犬と同じ。ポリコレ警察と同じ。見つけたら反応しちゃうの。


というわけで今月からnews zeroのテーマソングとしてOAされている
『獣ゆく細道』。今作もまたもやコラボ作品となっており、
お相手はなんとエレファントカシマシの宮本浩次である。

zeroでのOA当日に公表されネットを中心に話題を呼んで
日本中の林檎班がまさに御起立ジャポンしたわけですね。
特設サイトも出来ちゃってるし。

sp.universal-music.co.jp



て感じでここまでざっとこの曲の話題性を振り返ったんですけれど。

けれど。

けれど、だ。

うーん、この曲はなーんかそこまでピンとは来なかったんですね…。

そう。俺もね、椎名林檎だからってね、
常に諸手を挙げての絶賛というわけではないんだぜ。
本当の愛国者ってのは国を批判するんだぜ的な事を誰か言ってたけど、
まぁそんな感じですよ。この曲は本当に凄いのかちょっと考えたいの。


まぁ何が一番ピンと来なかったかってそりゃもう宮本浩次ですよ。


ああ待って!宮本浩次がダメってわけじゃなくて!落ち着いて!

つまりはこの曲があまりに椎名林檎感が強すぎると思ったんで、
宮本浩次と一緒にやる旨味ってのを俺があまり感じられなかったって事。
もう今日言いたい事の大部分はそこ。それだけ伝わって。お願い。


さて、有名なアーティスト同士のコラボ楽曲というのは
洋楽ではもうメジャーな光景になっているんですけど、
日本ではそこまではないかなーっと思っているところなんですね。

でも宇多田ヒカルとか椎名林檎とかはここ数年結構コラボをやってて
その辺の感覚はさすがだなーって思っているところなんですが、
ただコラボというのは当然ながらかなり何度が高い試みなわけよ。

有名なアーティスト同士だとどちらにもそれぞれのカラーがあるので、
単純に「豪華な組み合わせだから凄い事になる!」というわけではなく
それぞれのクセが凄ければ凄い程、バランスをとるのに相当苦労する。

つまりはメインディッシュばかりでメイン!メイン!メイン!となると
食べにくい!っていうか、あ、食べにくいって言いましたね私。
怒られても仕方がないですね宮本さん。古いネタ持ち出してすみません。


つまりはコラボ曲というのは一見豪華ではあるけれど、
下手すれば個性が弱まってしまうというリスクも潜んでいるのだ。
だからクリエイターにとってはかなり気を遣う案件だとも言える。

そう考えたときにだ、この『獣ゆく細道』なんだけど最初聴いた時
俺はこれは下手すりゃ椎名林檎:8宮本浩次:2じゃないのってくらい
かなりの割合で椎名林檎要素を感じてしまったんだよね。


この『獣ゆく細道』、タイトルからして昨年発表の椎名林檎の楽曲
『目抜き通り』と対になりそうな曲と推察される。「道」的にね。



この時の相手はウルフルズのトータス松本。
GINZA SIXのテーマとして書き下ろされた多幸感に溢れた楽曲だ。
この時も結構話題になったなぁ~。俺もお気に入りの曲である。

で、この『目抜き通り』も当時俺はやや椎名林檎が強いと思った。
それは椎名林檎っぽい楽曲やMVの世界観といった面もあるけれど、
ボーカルで椎名林檎の声の方が目立っていたというところが大きい。


対して今回のこの『獣ゆく細道』。
『目抜き通り』の煌びやかさとは真逆のムードを伴った楽曲。
泥臭くも己を貫く侍のような力強さを感じる真っ直ぐな曲だ。

そして今回は宮本浩次のボーカルの存在感が強く、
椎名林檎とのボーカルのバランスはいい感じだと思った。
歌詞の内容もエレカシの曲のイメージと外れてはいないし、
宮本浩次の歌のキレが冴えまくっている。

ただ…ただ…今回のは曲がもう完全に椎名林檎なの。
言葉の言い回し、ジャズっぽい展開、挟みこまれる英語、
いつも聴いているあの椎名林檎節が全開なのである。


それは『目抜き通り』だって同じ事が言えるのかもしれないけど、
あれはトータスと椎名林檎のキャラや背景がGINZA SIXのテーマとして
面白い効果を生んでいたという側面があったから絶妙にハマっていた。

しかし『獣ゆく細道』はニュースのテーマとして書き下ろしたにしては
コンセプトがよー分からんし、そこに宮本浩次を敢えて起用する意図も
ちょっと見えにくいし、曲があまりにいつもの椎名林檎だったもんで
何故コラボで発表したのかという点がまだ腑に落ちていないのよ…。

ホントにそこだけ。宮本浩次は悪くない。というか悪い人なんていない。
いるとすれば、食べにくいと発言した俺と鈴木万由香さんって事にして。


というわけでやや批判的になってしまった今回のコラボ作だったけど、
フツーに良曲だし何よりみやじの新たな一面が見られた事はデカい。
ジャズバンドに鬼気迫るみやじのボーカルが伸びやかに絡むとは…
意外性がありつつ新感覚。みやじのポテンシャルの深さに気付かされた。

そういや椎名林檎はエレカシも好きだったしなぁ~。
きっと「こんな曲を歌って欲しい!」って思って声をかけたんだろう。
だから実現すると決まった時は林檎ちゃんもとても嬉しかっただろう。

そんな想像をすると実はこの曲だって多幸感に溢れた曲に思えてきた。
曲はあくまでも椎名林檎だけど…でも「ボーカリスト」としての
みやじの魅力に近づける、そんなコラボ曲という事かな。
俺が「エレカシ」のみやじ像に引っ張られすぎなだけかもしれない。


というわけで個人的な疑問は残るものの、
でも結局は食べにくいって思っても、飲み込んでみると
実はこんなに美味しかったんだ的案件なのかと思います。

昨年末は初の紅白歌合戦で堂々のパフォーマンスを行ったエレカシ。
今年の紅白はもしやこの曲で林檎嬢とみやじのコラボが観れる…?
と想像すると俄然ワクワクしてきましたね。


コラボというのは難しい。個性のぶつかり合いは時に違和感を運ぶ。
しかしながらそれが意外な発見をくれる事もあるから面白い。

結構前の話だけど
「お茶漬け」に「チーズ」という組み合わせが話題になった事があり、
当時見事にハマった俺は未だにこのコラボを時折実践している。

飲み込んでみると意外と美味しい。
だから鈴木万由香さんも許してあげて。
俺も鈴木さんもただ思った事を言っただけで悪気は無かったんだ…。

人間たる前の単に率直な感度を頼っていたいと思う、そう本性は獣。

ってね。


【採点】
・まさかの宮本浩次 30点
・椎名林檎色強し  30点
・今年の紅白推し  10点
・チーズ茶漬け推し  3点
73点