脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】Black Midi / Schlagenheim [2019]


細かすぎて伝わらないロック。

Schlagenheim Schlagenheim
Black Midi

曲名リスト
   1. 953
   2. Speedway
   3. Reggae
   4. Near Dt,Mi
   5. Western
   6. Of Schlagenheim
   7. Bmbmbm
   8. Years Ago
   9. Ducter

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人間という生き物はどうしてもジャンル分けしたがるものだ。

良く知りもしないのに他人を「あの人はこういう人だから~」などと
カテゴライズしては都合のいいように解釈する。
きっと世界から紛争が無くならないのは、
人間のこういう性質のせいだと思うわけだ。


そうですね自己紹介ですごきげんよう。ジャンル分け大好きぃぃぃ!

特に音楽なんてのはもう生物学なんじゃねーかってくらい
細かくジャンルが分かれてしまっているんでですね、
コレ結構注意しないといけないとこですよ自称「音楽通」の皆さん。

普通の人からすれば「ロック」なんてね、
ギター鳴ってそうなのくらいの認識だからマジで。
ロックの中で色々分かれてるなんて夢にも思っていないわけ。


通じてせいぜいパンクとハードロックくらい。
グランジなんて普通の人が知ってるわけねーから気をつけろ。
シューゲイザーとか間違っても使っちゃダメ。伝わるわけがない。

下手な言葉使うとオタクが専門用語喋ってる状態になるからな。
「好きな音楽w?wデュフwwプログレですかねwwフォカヌポウw」
とか地獄。伝わらないコミュニケーションほど悲しきものは無いぞ。


まぁそんな事言ってもジャンル分けしたがる人間の性は止まらない。
音楽だって既存のジャンルに無いものが出てきたと思ったら
誰かが名前を付けてはまたさらに細分化していく…
そんな事の繰り返しでここまで来てしまっちゃったんですよね。

ロックも細かく分かれちゃってもうマニアックな世界になってます。
気付こう。俺達が一般社会で生きていく事は最早困難なのだ。
ツイッターで知ってるバンドでマウント取り合う日々を過ごそう。


さて、ちょっと話が悲しい方向に行ってしまったが気を取り直して本題。

マスロック」というジャンルがある。
結構古くからあるロックのジャンルの一種であり、
変則的なリズムで構成される変態プレイ音楽(いい意味)だ。

決してメジャーな音楽では無いんだけど、
2000年代終盤に少し盛り上がった事があった。



バトルスは結構有名だろう。
この『Atlas』は良く聴いてたなぁ~。
ちなみに数年前にフジロックで来日してる。

後は日本でも凛として時雨がオリコン1位取ったりして
マスロック(的な音楽)がブームになった時期はあった。
だがそれももう昔の話だ。2000年代爺の思い出話の一つである。


しかしだ、あれから約10年もの月日が流れた今日、
再びあの時のような感覚を呼び覚ましてくれるバンドが現れた。

ロンドンで今最も熱いとも言われるバンド、Black Midiである。



うごごごごごご、キタぜこの頭がどうにかなっちゃいそうな音楽っ!

いやしかしマスロックを彷彿とさせる音楽性ではあるが、
そんな容易く既存のジャンルに当てはめていいものなのか。
もしかしたら彼らは全く新しいバンドなのかもしれない。
そんな雰囲気すら感じさせる怪物感である。

さすが産業革命を起こしたイギリス。
イギリスあるある。新しい何かを切り開きがちである。


しかしこのBlack Midiというバンド、
ミステリアスというかニヒリズムを感じるというか
素性が良く分からないバンドである。

何せ全員19,20歳というとんでもない若さであり、
結成してたった1年で音楽メディアを騒がせる存在にまでなった
そのスピード感も尋常じゃない。何物なんだコイツらは…??

