脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】あいみょん / 瞬間的シックスセンス [2019]


30分で消えるエロ。

瞬間的シックスセンス 瞬間的シックスセンス
あいみょん

曲名リスト
1. 満月の夜なら
2. マリーゴールド
3. ら、のはなし
4. 二人だけの国
5. プレゼント
6. ひかりもの
7. 恋をしたから
8. 夢追いベンガル
9. 今夜このまま
10. あした世界が終わるとしても
11. GOOD NIGHT BABY
12. from 四階の角部屋

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思い返せばいつの時代にも”歌姫”という存在がいた。

何をもって歌姫と呼ぶかなんて定義は誰にも分からないだろうけど、
でもなんとなくいつも「若者に支持される女性ソロシンガー」
みたいなぼんやりとした共通感覚がある気がする。

歌が上手いとか歌詞が素適とかそういう評価軸だけではない、
ただ一人の女性としての圧倒的な存在感を放っている事。
そして彼女に若者たちが熱狂している事。
いつの時代もこの構図が自然発生して歌姫を生み出してきた。

おそらく時代はいつも”歌姫”を求めているのだ。

歌姫が絶え間なく世代交代しているように見えるのはそのせい。
それまでの歌姫が表舞台から退いたかと思えば、
必ず次の若い女性ソロシンガーが勝手に台頭してくるもの。
歌姫は自然発生する。これはもう覆しようのない宇宙の真理なのだ。


さて、あいみょん氏。

彼女は次世代の歌姫となるのか。
いや、もうなっていると言っていいのか。

そんな彼女の真価を問うアルバム
『瞬間的シックスセンス』がついにリリースされた。
紅白のステージで注目を浴びて以来、
あいみょんへの期待値がストップ高を記録中の最中のリリースだ。

そしてあのカリスマ西野かなやんが今年頭に活動休止を宣言。
会いたくて会いたくて震えていたバイブレーション歌姫に代わり、
あなたの両腕を切り落としたり両目をくり抜いたりする
バイオレーション歌姫あいみょんが次期の覇権を取るのか。



そう、あいみょんの最初のイメージは俺はホラーだったのだ。

両腕を切り落とされたとしても両足の指で数えられるくらいの
数少ない人間関係の中においてそれなりの音楽通で通っている俺は
あいみょんについても1stミニアルバム『tamago』で聴いていた。

だからあいみょんについて書こうかと思った事もあったんだけど、
ぶっちゃけ上記の曲が怖すぎたせいで下手な事を書いた日にゃ
こんな場末のブログだろうが住所を特定され徹底的に追い詰められ
強制的に臓器提供させられる気がして書こうにも書けなかったんだよ。


そんな猟奇的だったあいみょんがですよ、
まさか『マリーゴールド』なんてさわやか名曲を繰り出してくるとは、
姫のご乱心かと思いましたよ俺は。


あいみょんの代表曲どころか2018年を代表する曲とまでなった
『マリーゴールド』通称マリゴー(※俺はそう呼んでる)。
この曲により彼女の知名度は一気に広がったのは間違いない。

お手本のようなJ-POPのヒットソングの属性を兼ね備えており、
虫がデカイと専ら評判になる程の田舎である我が街のお店でも
マリゴーのオルゴールが去年の秋頃には流れている程のレベルだった。
メダロット2のパクリとか言うなよ。
つーかあいみょんがメダロッターとかむしろ愛しいやろ。

そして続くシングル『今夜このまま』でも
さらっとしたJ-POPを聴かせてくれちゃったりして、
あれ?あいみょん氏も昨今の暴力反対の気運に負けちゃった?
とか思った。


思ってたけど。

大丈夫。あいみょんはアルバムの中にまだいましたよ!

『瞬間的シックスセンス』。
なんだこのカッコイイジャケットは。



このグラスはグッズ販売とかするつもりか。


1曲目のシングル曲『満月の夜なら』からなんかもうエロいんですが。
昭和のおっさんとかが好きそうな感じ。
おいおい大丈夫かあいみょんこんな曲が一曲目って。



性的なものがどーのこーのと騒がれやすいこのご時世に
今最も世間の耳目を集めているであろう女性シンガーが
堂々とアルバムの1発目にこういう曲を持ってくるとは。


この手の曲が時代に受け入れられるのかどうかは微妙なラインだが、
だが少なくともこれを逆に人気の男性シンガーが歌ってたら
世間の反応は違ったものになった(炎上していた)気がする。

きっとあいみょんは自分のポジションを自覚した上で
上手い具合に性的(と捉えられそう)な曲を放り投げてきた。
かなりの策士だ。等身大のシンガーのようで実務的な側面もある。


