脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Song】ダンベル何キロ持てる? / お願いマッスル [2019]


Go! Go! Muscle!


ダンベル何キロ持てる?」と問われたら、
はて俺はいったい何キロ持てるんだろうか。

今年に入って体調不良、手術、がん発覚、抗がん剤治療と
怒涛のメニューをこなしているうちに体重も体力もガタ落ち、
うどんとカロリーメイトがお友達という生活を送っている今の俺。
おそらくダンベル2kgくらいが妥当なラインのような気がしている。


そんな生活を送っていると現実逃避するためにアニメを観るわけだ。
(※注:そんな生活を送っていなくてもアニメ観ます。)

早く元気になりたい、体力をつけたい、美味しいもの食べたい…

…なら、ウー!ハー!筋肉にお願いだ!



筋トレなどとは無縁(※偏見)の全国のアニメファンに
筋トレをさせるという偉大なムーヴメントを起こしつつある
話題沸騰中のアニメ『ダンベル何キロ持てる?』。

女子たちが筋トレを頑張るという趣旨の作品だが、
テーマだけならクソつまらなさそうな内容なのに
これがとても面白いアニメで俺も辛い日々の楽しみになっている。


トレーニングというのは言わば「自分との闘い」なのである。
そしてその「自分との闘い」というのが俺は大っ嫌いなのである。
は?なんで自分と戦わないといけないの?自分とは仲良くしよ?
みたいな。だから俺はトレーニングの類が全般的に嫌いなのだ。

スポーツみたいにゲーム性があるならまだしも
筋トレなんて俺は絶対にしないしやらないし、
全国のアニメオタクもきっとそんな人間ばっかり(※偏見)なんで、
サッカーとか野球ではなく”筋トレ”がテーマのアニメなんて
流行るわけが………


流行ってる


今度Abemaで一挙再放送も決定しているらしい。
このアニメで筋トレを始めた人間も多数いる模様だ。
まさかのアニメオタク一斉筋トレ時代の到来である。


さて、そんなアニメの人気を後押ししている要因の一つが
このやたらとクセになるテーマ曲『お願いマッスル』であると言える。




こちらのバージョンのMVでは筋肉アイドルの才木玲佳さんと
ボディビルダーの横川尚隆さんが出演している。
仕上がってるよ!仕上がってるよ!むしろ仕上がりすぎだよ!


曲を歌っているのは劇中の主人公、紗倉ひびきと
彼女が歌謡ジムのトレーナー、街雄鳴造の名義だ。

紗倉ひびきの声優はファイルーズあいさんという方で、
俺は名前を存じ上げておらず「紗倉ひびき(ファイルーズあい)」
というクレジットを最初に見てどっちがキャラ名か分からなかった

紗倉ひびきは劇中ではモテたい痩せたいという目的で
トレーニングジムに通う事になり、トレーナーの街雄鳴造と出会う。

ちなみに街雄鳴造のCVである石川界人さんは有名だ。
しかしこの街雄鳴造というキャラ、爽やかイケメンの顔でありながら
顔から下がガチムチマッチョというギャップに脳の処理が追い付かない。


そんな2人の掛け合いで進行するこのOPテーマ『お願いマッスル』。
「お願いマッスル」という寒いダジャレになる事態は避けられたが、
曲のタイトル以上に物凄いアニメソングに仕上がっている。


トレーナーの街雄鳴造による合いの手が
この曲のトレーニング感を引き出しているわけだが、
下地としてはやはり10年少し前に流行した
ビリーズ・ブートキャンプ」の存在はデカイ。

リズミカルな音楽に乗せて男性の掛け声が入る事で、
自然と体を動かしたくなる仕組みになっている。


そして音楽はディスコ仕立てのダンス・ミュージックなわけだが
これはtrfの『Overnight Sensation 〜時代はあなたに委ねてる〜』と
似た構造で、非常に良く考えられた作り込み方だ。



21世紀のアニソンの中には90年代小室サウンドの影響を受けたものが
結構見られるのだけど、小室の曲の中でも洋楽テイストが強い
この曲を意識させるアニソンは意外にも珍しい部類じゃないかな。

そして歌詞の韻の踏み方。
最近はラップ以外のポップスでも韻を踏む曲が増えてきたようだが、
この曲もしっかりその部分を抑えてある。
またファイルーズあいさんの表現力も豊かで、
その辺りの要素も絡んで大変に中毒性が高い楽曲に仕上がっている。


ちなみにこのアニメ、EDテーマの『マッチョアネーム?』も
なかなかにクセになる曲に仕上がっている。



街雄鳴造さんが色んな筋肉の名前を教えてくれるという
勉強にもなる一曲だ。ちなみにこれも別バージョンのMVが存在する。



マッチョな保育士さん(!)が出演しているクセが凄いMV。
なんでも石川界人さんのファンらしい。


このED曲の方はバックトラックが数年前に流行ったEDM仕立てだ。
サビのメロディラインは80’s洋楽のような大振り感のある懐かしさで
早めのテンポだったOPに比べるとミドルテンポ寄りで動きやすい。

OP曲で筋トレした後、ED曲でクールダウン出来る仕組みってわけだ。
ただED曲も最後の辺りに速いテンポが襲ってくるから気を付けろ!


というわけでまさかアニメから筋トレブームが起こるとは、
いやはや本当に令和は何が起こるか分からない時代だねぇ。

しかしNHKの『おかあさんといっしょ』にも
今年から「たいそうのおねえさん」の役名が登場したし、
女性の筋トレというのは時代が求めているのかもしれない。

主人公が色黒のツッコミキャラというのも意外性がある。
従来のアニメだとその枠は取り巻きが担いがちだったんだけどね。
さらにその主人公がサブキャラのお色気路線を
メタ的にツッコむという構図も効果的だった。これが令和か。


あとこの曲の本質的なメッセージって、
サビ後のフレーズにある

「頑張るあなたは美しい!」

のセリフにあると思うんよねぇ。


努力と言うのはそれだけで尊いものなのだろうか?

ここは意見が分かれる部分だと思うが、
特に今の時代はどうしても「結果」こそが注目されやすいとも言える。

かくいう俺自身もどちらかというと「結果主義」寄りである。
結果的に自分が思い描いていた通りにならなかったのだとしたら、
それは努力の「方向」と「量」が適切ではなかったのだと思っている。

だがこのアニメソングは「頑張る姿」そのものが美しいと褒め讃える。
結果的に目標に到達しなかったとしても頑張るという姿自体に
価値があるという事なのだろうか。うーん、難しい…。

だが、結果に関わらず努力そのものを礼賛する事は
この競争社会を生き抜くための「癒し」であるのかもしれない。
そんな視点からも一石を投じる話題のアニメソング。
俺も結果は出ないかもしれないが、筋トレでもやってみようかな。

少なくとも俺にそんな考えをちょっとでも生んでくれただけでも
このアニメは大きな役割を果たしてくれているのかもしれない。


ま、とりあえず俺は体調を回復させないといけないので、
その後に体力を取り戻すためのトレーニングをしてみよっかなー。


【採点】
・筋トレブーム到来  30点
・中毒性の高いOP   30点
・ためになるED    20点
・頑張る姿が美しい   1点
81点