脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

これからは「自粛しない」方がうまくいく。


大丈夫、国民を信じろ。


電気グルーヴのウルトラの瀧が逮捕された件が波紋を呼んでいる。
ついには関連作品の音源や映像が公開停止される事態にまで発展した。

rockinon.com


有名人がスキャンダルを起こす度に
毎回毎回繰り返されるこの「関連作品の封印」という処置。
いつも思うんだけどこれって誰が得するんだろうかね…。

過去にもこういった話は度々問題になってきたわけなんだけど、
「最近はあんまり聴かなくなったなー」かと思ってたらまた
「ええ??これくらいの事で公開停止??」なんて事があったり。


今回のピエール瀧関連の対処については
かなりキツめの部類に入るんじゃないかと思う。
直接的な被害者がいるわけではない個人の問題でこの騒ぎだ。

普段は菩薩で通っているさすがの俺もイヤんなってきたんですよコレ。
廃仏毀釈の仏像破壊運動かよ。電グルという文化が排除されていく。

とはいいつつもね、色んな視点があるとは思うので
個人的な整理も兼ねてちょっと一旦気持ちを落ち着かせたいのです。

あと俺今週から入院するんで、
その前に書いとかないといけない気がしたのです。
内田裕也さんが亡くなってそっちも気になるんだけど…。

ルールが決まっている部分と決まってない部分。


封印とか文化破壊とかちょっと大袈裟に書いちゃったけど、
結局実態は「自粛」って話なんよね。
「犯罪者が関わった作品は公開禁止!」なんて
法律があるわけでもなかろうし、公開側が勝手に自粛してる状況。

それに対して「作品に罪は無い!」と訴えるリスナー側。
「犯罪者の曲が聴けないなら洋楽なんて聴けない曲だらけ」とか
「そもそも音楽はドラッグと共に発展してきた」とかいった意見も多い。

確かに特に洋楽に関して言えばあのポール・マッカートニーだって
かつて来日時に大麻所持で捕まっていたし、
洋楽の歴史においてはドラッグによって得られた高揚感の中で
名作を生み出してきたアーティストが数多くいるのは事実だ。

そもそも前提として海外と日本では麻薬に関する事情が異なる。
大麻が合法の国だってあるので、まず大衆の認識が違うわけだ。
(つーか大麻よりも酒やタバコの方がヤバいとか言われている)


しかし、それはそうなんだけどあくまでここは日本、ジャパンだ。
日本の民主主義制度においてより多くの国民が選んだ代議士さん方が
頑張って考えて国民の意思として取り決めた法律によって、
日本ではドラッグが厳しく取り締まられている事になっている。

これは良いか悪いかではなく現在の日本がそうなっているという事。
だから日本で音楽活動をする場合は日本のルールの下で裁かれる。
逮捕されるのは仕方ない。ここはジャパンなのである。
乗ってけ!ジャパリビートするしかないのである。


しかしそうなるとジャパンのルールで定められてもいないのに、
販売・公開停止になるとはどういった力学が働いているんだろうか。
ここがやっぱり最大の疑問なのである。何に対する忖度なんだ。

犯罪者に資金が渡るのは許せないみたいな意見もあるようだが
ウルトラの瀧自身が一度捕まった以上、今後作品が売れたところで
麻薬業者に金が流れるというのも考えにくいし
ウルトラの瀧が社会復帰出来ないのもそれもまたおかしいし。

犯罪の重さを社会的制裁によって世間に知らしめる為と言うならば、
犯罪者のつるし上げるよりもドラッグの問題をより認知させる方が
効果的だと思うし、作品まで封印する意味もないだろうし。


ルールを疑う視点も勿論大事である。
しかし現状としてルールで裁かれるのは仕方ない。
だがルールに決まってないのであれば何の問題もない。

作品を封印する必要なんてどこにも存在しない筈なんだけど…。

むしろ逆に公開した方が良さそうな状況。


「作品に罪は無い」という言い分については俺も物凄く同意するし
今回の件についての皆様方の反応をネットで見ていると
最近はそういう考え方がむしろ多数なんだと思われる。

だからもし公開する側が「イメージが悪くなるから」という理由で
この措置に踏み切っているのだとしたら俺はむしろ逆だと言いたい。

今のこの流れの中で「いや、われわれは公開を自粛しない!」と
宣言するところがあれば逆にイメージアップになるんじゃないかと、
皆から「よくやってくれた!」と喝采されるんじゃないかと思う。


昔ならクレームが予想できなくて公開出来ない事もあったかもしれん。
だが今はネットで皆の反応が把握できる。そして今回の件については
大多数の人間が「公開停止はやりすぎ」だと思っているのが分かる。

ならば出来るはずだ。ここはジャパン。民主主義の国。
皆が公開を求めているのであれば堂々と公開すればいいのだ。
自粛ムードの中で抜け駆けして公開するのは”逆張り”でアリだろう。


