脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】The 1975 / A Brief Inquiry into Online Relationships [2018]


まだまだ続くよやりたい邦題。

A Brief Inquiry into Online Relationships A Brief Inquiry into Online Relationships
The 1975

曲名リスト
1. The 1975
2. Give Yourself A Try
3. TOOTIMETOOTIMETOOTIME
4. How To Draw / Petrichor
5. Love It If We Made It
6. Be My Mistake
7. Sincerity Is Scary
8. I Like America & America Likes Me
9. The Man Who Married A Robot / Love Theme
10. Inside Your Mind
11. It’s Not Living (If It’s Not With You)
12. Surrounded By Heads And Bodies
13. Mine
14. I Couldn’t Be More In Love
15. I Always Wanna Die (Sometimes)

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さて、いよいよ2018年最後に取り上げるアルバムだ。

そしてこのアルバムだけは絶対に書かなくてはならないと思ってた。
年賀状よりも何よりもコレを書かねばならなかったのだ。
あ…年賀状まだ書いてない…。


しかし年賀状どころではないの。
今年最後に相応しくてかつ今年を代表する一枚がついに出たんです。
12月頭にコレ聴いたときからもう今年のラストはコレで行くと決めた。
それくらいに激アツな一枚が出た。ゲレンデが溶けるほど熱いヤツ。

イギリスを代表するバンドThe 1975の最新作
A Brief Inquiry into Online Relationships』。
俺はね、軽々しく名盤だの傑作だの口にはしたくないんですけどね、
このアルバムは名盤傑作尊い。聴いてない奴は年越せないからなっ


もうね、振り返ってみれば今年はさんざん洋楽に裏切られた年だったの。

2000年代っ子である俺が2000年代からずっと聴いてたアーティストが
どいつもこいつもみーんな路線変更しやがってさ。何これ談合ですか。
しかもそれがハマってればいいんだけど別にそこまででもないし。
それは俺が時代遅れだけなのかもしれんけどさ、でも寂しかったのよ。

そんな気分の中、今年最後に買った洋楽アルバムとなったこの一枚。
The 1975の最新作。でももうこの一枚で全てが救われた!良かった!
何度も言いますけどね、これは今年の代表作と言うか
もう2010年代を代表する一枚ってレベルの出来ですよマジで。


とまぁかなり持ち上げちゃってるんですけどね、
実は俺、The 1975ってそこまで好きじゃなかったんですよ以前は。

2013年のデビュー作『The 1975』がいきなりイギリスで1位を獲得。
評論家筋からもかなりの高評価で一躍世界的アーティストの仲間入り。

だが胎児の時点で既に性格が曲がってた生粋の天邪鬼な俺にとっては
このThe 1975ってヤツはいけ好かないバンドだったのだ。

オルタナロック畑で育った沢山の作物を腹いっぱい食ってきた俺には
The 1975の音楽は単なる流行のポップ系ロックにしか聴こえず、
「また流行りに乗っかるだけのバンドが出てきたよ」という
今思えば老害丸出しの愚かな考えを昔は持っていた。

つーかね、The 1975というバンド名が口にしづらいわけ。
文字で見たらそうでもない字数の癖に、言葉にするときは
「ザ・ナインティーンセヴンティファイヴ」とかふざけんな長いわ。
もう面倒臭いから俺「いちきゅーななご」って言ってたわ。


そんな個人的な事情もあってそこまで好きになれなかったThe 1975。

でも2016年の2ndアルバムがねー、まぁまぁ俺好みだったからさー、
「お、おう…なかなかThe 1975もやるじゃん…」と思いつつ、
でも一度否定してた過去もあって素直に認められない自分もいた。

それに2ndアルバムのタイトルがまたもう苦手でして。
『I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful Yet So Unaware of It』
(邦題:君が寝てる姿が好きなんだ。
 なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから。)

うっわ。

長いとか言う以前にセンスが激寒。トレンディドラマかよ。
寒いのは邦題つけたヤツのせいかもしれんけど。


しかしデビュー作から2ndになった時点で
俺も結構好きな感じの内容に向かっていたので
仕方ねーな3rdも聴いてやるか的な態度で聴いたらハイ激アツでした。

すみませんマジすみません自分が悪かったです。
これからはちゃんと「ザ・ナインティーンセヴンティファイヴ」と
精一杯の発音を心がけます。


そんな3rdアルバム『A Brief Inquiry into Online Relationships』。
またもや懲りずに長いタイトルをぶち込んでくるなー。

ちなみに邦題は「ネット上の人間関係についての簡単な調査」だと。
うっわ。そのうちnoteとかで誰かが投稿しそうなタイトル。
だからもっといい感じに翻訳出来んのかい。まぁ2ndよりはマシかな。


1曲目は自分たちのバンド名である『The 1975』から。
この出だしのタイトルは毎回のお約束ではあるんだけれど、
もう本人達も考えるのが面倒臭くなってる説濃厚。

そして2曲目の『Give Yourself A Try 』へ!。これがもうホント最高



軽快で自然と口ずさみたくなるおしゃれなギターポップ。
とにかくキャッチーで素晴らしいんだけど、
間延びせずにスパっと終わるのがまた良いんですよね。
もっと聴きたいという余韻を残しつつ次の曲へバトンを繋いでいく。

お次は『TOOTIMETOOTIMETOOTIME』。
こちらも軽快でキャッチーな2010年代的な一曲である。



しかし歌詞の内容は二股の話などちょっとドライな話だ。
今作のタイトル「ネット上の人間関係についての簡単な調査」らいい、
現代的な人間関係について綴ったリリックが効いてる。

曲名の『TOOTIMETOOTIMETOOTIME』からして遊び心があるし、
発音すると楽しそうな韻を踏んだ歌詞もキャッチーさに拍車をかける。
もっと英語に精通している人が聴いたら凄い楽しいんだろうなー。


