脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

くるり、SUPERCAR、ナンバーガール。97年世代をもう一度。


20年を超えてゆけ。

くるりの20回転
くるりの20回転(初回限定盤)<CD3枚組+デジパック仕様+豪華・特典ブックレット+スリーブケース>

 
くるりスーパーカーナンバーガール
この3組の名前に反応する人。

…きっと貴方は、Nintendo64ゴールデンアイをやっていた方ですね?
これがメンタリズムです。さぁ、今度一緒に呑みに行きましょう。

さて、この3組。とても面白いバンドだと思います。
何が面白いかって、この3組を知ってるか知らないかの質問によって
なんというかこう音楽好きの中で一つの区画整理に使えちゃう気がして。

俺と同世代の人、分かります?分かりますよね?
さてはあなた2000年代初頭に「マイナーな音楽知ってる俺カッケー」して
周りから煙たがられていた人種ですね?知ってます。分かります。
これがメンタリズムです。さぁ、今度一緒に教会へ懺悔しに行きましょう。


そんな絶妙なポジションにいるこの3組のバンドだが、
彼らはその売り上げとは無関係に音楽シーンにおいて評価される事が多く、
実際に後進のアーティスト達の多くに衝撃と影響を与えてきたバンドだ。

故にオリコンチャートには流されないサブカル層から人気を集め、
「流行歌を追っているライトな音楽好きには知られていないけど、
 ある程度色々聴いてきた音楽好きにはほぼほぼ知られている」
という、普通の人からは一体どういう事なのか
イマイチ理解が得にくい立ち位置のバンドとして君臨している。


この3組は皆デビュー時期が近いことから、
97年組」という風に扱われる事も多い。
(ちなみにこの3組に中村一義を加えて語られる事もある)
そう、今から20年程前に彼らはデビューし
今日に至るまで地味に華々しい功績を残してきたのだ。

「売れてもいないのに影響力があったなんて信じられない」
という方もいると思うが、今現役で活躍するアーティストの口からも
彼らの名前は間違いなく飛び出してくる名前であり、
今も尚その存在感は色褪せていない。
これが一時的な流行で終わったバンドとは違うところだ。

これは当時の音楽シーンを肌感覚で味わっていないと
本当に説明が難しいところでもあるんだけど、
今はほら、アレがあるじゃないですか。
Youtubeってヤツが。Youtube知ってる?超便利よ?

だから俺がこうやって今書いてる、軸がぶれまくりで
ふらふらとママチャリを低速運転しているおばはんみたいな文を読むより、
Youtubeで一発ドンと聴いた方が確実に早い。効率的。


というわけで今日はそんな97年組を振り返ってみたいと思う企画です。
コレ聴いて音楽通ぶりだしたらもう俺らの仲間だ。
今度一緒にゴールデンアイしよう。モーションセンサー爆弾合戦しよう。

くるり


まずはくるり。この3組の中では一番有名じゃないかと思う。
というかバリバリ現役活動中だ。今でも結構売れているし。

メインボーカルの岸田とベースの佐藤以外のメンバーが
コロコロ入れ替わりながら続いているという辺りには、
ちょっとブラック企業的雰囲気も感じるんだけど多分そんな事は無い。
岸田さんきっとイイ人だよ。ツイッターとかでの言葉がキツイだけで。

音楽性については正直「不定形」である。
時代と共に変幻自在に音を操り、鳴らす。
その飽くなき探求心こそがくるりらしさなのである。

だがそのめまぐるしい変化についていけず
メンバーが次々と辞めていくのかもしれない。
でもきっと今後も彼らは今までと同じように音楽の旅を続けていきそうだ。


ワンダーフォーゲル

くるりは楽曲が多いんだけど、俺の青春時代からチョイスしたい。

個人的にくるりの曲は打ち込みを駆使したデジロック系の曲が好み。
そんな中でもこのワンダーフォーゲルは良く聴いた。

ハローもグッバイもサンキューも言わなくなって

軽快なリズムとメロディーに乗って運ばれてくるこのフレーズが
なんとも言えない寂しさと決意のような力強さを感じる。

あとイントロがオレンジレンジの『以心電信』と似ており
(時系列的には以心電信が後)テレビのBGM等で以心電信が流れた時は
「おおっ?まさかくるりワンダーフォーゲル!?」と一瞬思うけど、
落ち着いて聴くとやっぱり以心電信だったという事がしょっちゅうある。


