脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】ヤバイTシャツ屋さん / Tank-top Festival in JAPAN [2018]


ツッコみ Festival in Japan.

Tank-top Festival in JAPAN Tank-top Festival in JAPAN
ヤバイTシャツ屋さん

曲名リスト
1. Tank-top Festival 2019
2. KOKYAKU満足度1位
3. 小ボケにマジレスするボーイ&ガール
4. 君はクプアス
5. どすえ ~おこしやす京都~
6. 大人の事情
7. リセットマラソン
8. 鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
9. 秋
10. かかとローラー
11. ざつにどうぶつしょうかい
12. かわE
13. ゆとりロック

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「えっ?まだヤバT聴いてんの?」

はいはい俺の近辺でも始まりましたヤバT離れ
中年のヤバT離れ。みなさんの周りはどうですか。つかず離れずですか。

そういう奴はどーせ最近King Gnu聴いてんだよ。
どーせ『Sympa』聴いてヤバいヤバい言いだしてる。
俺には分かる。そういう軽薄な奴らは来年にはKing Gnuから離れてる。

まぁ俺も今度『Symapa』の話もしようかなとは思うけど、
今日はこのヤバTの『Tank-Top Festival In Japan』の話だ!
すっかり遅くなったけど俺はヤバTから離れたわけじゃない。
ありぼぼちゃんがいる限り俺はヤバTから離れないぞ。


さてその若いパワーでほぼ1年に1回のペースで
アルバムを出してくるヤバTなんですが、
今作のタイトルは『Tank-top Festival in JAPAN』。
またしてもタンクトップがタイトル

前作は『We love Tank-top』。
前前作は『Galaxy of the Tank-top』。
前澤友作はTwitter停止。
ヤバTはタイトルの思考停止である。

ただ「Tank-top Festival」で終わるだけじゃなく、
最後に「In Japan」を付加している辺りに
多少の工夫の跡が垣間見えます。


しかし、そんな今作のジャケットなんですが
通常盤は確かに「In Japan」感があるハッピのデザインなのに
初回盤がこちら。



どう見ても外国の祭りです。この売国奴がっ!


つーわけで1曲目は毎度お馴染みタンクトップの曲から。
タイトル曲的扱いの『Tank-top Festival 2019』だ。



そう、ヤバいTシャツ屋さんのアルバムは
いつもタンクトップから始まるんです。

この曲の中でも歌われているように、
もう彼らはずっとタンクトップの呪縛の中にいる。
Tシャツはおろかノースリーブですらない。
タンクトップの曲をやるしかないTシャツ屋なのである。


2曲目『KOKYAKU満足度1位』。
やや自虐っぽいネタを盛り込んだ激しめの曲。



「冠婚葬祭」という日本語の発声が
確かに何かの音っぽく聞こえるというヤバTらしい1曲。


4曲目『君はクプアス』。
「君はクプアスみたいだね」と歌う甘いラブソングのようで、
でもクプアスが何か知らないので全ッ然共感できないわけで、
そして調べてみると割と見た目がキモいというホラーソング。


8曲目『鬼POP(以下略)。
タイトルを覚えるのを諦めさせる程の特盛ソング。



自分で「最高のサビまで54321 Go」とサビ前で歌っておいてから
サビの入りで「キャッチー~」と歌うという
自分で言っちゃうタイプのとんでもなくキャッチーな曲。
ありぼぼちゃんのめちゃ高いかわE声が聴けるのも◎。


11曲目『ざつにどうぶつしょうかい』。
なんかざつにどうぶつをしょうかいしていくきょく。


て感じで路線なんか変わるはずもなくいつも通りのヤバTだった。

…と、思える一枚ではあったんだけど。


いやいや今作はですね、意外にロックなんですよヤバT。
みんなヤバTのキャラと激キャッチーな曲に騙されて気づいていない。
奴らがひっそりとロックしてる事に。


3曲目の『小ボケにマジレスするボーイ&ガール』
最近の若者のあるあるなやり取りを題材にしてると見せかけ、
実はコレは徐々に息苦しくなる現代社会へのアンチテーゼなのだ。

人間は本来虚構を愛し虚構を楽しむ生命体のはずである。
くだらないジョークだったりちょっとした冗談だったりは、
虚構を愛する人間が生み出した実にハイコンテクストな芸と言える。

ところが最近はすぐに言葉の切れ端を掴んでは
「あなたの発言で傷つく人もいるんだぞ!」と
己の正義を振りかざさずにはいられない人間も増えた。
いや、増えたというよりネットのせいで目立ってきたのか。

そんな虚構も許されないつまらない世の中にしたくない、
というヤバTの願いもあって生まれたのがこの
『小ボケにマジレスするボーイ&ガール』である(と推察する。)


6曲目『大人の事情』は、
本来そこに収録される予定だった曲が
大人の事情で収録できなくなったので、
代わりにその事実を曲にして歌ったものだ。

ヤバTだからそれすらもネタじゃないかと
思ってしまうところだが、曲中で何度も「マジだよ」と
繰り返し言っているのでどうやらマジらしい。

NHKのために書き下ろしたあの曲かとも一瞬思ったけど、
でも収録出来ないほどの理由は無さそうだし
本気でなにかヤバかったんだろうなヤバT。

そういや収録されてないな『案外わるないNHK』。



でもその出来事さえも曲に昇華し
収録予定だった位置に堂々と収録するソウルはさすがである。
どんな曲だったか凄い気になるのでいつか聴きたい。


9曲目『秋』は我らがありぼぼちゃんが作った曲だぞ!

