脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】Solange / When I Get Home [2019]


彼女の妹がこんなに売れないわけがない。

When I Get Home When I Get Home
Solange

曲名リスト
1.Things I Imagined
2.S McGregor (interlude)
3.Down With the Clique
4.Way to the Show
5.Can I Hold the Mic (interlude)
6.Stay Flo
7.Dreams
8.Nothing Without Intention (interlude)
9.Almeda
10.Time (is)
11.My Skin My Logo
12.We Deal With the Freak’n (intermission)
13.Jerrod
14.Binz
15.Beltway
16.Exit Scott (interlude)
17.Sound of Rain
18.Not Screwed! (interlude)
19.I’m a Witness

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兄弟姉妹というのは何かと比較対象になってしまうものだ。

それはやはり同じような環境で育っているが故に、
第三者からするとその間に生まれた兄弟姉妹間の差異は
一体なんなんだろうという興味が拭えない事が大きいと思う。


さて、昨年のアメリカの音楽フェス『コーチェラ・フェスティバル』で
大絶賛を受けたのがヘッドライナーとして出演したビヨンセだった。
そんな彼女のコーチェラでのパフォーマンスを収めた映画
『Homecoming』が先日ネトフリで公開され話題を呼んでいるようだ。

さらにそのフェスのライブ・アルバムを突如リリースするなど
世界的に圧倒的な存在感を放っているビヨンセ。
アルバムを毎回突如リリースするのがビヨンセ流。

日本でも渡辺直美のお陰でビヨンセの名前は広く知られているだろう。
ビヨンセがスーパースターであるという事実は最早疑いようもない。




ではビヨンセの妹、ソランジュについて
我々はどれだけ知っているのだろうか。


正直俺もビヨンセの妹も音楽活動をしているぐらいの知識しかなくて、
今年出たこのアルバム『When I Get Home』で初めて音源を聴いた次第。

やっぱりそこには”大きすぎる姉”のイメージもあってか
心のどこかで「妹も同じような事やってるんだろうな」と思っていた。

それにこのソランジュのアルバムも突如リリースされたらしくて
もう姉妹でやる事がおんなじなわけですよ。サプライズリリース手法。
きっと音楽もお姉ちゃんのマネしたような路線なんでしょ?


みたいな先入観バリバリでソランジュの曲を聴いてみる。



!?

思わずマガジンの伝統芸「!?」をマネしてしまった。
なんじゃこの音楽!?

シンセの音がバックで鳴っているんだけど、
ソランジュのボーカルを無視したように気ままに鳴り響く。
ボーカルはボーカルで進行していくのだがそれもまた不定形。

どちらかというとアンビエントやフリージャズに近いアプローチだ。
すっごい雑に言うとマニアック。姉と一緒にしてごめんなさい…。

なんと、俺はソランジュというアーティストを完全に誤解していた。
ビヨンセのような圧巻のパフォーマンスで魅せるタイプではなく、
繊細でむしろ抑制されたようなエレガントで情緒的な音楽性。



とにかく音の使い方が独特と言うか難解というか…。
ブラックミュージック?フューチャーソウルって言うのか?
ソランジュ自身の歌声も主張はしすぎず、
その他の音と寄り添う様な形で複雑に曲に絡んでいくスタイル。


アルバムは全19曲というトラックの多さにちょっと驚くが、
間にインタールードが6つ含まれているため
純粋な曲数がそこまで多いわけではない。

ただインタールードが沢山入るのは前作も同じだったようで、
ボーカルも楽器のような位置付けにしているソランジュの方針として
インタールードも込みで楽しんで欲しいという事の現れかもしれない。




うーむ、こうやって聴いているとだなぁ、
ソランジュは姉のビヨンセと比較される事からの脱却も意識して
こういった音楽をやっているって事も考えられるわけだよねぇ。


どの世界もそうだけど、身内で活躍している人がいるとなると
どうしても比べられてしまうのは必然でもあり、
それ故に自分のアイデンティティは何か、オリジナリティは何か、
他の人よりも強く模索し続ける傾向があるのかもしれない。

ソランジュも実はデビュー自体は結構早かったみたいで
最初はあまり売れなかったけど試行錯誤しながら進化して
2016年の前作『A Seat at the Table』で見事1位を獲得。

ここで彼女も評論家筋からも歓迎され、
それまで長らく姉と比較されてきたであろうソランジュも
独自のスタイルを開拓して活躍できるようになっていったんだろう。


そしてそれはビヨンセサイドからも多分同じ事が言えるんじゃないか。

妹という存在が同じ音楽業界に入ってきて
一体どんな事をやっているのか当然お姉ちゃんとしても気になるはず。

そういやビヨンセだって2010年頃からややマンネリ感が出始めて
以前ほどの注目度は無くなっていったんだけど
2016年に発表した『Lemonade』で再び注目を浴びる事になる。

この『Lemonade』はメッセージ性が強いシリアスな作品で
それまでのビヨンセのイメージとは違った魅力を感じる一枚だったが
今思えばそこには妹からの影響が少なからずあったんじゃなかろうか。


姉妹がそれぞれ違う方向だけど活躍できるというのは面白い話だ。
勿論二人とも多大な努力をしてきたんだろうけど、
お互いの存在が静かに影響しあって今があるのは間違いないはず。



ただねー、
ソランジュさんってイマイチ再生数が伸びてない気がするのね。
あ、Youtubeの話ね。多くても3000万回くらい。
いや十分に凄いんだけど他の話題アーティストに比べるとって話だ。

姉ちゃんは曲によっては数億回の再生回数を誇ってるんで
ソランジュはその点はまだまだって感じだ。

きっとこれから伸びていくとは思うんだけど、
現時点では再生回数から察する限り
マイナーな音楽愛好家からの支持ってところなんかなー。


でもビヨンセとは違った魅力があるし、
というかもう比較する事自体が失礼って話だろう。
実力派女性シンガーの一角として今後も注目したいアーティストだ。

兄弟姉妹の話は人によっちゃ地雷だしね。みんな注意しようね。


【採点】
・突如リリース姉妹  30点
・姉の先入観を捨てよ 20点
・マニアックな実力派 20点
・兄弟姉妹の比較はNG -2点
68点