脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】The Who / Tommy [1969]

Listen Who, Feel Who!

トミー(紙ジャケット仕様) トミー(紙ジャケット仕様)
ザ・フー

曲名リスト
1. 序曲
2. イッツ・ア・ボーイ
3. 1921
4. すてきな旅行
5. スパークス
6. 光を与えて
7. クリスマス
8. 従兄弟のケヴィン
9. アシッド・クィーン
10. アンダーチュア
11. 大丈夫かい
12. フィドル・アバウト
13. ピンボールの魔術師
14. ドクター
15. ミラー・ボーイ
16. トミー、聞こえるかい
17. 鏡をこわせ
18. センセイション
19. 奇蹟の治療
20. サリー・シンプソン
21. 僕は自由だ
22. 歓迎
23. トミーズ・ホリデイ・キャンプ
24. 俺達はしないよ

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 なんと、あのフーが新作を発表するらしい。

rockinon.com


キンクスの再結成に触発されたのか知らんけど
高齢者が元気なのは大変良い事である。

ただ存命中のメンバーがもう2人になっちゃっているので、
気分的にはバンド形態って感じはあまりしないんだけど…。

さてさて、俺は過去にもたびたび
ここ日本におけるフーの人気の低さについて言及してきた。
Who is Who?」みたいな冗談のような本気がまかり通る事態だ。

世界的にもトップクラスのネームバリューがあって
イギリスを代表する伝説的バンドであり、
2012年ロンドン五輪の大トリも務めたバンドなのに、である。


一説によると、全盛期に来日しなかった事が大きいとか。
今と比べると海外の情報が入りにくかった昔は、
来日コンサートを行う事で日本でも宣伝されて
認知度が高くなるケースが多かったらしい。

結局フーは全員が現役だった時代には来日せず、
2人のメンバーで来日公演したのが2008年の事だった。

しかし2009年に放送開始したアニメ『けいおん!』によって
若い世代にも一気にその名を広げるという珍現象も同じころに発生。
そのお陰でなんだか良く分からないポジションを獲得し現在に至る。


まぁそんなフーが新作という話なんですが、
つーか2006年にも新作出してたのね…。聴いた事無かったわ。


コレ聴いてないんでなんとも言えないけどさ、
でもやっぱりフーは60~70年代のあのフル稼働中のアルバムこそが
勢いを一番感じる事が出来るんじゃないかと思ってるわけで。


というわけでフーのアルバムを全部聴いた俺じゃないんですが、
おススメのアルバムという話でしたらやっぱり『Who's Next』か
あるいはこの『Tommy』かなーという事になっています。

この頃のフーはコンセプトを持ってアルバムを作り込んでいたので
純粋にアルバム単位の聴き応えが高い作品が多い。
というか60年代後半はコンセプトアルバムが台頭した始めた時期だ。

まー世間的には『Who's Next』の評価が高いようだけど
ただアレはコンセプトが未完成のまま終わったといういきさつがあり、
個人的には不完全燃焼のアルバムというイメージが強い。
『Who's Next』も人気曲多いし好きなんだけど。

だから俺はですね、そんな名盤『Who's Next』の前作となる
この『Tommy』を推したいなと思うんですよね。
世の理とはちょっとズレたポイントを推す、それがサブカル道だ。


さて、英国の大御所ザ・フーがその地位を確立させた渾身のアルバム
それこそがこの通称”ロック・オペラ”『トミー』!
ギターのピート・タウンゼントの才能が全開の一枚なのである。

俺がこのアルバムに辿り着いたのは、
コレに収録されている『Pinball Wizard(ピンボールの魔術師)』に
出会ってからだったな。

今30代前半の世代が洋楽を聴き始めたきっかけって、
結構オムニバス・コンピレーションから入った人が多い。
俺が高校生くらいの時にオムニバスブームと言えるくらい、
オムニバス・コンピレーションが乱発されててかなり売れていたのだ。

ザ・フーもオムニバスに収録されていた『My Generation』で知り、
また別のオムニバスに『Pinball Wizard』が収録されていて、
その魅力に憑りつかれた俺はフーに興味を持ちアルバムを聴いてみた。



しかし洋楽はオムニバスで単独曲ばかりを聴く事が多かった俺は
当時はアルバムを通して聴くという文化にまだ染まりきっておらず、
このアルバムも最初は24曲という収録曲数に驚愕した。