タイトルからして少し切ない感じの曲かと思いきや
「読書の秋 食欲の秋 スポーツの秋
 そんなんできるわいつでも!」という謎の怒りを
ぶちまけてシャウトするなかなかに尖った曲だ。

うん。確かに。
ありぼぼちゃんがそういうなら俺もそう思うよ。
秋って何も無いよね。俺の誕生日があるくらい。


て感じで結構強烈な曲が今作には収録されているのである。

さらにキャラクターのせいであんまり注目されないが、
バンドの音だってとても良い。正統派のメロコア継承者の音だ。

あの2000年代の洋楽由来の疾走感溢れるビート。
諸先輩達が鳴らしていたメロコアの血がちゃんと通ってる。
故にヤバTの曲はより楽しく、そしてカッコよく感じられるのだ。

かつてメロコアボーイ&ガールだった人間なら
イントロを聴くだけで本当に懐かしい感覚になるだろう。


特に12曲目『かわE』はメロディセンスが凄いキレてると思う。



なんと映画『ニセコイ』の曲と言う事で、
ヤバTにしては珍しく結構まともに素敵な曲である。

Aメロの後半とサビの後半部分の盛り上がる部分が
同じメロディーの運び方になってて、
そこに楽しい歌詞がバッチリ乗っかる仕組みだ。

歌詞はそこそこふざけているんだけども、
実はコレすっごい良く考えられた曲で、
気づけば不思議なマジックにかかったかのように
面白さと感動が混じった気分になっているのである。


どうだろう。ヤバTから離れてしまった諸君。
ヤバTはコミックバンドで終わらせるわけにはいかない。
ふざけたフリして実は色々考えているインテリな奴らなのだ。

しかしまぁヤバTがなんだかんだでずっと人気なのは、
やぱりどこまでも彼らが現代的だからだと思った。

それは現代的というのは最先端の音楽をやってるという意味ではなく
その「立ち位置」である。ちょっと言語化にするのは難しいが、
言ってしまえばヤバTは良き「ツッコまれ役」なんだろう。


ネットが発達しこれだけの人がSNSを利用する現代は
「一億総ツッコミ社会」みたいに形容される事もあるが、
俺もそうだと思うの。皆が誰かにツッコみたいのである。

それは権威であってもいいし馬鹿をやらかしたどっかの誰かでもいい。
ネットという武器を持った人間はツッコむ対象を探している。
ツッコむ事自体を楽しみ、そして皆のツッコみを見て楽しむ。
ツッコむ対象を日々皆が探し求めているのが現代日本だ。

しかしだ、ツッコみ側ばかりでは当然ストーリーは成り立たない。
ネットであれば1つの事象に大人数でツッコむ事も出来るが、
それでもやっぱり「ツッコまれ役」がいなくては皆困るのだ。


そのポジションにうまいとこバンドとして入り込んだのが
ヤバTなんだろうな、と思う。だってホラ、現にこうやって
俺は今ヤバTのアルバムに対してツッコんでいるわけである。

もうどうぞツッコんでくれと言わんばかりの曲を出すじゃん?
明らかにネットでのみんなの反応待ちじゃん?ヤバTの曲。
そしてまんまとやられるの。ツッコまされてしまうのよ俺ら。


しかし前述した『小ボケにマジレスするボーイ&ガール 』のように
ツッコみを過ぎたどつき行為はこの世からどんどん
「良いツッコまれ役」を追い出していってしまうのも事実。

だから彼らは今回、ちょっとロックな一面も出したのだろう。
ただのコミックバンドじゃないぞ。キュウソネコをカミまっせ。


いつもと同じようなヤバTと思わせておいてちょっと違う。
またツッコみたくなったらヤバTに戻っておいで。
ヤバTは今日も血気盛んな日本人のために歌っているのだ。

いつも誰かが炎上してはお祭り騒ぎになる日本。
まさにFestival In Japanなわけである。

うーん、なるほど。そこまで考えてこのタイトルですか。
さすがはヤバT。もうヤバT通り越してヤバUやんけ。


ヤバTはまだまだヤバい。

これだけのセンスを持ち合わせているのだ。
勝手にあまり長くは活動しないんじゃないかとか思ってたけど、
きっとこれからもタンクトップのまま走り続けてそう。

ではまた1年後、次なるタンクトップのアルバムを待ってます。
ツッコみの腕、上げとかなきゃね。


【採点】
・またもやタンクトップ 40点
・ロックの心も忘れない 30点
・ツッコみたい日本人へ  5点
・俺はどちらかというと普段はボケ役
            -1点
74点