そして4曲目の『How To Draw / Petrichor』もまた凄いんですよ。
2部構成のような曲で、後半にかけて音のエンジンがかかってくる
あのキタキタ感がたまらない。あとこの手の構成の曲に俺は昔から弱い。


5曲目の『Love It If We Made It』のどこか懐かしく響く感じもいいし
6曲目の『Be My Mistake』の箸休め的にキュンとくる切ない感じもいい。

そして7曲目『Sincerity Is Scary』がまた大好物なんですわ。



カフェで流れてそうなやや落ち着いたリズムで聴かせる曲。

ホーンの鳴り方やサビのコーラスが特に印象的で、
ジャズっぽい一面も感じる。一定のリズムで進む安定感の中にも
たまに顔を見せる危うい不安定さがあって聴いてて飽きない曲だ。

あとこの『Sincerity Is Scary』の終わり方とかもね、
2000年代を代表するあのレディヘの名盤『KID A』収録の
『The National Anthem』っぽいなーとか思って。

あちらに比べると大分明るめなんだけど、そういうトコも
2000年代っ子の俺にとってはじわじわ効いてくるんですね。


そういや9曲目の『The Man Who Married A Robot / Love Theme』の
始まり方も、これまた2000年代を代表する名盤である
Arcade Fireの『Funeral』の始まり方っぽいんだよね。

ちなみにこのThe Man Who Married A Robotって曲、
つまりは「ロボットと結婚した男」ってタイトルなんだけど
こういう曲もまた今作のタイトルに沿った現代的なテーマである。


そういや今回のアルバムは15曲で1時間に満たないくらいの長さで、
17曲で75分くらいあった前回に比べればスッと聴きやすいサイズだ。
しかし15曲で1時間無いって1曲1曲も結構コンパクトなのね。
無駄を上手に削減したんだろうか。日本の古い組織も見習って欲しい。

今回のこのアルバムのテーマとして
”現代のネット社会について”ってのがあるんだろうけど、
重苦しくはならずに全体的なトーンとしては結構明るいのも特徴だ。
最終的には前を向けるようなポジティブな内容の曲も多い。

この辺りがまた彼らの手腕の見事なところであると思う。
確かに過去の色々な音楽も参照して引き出しとして使ってるんだけど、
あくまで2018年の今の音楽として打ち出している点。



それに過去のままで引用したらダークになってそうな曲も、
The 1975の手によってポップな曲に新しく生まれ変わって提示される。
優しくて温かくて今まさに2018年を生きている音楽がここにあるのだ。

 

しかし一点だけ、14曲目の『I Couldn’t Be More In Love』だけがですね、
どうしても俺は苦手でした。もうめっちゃ懐かしの洋楽ポップスぅ
みたいな曲でこのアルバムを聴くテンションにしっくり来なかったんよ。
ホントこの曲だけはどうしてもハマらない感じ。残念ながら。


だがこの一枚は本当に”骨太のポップス”と言えるような作品だった。
重厚で硬派なのにポップス。芯が通ったポップスとでもいうべきか。
彼らはデビュー時からココを目指してやってきたんじゃないかなー。

この3rdアルバムにしてその試みが極まったんだと思うし、
1stの頃には「うるさ方」的な態度だった俺らのようなリスナーさえも
彼らはこの3rdで取り込む事で本気で天下を取りに来た感すらある。

アレだな、この3rdでやられる感じって
レディヘとかMUSEとかVampire Weekendとかのパターンだな。


そして今作も当然のようにイギリスではチャート1位を獲得。
洋楽メディアからも軒並み高評価を得ており、
もうThe 1975は文句なしに2010年代を代表するアーティスト確定だ。
いいですか皆さん。The 1975、しっかり覚えておきましょう。

しかもなんとですね、この作品の続編となるアルバム
『Notes on a Conditional Form』が2019年5月にもう控えているらしい。
うっはー、ちょっとちょっとThe 1975さんまだやっちゃいますかー?

しかしラストトラックの『I Always Wanna Die (Sometimes) 』が
やや変則的で不穏な終わり方だったのはきっとそういう事だろう。
なるほど、敢えて続編を匂わすような作りにして〆やがったな。


だがそうなるともう自然と次回作への期待を高めずにはいられない。
3rdがこれだけの完成度なのである。でもまだ続きがあるらしいのだ。
クオリティの高さを求める意識がリスナーに芽生えてしまった以上、
The 1975に対するハードルは右肩上がりに最高値更新中の状況である。

こうなるとアーティスト側も辛いんだろうなーなんて思っちゃうけど、
でも俺はあまりThe 1975については心配していないんですよね。

なんかアイツらまたフツーにスゲーの出してきそうだもん。
そういう余裕と言うかリスナーを満足させられる自信すら感じる。

続編が出たら今作もまた評価が変わる可能性はあるけど、
でももうこの『A Brief Inquiry into Online Relationships』単体でも
十分に納得できる強力なアルバムである事は間違いない。
是非聴いてから年を越そう。なんなら除夜の鐘代わりにコレを聴け。


洋楽にことごとく裏切られた1年だったけど、
最後の最後にこのアルバムに出会えて本当に良かった。
筋肉とThe 1975は裏切らない。これが2018年の総括です。

また来年の新作にも大いに期待しております。
ただ邦題については期待していませんからね。
どーせまた変な邦題になるんだろ?邦題もある意味裏切らないよね。

そして次のアルバムの1曲目も…『1975』かな。


【採点】
・2018年最後に出た名盤  30点
・3rdでやられたこの気分  30点
・骨太なポップス極まれり 30点
・やっぱ正式な発音は面倒 -2点
88点