そしてなんとなくだけど関西電気保安協会は、
その辺りの空気も分かっている気がする。ここはオイシイ場面だと。



ただこの曲に関しては電気グルーヴのウルトラの瀧じゃない方、
石野卓球のみが関わっているのでセーフなんだろうけどね。

自粛ムードはどうやって生まれるのか。

ではこういった自粛ムードを掻き立てているのは何なのか。

色んな要素があるんだろうけどやっぱり俺は
メディアの影響が大きいのではないかと推察する。
特に視聴率主義のワイドショーとかあの手の報道である。


まだ作品の今後の方針が決定してもいない段階で
「業界激震!出演作品が○○本!どうなる!?」みたいな煽りをつけて
連日放送されるワイドショーとかアレもうホントにやめてくれ。

そうやってメディアが面白がってるから、世間もなんとなーく
「あーこういった作品も見られなくなってしまうんだなー」みたいな
空気が勝手に醸成されていくんじゃないかと思うわけよ。

そのせいで停止されていない作品が一部あったりすると
どこかそれが「悪い事」のように思えてしまう。

公開を自粛するかどうかは個別の判断であるはずなのに、
ワイドショー等が勝手に先回りして騒ぐせいで、
あたかもそれが許されない事のように見えてしまう。本当に質が悪い。


そういう目先の事象よりも、コカインがどんな危険な薬物なのかとか
(実際に覚せい剤の中でも結構強力な部類らしいですね)
薬物に関する事件で過去にどんな事例があったとかの方がいいよ。
あとこれを機に海外と日本の薬物事情を比較するとかなら観たい。

だからこれまでの公開自粛系の事件だって、
結局は無意識的に皆の中に作り上げられた自粛ムードが肥大化して
それが自然に大多数の意見のようになっていって
どこなく民主主義っぽい決断としての「自粛」になっていたのでは。

しかし、それを「ハイこの作品も終了ー!やべー!大変だー!」と
盛り上がっていた層がある程度いるというのもまた事実だろう。
メディアもそういう層の反応を狙った上で
あんな報道をしているのであればどっちもどっちって話だけどね…。


しかし個人の発信が活性化して皆の意見がより見えやすい今だからこそ、
この空気は断ち切る事が出来るのではないかとも思えるわけです。
これからは自粛しないムードが生まれるようになって欲しいのです。

とは言いつつも…


…なんて事を言いつつも、俺が公開する側の関係者だったら
やっぱり二の足を踏むんだろうな。偉そうな事を言っちゃったけど。
リスナー側の視点とリリース側の視点ではスコープが違うというか。


公開する側の場合は、一部の人間だけが良いと思っていても
結局様々な方面への配慮とかお伺いとかそういうものが発生して、
「もう自粛した方が早えーわ!」とかなりそうな気もするのね。

今回みたいな話は全体的な合意を取らない限りは通らないだろうし。
話を通す中でどこか一カ所でも自粛したいという主張があったら、
じゃあやめとこうかってなりそう。構造的な問題でね。

ルールで決まっていない以上は公開しても良いというのは、
裏を返せば別に自粛してもいいという事でもある。

それに今回の騒動で結果的にレコード会社が儲かってしまうと、
会社としてはかなり後ろめたい気分になるだろうから
そういう意味でもちょっと自粛しとこうかって話になってそうだ。


だからこの手の問題は思った以上に複雑な要素が絡むんだろう。

でもやっぱり今回の件は一人の消費者としてやりすぎだと思うし、
特に音楽作品の公開停止についてはどうしても理解できない

放送中のCMとか明らかにキャラクターイメージが重要なものは
当然起用し続けるわけにはいかないので仕方ないとは思うものの、
本人が発表した音楽作品を制限する目的は一体なんなんだろう。

音楽については聴く・聴かないを基本的に選択できるものである。
街中に貼られているポスターみたいに自然と目に入るものではない。
ラジオがオンエアを暫く控えるとかはあり得るだろうけども、
少なくとも聴きたいという個人の選択肢を無くすのはいかがなものか。

「電気グルーヴを聴いて薬物に手を出す人がいるかもしれない!」
などと言うならばもっと制限した方がいい曲が色々あるぞ。
てか可能性を言いだしたらキリがない。そんなの皆分かってるだろう。


ひとまず『関西電気保安グルーヴ』で気を紛らわせるしかないか…。

drr.hateblo.jp

というわけで、せめて発表済の音源については
早いところ解放してあげて欲しいと思うところです。
そして多分、早く解禁した方にメリットがあると予想してます。


罪を憎んで人を憎まず。

今を生きる日本人の多くは作品の公開停止なんて求めていない。
大丈夫ですよ。怖がらなくても。堂々と公開を続けてもいいんです。

だから俺が退院したときにはもう聴けるようになってて欲しい。
(※来月頭には復帰してるはず。)


そしてまた次にこういう事件があったときは、
皆が良いと思う方向に変わってるといいですね。