脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】King Gnu / Sympa [2019]


これ、テストに出ます。

Sympa Sympa
King Gnu

曲名リスト
1. Sympa I
2. Slumberland
3. Flash!!!
4. Sorrows
5. Sympa II
6. Hitman
7. Don't Stop the Clocks
8. It's a small world
9. Sympa III
10. Prayer X
11. Bedtown
12. The hole
13. Sympa IV

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はい。もうね、発売から大分遅れてしまいましたが
まだまだ全然賞味期限内というかむしろこれからな感じですよ。

King Gnuの『Sympa』っす。

読めない?は?今年の邦楽中間試験出るからな?
キング・ヌー」の「シンパ」だよ?分かった?

…でももしかしたら「シンパ」じゃなくて「サンパ」かもしれん。
自信なくなってきた。誰かお前は間違ってないと言って。


今年1月に発売されるや否や話題沸騰となったアルバムである。
これとあいみょんのアルバムさえ押えとけば、
とりまもう最近の音楽について来れるって感じのレベルの雰囲気。

このKing Gnuというバンドだが、年明けの日テレのバズリズムで
「コレはバズるぞBEST10」で1位に選ばれて、
そしてナイスタイミングでこのアルバムが発売されて、
つーか次はドラマの主題歌も決まってて、
もうコイツラを知らなきゃ音楽好きとか言わせねぇレベルの人気だ。


ちなみにドラマの主題歌となった新曲『白日』はこちら。

『白目』じゃねーからな!


ちなみに俺はそれなりに前からこのバンドは知ってはいた。
ひとつ前のアルバム『Tokyo Rendez-Vous』に収録の
『あなたは蜃気楼』が耳に残るなぁって印象のバンドだった。




しかしなんだろう、彼らが注目を浴びたのは
やっぱ去年の秋に発表した『PrayerX』辺りからなんだろうか。
あれよあれよという間にこんなに有名になってしまわれた。

あの動物の「ヌー」を英語表記したら「Gnu」だという事も
彼らのおかげであっと言う間に世間に広がった。
今度の英語の中間テストとかに出しても大半の高校生は分かるはず。


つーわけでこの『Sympa』ですよ。

これはねぇ、確かに凄いんだろうなと俺も思いましたよ。
思いましたとも。思った上で言わせてもらうけど
結構聴くのがしんどいアルバムだったんだよな…。

若い人には理解できないかもしれんけどね、年齢を無駄に重ねると
こってりしたものがなかなか食べられなくなってくるわけよ。
そういう事。このアルバムは上の世代が聴くと結構疲れるのです。


ただ前作と比べると確実にパワーアップしているのも分かる。
『あなたは蜃気楼』の気分で聴いたらかなり違ってて驚いた。
間違いなくブレイク中のバンドの勢いってヤツを感じる。
好き嫌いは置いておいて今年聴いておくべきアルバムなのは間違いない。

1曲目はイントロ的な曲『Sympa Ⅰ』から始まる。
ちょっと不安になりそうな緊張感のある音楽だ。
その最後に「We Need Help!」みたいな小さな叫びが聴こえた後で、
2曲目のリードトラックとなる『Slumberland』となる。



なにぃーっ、こんな曲がリードトラックぅ!?

凄いね。
こんなちょっととっつきにくい曲がリードトラックな事もだし
そしてこの曲がまた流行ってるから驚きなのである。

星野源が『POP VIRUS』で耕してくれていたおかげか?
こんなインテリとか陰キャが好きそうな曲が
あっさりとウケているという事実がしゅごい。


そして3曲目は『Flash!!』。


一気にライブでブチ上がりそうなノリの曲である。
ロックキッズが大好物そう。こういう曲もやれまっせ的な感じ?
あとブラーの『Song2』を意識している気がする。

これと次の『Sorrows』はテンポが速くてカッコイイ系。
Sorrowsなんて悲しいタイトルの癖にカッコイイ曲である。
もう冒頭で勢いが止まらない。若さってなんだ?ふりむかないことさ。