そして2曲目は『マリーゴールド』。
最近はアルバム2曲目に自信作を配置するパターンも大分増えたなぁ。
昔は1曲目って事が多かったんだけどね。

アルバムはかなり色んなタイプの曲が並んでおり、
あいみょんのルーツが散りばめられたようなカラーリングだ。
過去のJ-POPをなぞるような構成で飽きずに楽しめる。


ただ個人的には後半~終盤の印象がやや薄かった。
ラストの『from 四階の角部屋』とかは好きなんだけどね。
『from 四階の角部屋』は四畳半フォークの現代版的な曲?
てかあいみょんは今四階の角部屋に住んでいるんかな。家賃が割高だな。


でもやっぱり8曲目の『夢追いベンガル』は好きです。
MVも制作された今作のリードトラック。



『夢追いベンガル』というタイトルの語感がもうカッコイイ。
そして音も荒削りのバンドサウンドでカッコイイ。
一昔前に流行ったような音だが今聴くと新鮮である。

セックスばっかのお前らなんかより
愛情求め生きてきてんのに


ハイきましたあいみょんです。
良かった。この痛快さこそあいみょんです。
マイルドヤンキーよ聴いてくれ。あいみょん様の嘆きを。


そしてこの曲、サビ直前では

デジタルも流行りもいらないよ
エロも今はいらない

ともおっしゃってる。

…エ、エロも今は要らないだと!?

そ、そうなの??1曲目『満月の夜なら』であんな曲歌っておいて、
ものの30分くらいで気が変わるなんてかなりの気分屋である。
つーか今は要らないって事はそのうち要るって事よね。

そして2番では

セックスピストルズ の目覚ましがうるせー

セックスって2回言いましたよこの人。同じ曲の中で。
高校生とかがカラオケで歌うとき困るでしょうに。
つーかピストルズを目覚ましにしてんのかよ。
なんの曲だ。『Holidays In The Sun』か。

とまぁ以前のあいみょんっぽいなかなかの問題曲なんだけど、
これが聴いててとてもカッコイイし気持ちいいんですよね。
マリゴーであいみょんを知った人とかにはいい自己紹介曲でしょう。


そしてこの次の曲が『今夜このまま』なのもまたいい流れ。



「とりあえずアレください」てのは飲み屋でのビールの事かな。
やっぱあいみょんのセンス、見事におっさん寄りじゃんか。
おっさん受け狙いか。でも近づいてきたおっさんはギターで殴打しそう。

あと『夢追いベンガル』も『今夜このまま』もドラムの刻み方が好き。
やや早い寄りのミドルテンポの曲もあいみょんの魅力が伝わりやすいね。

て感じで総じて聴きやすいなだらかなアルバムではあったけど、
引っかかる部分にはかつてのあいみょんらしさもあった。



まぁ昔程に露骨な牙の剥き方はしていないので、
本当に初期のあいみょんファンからすれば「変わっちゃった」
って感想を持つだろうね。丸くなった感は否めない。

あと指摘されるように初期の椎名林檎感があるってのも分かる。
それは多分、性的な部分だったり彼女の持つオーラだったり
かつて椎名林檎が批評されたようにあいみょんも批評されるんだろう。

俺自身も椎名林檎にかなりの教育を受けてきているから分かるぞ。
椎名林檎の曲を聴いてニルヴァーナもピストルズも聴いたんだよなぁ。
だからあいみょんを聴いてピストルズを聴く若者もいるんだろう。


結論として、あいみょんは次世代の歌姫になるのかどうか。
椎名林檎的となると、これまで時代を彩ってきた歌姫の傾向とは
かなり違うジャンルになるしおそらく本人も歌姫の気はないだろう。

ただ冒頭にも述べたように時代が勝手に作り上げてしまうのが歌姫だ。
それに時代の節目の今だからこそ、これまでにないタイプの歌姫が
求められている時なのではないだろうか。


俺はこのアルバムを聴いて、あいみょんは歌姫だと思った

そんなに衝撃的なアルバムとまでは思わなかったけど、
でも次世代の女性シンガーとして、若者たちのアイコンとして、
他の平成うまれのカリスマの中にも埋もれない何かを持っている。

マリゴーしか知らない人は是非ともこのアルバムを聴いてほしい。
色んなあいみょんを感じる事が出来る一枚だ。
そして彼女が今の時代に出てきた意味を思い知るがいい。

なんてったって彼女は歌姫なんだ。

俺の第六感がそう告げている。


【採点】
・色んなあいみょんが聴ける     30点
・ジャケットのグラスが気になる   30点
・ピストルズの目覚ましが気になる  10点
・今はプリキュアの目覚ましが欲しい  1点
71点