脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Song】フジファブリック / 若者のすべて [2007]

5分間に詰められた「すべて」。

 

志村さん…何故逝ってしまわれたのか。

2000年代邦ロックバンドの中でも代表格と言えるだろう。
2009年にボーカルの志村が突然逝去(死因は未発表)、
それ以後は残りのメンバで活動をしているフジファブリックだ。

この『若者のすべて』は志村が在籍時の
フジファブリックの代表曲であり、
まさに涙なしには聴けない素晴らしい夏の名曲である。

ちなみにもう一つ上の世代だと
「若者のすべて?ミスチルが主題歌歌ってたドラマ?」みたいな
ジェネレーションギャップを感じさせる認識のようだ。


出た当初は歌詞の意味が良く飲み込めずにもやもやしていたけれど、
ベスト出たときに聴きなおしてハッとして感動した曲でもある。
その数年で俺の国語力が上がったのか大人になったから分かったのか。

まぁ結局歌詞の公式な解釈なんてないし、
今は作った志村氏もいなくなったので想像の域を出ないのだけれども…。
それでもこの曲、特に歌詞には素敵で美しい輝きがあります。

歌の内容はザックリ言ってしまえば、
「夏も終わりに近づいた頃の花火大会の切ないラブストーリー」
という女子がキャッキャしそうなベタな題材でして
普段の俺ならウェッウェと吐いてしまうところだけどね。

でもこれはそんな「すいーとなおはなし」では無い、
葛藤する若者の心を見事に表現したまさに「若者のすべて」なのだ。


つーわけで長い長い歌詞解釈のお時間にお付き合い戴く。


一番の歌詞から

「夕方5時のチャイムが 今日はなんだか胸に響いて」

というわけで、今日はこれから花火大会!てわけだ。
そして

「最後の花火に今年もなったな」
「ないかな ないよな きっとね いないよな
 会ったら言えるかな まぶた閉じて浮かべているよ」


ココで分かるのは主人公には好きなコがいて、
花火大会で会えたらどんな事話そうかと妄想してるという場面だ。
チャイムがなるという事はまだ学校に通ってる身分なんだろう。

しかし二番になると

「世界の約束を知って それなりになって また戻って
 街灯の明かりがまた 一つ点いて 帰りを急ぐよ」

といきなり場面が変わる。

え?結局一番で会ったの会わなかったの?みたいな
疑問が浮かび上がってくる。

ここの意味は多分人によって大分意見が分かれると思うけど、
俺は「社会に出て大人になってから再び花火大会に来た」
という意味に捉えている。

「世界の約束を知って」とか「それなりに」とかのワードが
大人社会に入っていった主人公を想起させているよね。
街灯の明かりが点灯し始めて帰りを急ぐのは
花火大会に向かっている途中と思われるのだ。

そして

「途切れた夢の続きをとり戻したくなって」

と続く。

ここで、一番のときはやはり会えなかったと判明する。
それでもやはり花火大会に行ってみようと思うんだよね。
大人になっても若さを失ってない、むしろ失いたくない気持ち。

でも

「最後の花火に今年もなったな 何年経っても思い出してしまうな」

と、結局一番と同様のサビの歌詞だ。

「ないかな ないよな きっとね いないよな」

そりゃあ会えないよね…。


そして間奏に入りラストサビ前

「すりむいたまま 僕はそっと歩き出して」


このすりむいたままというのは急いだせいで転んで痛いのか、
はたまた心の傷が残ったままという事の比喩なのか。
むしろその両方の気持ちを感じながらその場を離れる。

そしてドラマティックなギターが鳴り響いた後、
ラストのサビである。

「ないかな ないよな なんてね 思ってた」


…「思ってた」?
「ないと思ってた」と来ましたよ…!


さらに続く歌詞

「まいったな まいったな 話すことに迷うな」



会えてるーーーーーー!!


このラストサビでのどんでん返しが熱い!熱いよ!
江頭…じゃなかった目頭も熱いよ!
好きだった相手も何年経っても花火大会に来ていたのだ。
このピークを感じるために一番と二番を越えてくるわけだ。

そしてホントにホントの最後の歌詞

「最後の最後の花火が終わったら
 僕らは変わるかな 同じ空を見上げているよ」


「最後の最後の花火」である。
大事な事なので2回言いましたってヤツだ。
もうコレで若いときの思い出に区切りをつけるというのだ。

そしてその花火が終わると

「僕らは変わるかな」

これがまた良い。これからどう変わるのか。
この余韻が聴き手の想像力を掻き立てる。

俺ここは決して想いが遂げられたハッピーエンドだとは思わない。
それは別に「くそっリア充とか許せん!」と否定したいわけじゃなく、
この曲の雰囲気がそう思わせてるところがあるから。

結局歌詞の中には恋とか愛とかいうワードが一回も出て来ない。
ただただ切ない若かりし頃の思い出という視点が貫かれている。

最後の花火で会った二人は数年前の気持ちに気持ちよくサヨナラし、
これからは大人としてそれぞれの道を歩んでいこうという、
そういう決意の下で今だけは「同じ空を見上げているよ」という
キレイな終わり方がこの曲にはしっくりくると思うのだ。

そんな若い頃の切なさと、
未来に向かって歩き出さなくてはならないという葛藤。
5分程度の曲で終わるストーリーだけど、
これが若者の「すべて」なのである。

ここに描かれている葛藤こそが若者のすべてと言い切るそのセンス。
そのセンスがたまらなく好きだった。
志村さんはこんなに良い曲を遺していったのだ。

今のフジファブリックも全然悪くはないんだけど、
やはり亡くなった方は美化されてしまう宿命なのかもしれない。

最後にもう一度、
志村さん…何故逝ってしまわれたのか。


【採点】
・志村さん有難う   30点
・涙なしには聴けない 30点
・まさに若者のすべて 30点
・俺は変われてない… -3点
87点

SINGLES 2004-2009 SINGLES 2004-2009
フジファブリック

曲名リスト
1. 桜の季節
2. 陽炎
3. 赤黄色の金木犀
4. 銀河
5. 虹
6. 茜色の夕日
7. 蒼い鳥
8. Surfer King
9. パッション・フルーツ
10. 若者のすべて
11. Sugar!!

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