そして間に『Sympa Ⅱ』のインタールードを挟んで
少しやや落ち着いた大人の感じの曲が3曲並ぶ。



もうどれもがこれでもかってくらいメロディアスでグッとくるのね。

そう、とにかく彼らは惜しげもなくメロディを畳み込んできやがる。
これが俺が聴いてて疲れるところでもあり、でも最大の魅力でもある。


曲を考えてて、もし強力なメロディが思い浮かんだら
普通はサビとかにとっておきそうなところを
奴らは出し惜しみなく曲全体に使ってくるのだ。

だからどこを切っても強メロディばっかりなのである。
強すぎる。疲れる。でもとても勇気のある音楽性だと思った。

でも、確かにサビはいいけどそこに到達するまでが
いまいちピンと来ないって曲が世間には結構あるもので、
故に「強引にサビに持って行ってるなー」と感じる事も普段多い。

しかしKing Gnuの曲には一切それを感じない。
もったいぶらずに全力投球しているからの勢いがそこにあるわけだ。
だからサビがどこだかも良く分からん曲もすんなりとウケるのだ。


『Sympa Ⅲ』のインタールードを挟みアルバムは最終章に入る。

アニメ「BANANA FISH」のEDにもなった『Prayer X』だ。



とてつもなく繊細でメロディックな曲であり、
どこかで聴いたことあるようなノスタルジックさも兼ね備えた、
自然と聴き入ってしまう曲。MVもまた観入ってしまう。

これもメロディが強力なのは前提として歌詞がまた結構気になるのだ。

出会いと別れを 繰り返す日々の中で

一体全体何を信じればいい? 


なんだろう、これまでは出会いと別れを前向きに捉える歌詞の方が
俺らには馴染みだったと思うのだけどこれはまた別の捉え方である。

自分の中に拠り所となる何かが無いと、
ただ出会いと別れを繰り返しているだけでは不安は拭い去れない。
なるほど、こういう感覚は非常に新鮮だなと思った。


そしてラストを〆る曲『The hole』も切ない。

あなたの正体を あなたの存在を
そっと庇うように 僕が傷口になるよ


僕が傷口になる」とはこれまたなかなか見かけない言葉だ…。

「君の傷を僕が癒す」的な表現なら沢山溢れているものの、
自分自身が傷口になるとは一体どういう了見なのか。
献身的すぎるというか自己犠牲がハンパないというか。
「じゃあ逆に私はあなたの傷口になるね」でめでたしめでたしなのか。

彼らの曲のこういった言葉のチョイスに時々ドキッとさせられる。
そしてこういう部分もまた人気の要因の一つなんだろうな。

そして最後は『Sympa Ⅳ』で救急隊のサイレンのような音が聴こえ、
結局不安なムードを残したままアルバムは幕を閉じる。


いやーしんどい…

十分すぎるくらいのパワーアルバムなんだけど、
とにかくこいつぁ俺は気軽に聴けないな、と思った次第っす。

しかも驚きなのはこのアルバムの長さが35分という事。
濃厚すぎる。天下一品ラーメンか。内容濃過ぎだろ。
実はCDの容量2倍食ってんじゃねーの?


だがこういったバンドが出てくる時に空気は過去に経験がある。

俺の世代ならそれはおそらくDragon Ashであり、
それより後だと多分サカナクションであり、
もっと前ならフリッパーズ・ギターとかもそうだったんじゃないかな。

それまで世間全体が主流と思っていた音楽とは違うんだけど、
でも若い世代がすんなりとハマっていくという現象。
このKing Gnuの『Sympa』もそんな時代の潮目に登場した一枚。
2010年代の邦楽史のテストとかで出題されそうなアルバムと言える。


そしてフロントメンバーの常田大希は、
あの国内最難関大学である東京藝術大学出身なのである。
…ほーら、やっぱり新しい時代を作るのは結局インテリなんだよ畜生。

そして他のメンバーもマルチプレイヤー揃いであり、
バンドっつーか新進気鋭のクリエイター集団って感じなのである。
これはもう我々は納得するしかない。でも意識高いブームな昨今は
こういうアーティストが受け入れられるのもまた必然なのかもしれん。


そんなわけで、テストで高得点を狙う意識高い方々に限らず
日本国民なら聴いてみて下さい。邦楽の「今」がきっとありますよ。

ちなみにイギリスにはKing Nunというパンクバンドがいるらしい。
音楽性は大分違うけどそのうちコラボとかせんかなw


【採点】
・2019年要注目バンド 30点
・メロディの大放出  30点
・収録時間疑惑    20点
・結局インテリには勝てない
            -5点
75点