画像検索すると出てくるキービジュアルも尋常じゃない。

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from Anthrox Studio

このスマブラに参戦しそうな感じ。
どうですか。上スマッシュ強そうでしょ。

ちゃんとキャラ選択画面っぽいビジュアルまで用意してて、
もうゲーム画面に殴りこんでくる気マンマンです。

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from Anthrox Studio

しかしこの敢えてヌルヌルのCG感を出してくる手法が
彼らの謎めいたムードに拍車をかけている。


そしてこのなんだか怖い感じのジャケット…。

CDに付いてきた歌詞カードはアーティスティックなイラストで
そこはまぁ良かったんだけど、肝心の表ジャケットが凄い不気味。
なんだかヘヴィメタル的な怖さがあるんだよねぇコレ。

せめてカラーなら良かったのになんで白黒なのよそこ。
個人的にはちょっとこのジャケットは苦手だったかなぁ…。


収録曲の1つ『Ducter』。



序盤はシンプルなリズムパターンかと思いきや、
不気味に絡まってくる音や緊迫感のあるボーカルが
緩急をつけて襲ってくるのでなかなかに急展開な曲となっている。

不穏な空気を惜しげもなく出してくるMVも見応え十分だ。
こういう曲を聴くとやはり単純なマスロックとは言えない音楽だ。
マジで何者なんだBlack Midi。理系の俺の語彙力じゃ追い付かない。


ちなみになんだが「Black Midi」という言葉自体は
電子音楽のジャンルの名称として既に存在する言葉だそうだ。

MIDIと呼ばれる演奏データを使って音符を多重に組み合わせて
作成される音楽ジャンルの事で、あまりに音数が多いため
楽譜が黒く見えてしまうという事からBlack MIDIと呼ぶらしい。

確かにドバーっとした音の情報を聴かせるという点では
バンドのスタイルにあったバンド名なのかもしれんが、
電子音楽というわけではないのではやや誤解を生みそうな名前ではある。


それにしてもヘンテコすぎて捉えづらい新星バンドな彼らは
ルーツとして参照している音楽がなんなのかも良く分からないけど
まさにそのまんまとも言える曲『Talking Heads』なんて曲もある。



Talking Headsと言えば1970年代末から1980年中頃まで活躍した
アメリカのニュー・ウェイブバンドである。

そんなTalking Headsを意識して作ったのかと思わせる
まさに名前そのまんまの楽曲がこれである。
言われてみれば音の感触はTalking Headsっぽくて俺も結構好きだ。

ただこれまで聴いてきた他の曲のような緻密さや強靭さよりも
ジャズのように勢い重視で聴かせるような楽曲なので毛色が異なる。
…むむむ、こんな楽曲もやってのけるのか。全く、器用なバンドだな。


といった具合にジャンルレスな音楽性で
今年の洋楽界隈を盛り上がらせているバンド。
バンドという形態でその雑食性と多様な表現力を武器に
ここまでの境地に達しているとはその潜在能力は計り知れない。

…と、彼らの凄さを音楽雑誌っぽく言ってみたものの…
これは俺の個人的予想なんですが、、、


なんとなくこのBlack Midiは長続きしない気がするんですよね…。
下手したらこの1作で解散してしまうような予感さえしている。

というのも、バンドというより「プロジェクト」感を
今回のアルバムで感じたんですよ。別にメンバーの仲が悪そうとか
そういうんじゃなくて、確かに実力があるメンバーだからこそ
このバンドで飽き足らずに別の事をやり出すんじゃないかと。

だからこのアルバムはこの「Black Midi」としての音楽をやるために
このメンバーで集まってやりました!ってプロジェクトに思えるの。
で、プロジェクトが一段落したら解散、次は別の事をやるみたいな。

いや、それは別に悪い事ではないし
働き方改革が進む令和の時代にはむしろフィットした考え方なんだけど、
「バンドの今後が楽しみ!」て素直に言えない感じなんだよなぁ…。


音楽業界が彼らのような新星に期待したいのは分かるが、
個人的にはちょっとそんな”予感”もしたBlack Midiのデビューアルバム。

これも今年の注目作として年末辺りにまた語られるんだろうね。
ロックの細かいジャンルまで潜ってみたい方、
是非このアルバムに挑戦してみて下さい。

そして一緒に一般人に伝わらない日々を過ごそう。


【採点】
・期待の超若手バンド 40点
・マスロック再来?? 20点
・伝わらないロック  20点
・長続きしない予感  -3点
77点