だがこれが戯曲のような構成のアルバムだと
ライナーノーツに書かれた解説を読んで凄い納得したんだよなぁ。
昔は音楽CDに付いてきたライナーノーツも貴重な情報源だったのよ。


アルバムの軸となっているのは
主人公トミーが幼少期のトラウマを抱えながら
浮き沈みの激しい人生を歩むストーリーである。

そんな物語をバンドサウンドでオペラのように奏でているわけだが、
途中でトミーはピンボールの才能を開花させる節がある。

で、そこで登場するのが
このアルバムの核とも言える曲『Pinball Wizard』というわけだ。
邦題は『ピンボールの魔術師』。金田一少年の事件簿に出てきそう。

すっかりザ・フーの代表曲となっている曲だが、
イントロのギターがじわじわとワクワクの下地を作っていき、
あの「ギュイ~ン」が鳴るタイミング、あれがもうたまらんね。

ピンボールというフレーズも
この他の曲の中でもちょくちょく登場するので、
まさにこのアルバムの重要なキーワードになっている。

しかしだ、なぜ「ピンボール」という
ちょっとマイナーなチョイスなのか?
主人公を活躍させるならもっと他の競技でも良かったろうに。

実は当時影響力のあった音楽評論家がピンボール好きで、
彼に好印象を与えるために主人公の特技をピンボールにしたとか
そんな理由だったらしく、その点はロックじゃねぇなぁと思ったりね。

しかしこのアルバムのコンセプトは大いに評価され、
トミーは後に映画化やミュージカル化もなされどれも成功を収めた。
この『Tommy』はロックの歴史の中でも有名な作品となったのだ。



ちなみに自転車のヘルメットみたいなジャケットデザインだけど、
これも網の向こうにメンバーが映っているデザインと
映っていないデザインのパターンがあるらしい。

どうやら発売当時はアーティストが映っていないアルバムジャケットは
レコード会社が良く思わなかったという時代背景があったそうな。
それで再発時に異なるデザインで分岐していったんだろうね。

俺が所持しているCDのジャケットはメンバー無しバージョンだった。
メンバー無しの方が本来のバンドの意図っぽくて好きかな。


あとこのアルバムでもう一つ重要なワードは「See me, Feel me」だ。


直訳すると「僕を見て、僕を感じて」となるので
文字だけ見るとなんだかナルシストなアイドルっぽいけど、
そこはトラウマを抱えた主人公トミーだから大目に見てくれ。
自己の存在を肯定したいがために彼が心から叫んでいるのだよ。

この「See me, Feel me」というフレーズも作中で何度も登場し、
ラストの曲『we're not gonna take it (俺達はしないよ)』でも
リフレインのように繰り返されている。

主人公トミーが物語の中で自分の存在を証明しようとする、
そのタイミングで叫ぶようにこのフレーズが入ってくるのだ。



少しややこしい話になるんだけど、
ザ・フーの曲の中にある『See me, Feel me』という曲は、
このトミーのラストの曲『we're not gonna take it 』の後半部分だ。

このアルバムの中では構成的に繋がってはいるけど、
切り離して『See me, Feel me』だけで扱われる事もあって
ベスト盤とかでも『See me, Feel me』単独で収録されたりしている。


まぁでもこのアルバムは
やっぱり1曲目から順に聴いてこそなのだと思う。
『Pinball Wizard』はめっちゃリピートで聴いてたけどねw

ちなみに2012年のロンドン五輪の開会式だったかな、
ピンボールの魔術師が流れる場面もあったな。

確かにこのアルバムで有名な曲ってのはピンボールの魔術師
くらいかもしれないけど、60年代にこれだけの作品を生み出した
フーはやっぱり凄いと思うんですよ。

だからみんなフーを聴いて。フーを感じて。Listen Who, Feel Who!


フーが新作という個人的には気になるニュースもあって
ちょっと久々にCD引っ張り出して来ようかなと思ってる今日この頃。

新作もどんな感じか聴いてみたいね。
また新作をやる気になったおじさん達の本気ってヤツが
どんなものなのか興味があるところです。



【採点】
・ロック・オペラの大作   40点
・金田一に出てきそうな曲名 20点
・自転車のヘルメットみたいなジャケット
              20点
・新作にも注目        3点
83点