ワールズエンド・スーパーノヴァ

当時俺のケータイの着信音にしていた記憶がある。
初期くるりの中でも高い人気を誇っていた曲だ。

心臓の鼓動を感じさせる打ち込みと
じわじわと広がりを見せる音楽が見事にシンクロしていく。
セカイ系」のような自分と世界の繋がりを意識させるような音楽だ。

静かに入ってちょっとだけ盛り上がる絶妙なサビがまた良い。
パッと世界が開けるというより少し垣間見えたような感覚。
息継ぎをするように意識の渦から出たりまた潜ったり。
自己と現実の境界をこんな風に感じさせる曲にはなかなか出合えない。

ベストオブくるり/ TOWER OF MUSIC LOVER
くるり
B000G02WPK


SUPERCAR


お次はスーパーカー

検索する際に「スーパーカー」だけだと車が出てきちゃうので、
スーパーカー バンド」で検索しないとうまく出て来ない。
名前でちょっと機会損失しているような、
でも車好きの目に留まる可能性もありそうなそんなバンド。
2005年に解散した。

初期はノイジーなギターサウンドが中心で、
ジャンルで言うとシューゲイザーみたいなバンドだったんだけど、
徐々にデジタルサウンドを取り入れるようになり
後期にはエレクトロニカバンドへと転向した。

男女ツインボーカルを武器に倦怠感と浮遊感のある不思議な音楽を奏でる。
不思議とはいってもそれはとても居心地の良い曲ばかりであり、
音楽性の変化はあったもののキャリアを通じてそこは一貫していた。

ちなみに女ボーカルのフルカワミキの声は
多くのロックファンを洗脳し惚れさせた。
スーパーカーが好きだった男は、
最低一回はフルカワミキにガチ惚れした時期がある。

ボーカルだったナカコーとフルカワは後年LAMAというバンドを結成。
またギターのいしわたり順治は敏腕プロデューサーとしてその手腕を発揮。
チャットモンチー、9mm、ニコタッチ等の売れっ子を手掛けた。


Lucky

スーパーカー初期の曲と言えばコレ。
男女の感情のすれ違いをこんなにも鮮やかに表現してくれるのかという
切なさで心臓がギュウギュウに締め付けられそうになるAED必携ソング。

前半は女性の心情、後半は男性の心情、
それぞれを女性ボーカルと男性ボーカルが交代で歌い上げる。
どちらも淡々と歌っている辺りがより一層切なさを爆発させる。

さらに間奏のええ感じのギターがたまらない。
前半と後半の間、男女の気持ちの隔たりをこんなにいい感じに奏でますか。
このLuckyというタイトル。後悔が詰まったLuckyなのだ。やられた。
あとMVには何故かデーブスペクターが出演している


YUMEGIWA LAST BOY

スーパーカーで最も有名な曲はおそらくコレじゃないかな。
後期スーパーカーを代表する一曲、ユメギワラストボーイ。
映画ピンポンの主題歌に起用されたフューチャー・ポップだ。

デジタルサウンドの螺旋階段のような音楽に当時はかなりの衝撃を覚えた。
暗い深淵であてもなく彷徨っている気分。テンションが行き場を無くしす。
90年代のガツンとくるテクノとはまた違った、
徐々に体に浸透していくようなアプローチのエレクトロニカだ。

また「YUMEGIWA」という言葉がこの曲をズバリ言い現わしている。
夢と現実の狭間に取り残された少年という曲名。
曲を聴けば妙に納得してしまうタイトルだ。
ちなみに窓際ラストボーイだとリストラ寸前の社員になる。ドキッ…。

A
スーパーカー
B0007OE4P6


ナンバーガール


最後はナンバーガール。2002年解散
この3組の中ではおそらく一番売り上げが低いバンドだろう。
オリコントップ10に入った事すらないんじゃないかな。

だがその影響力は計り知れない。泣く子も黙るナンバーガール
当時のバンドマンにその名を尋ねれば「あれはスゲぇよ」と皆が言う。

何も知らないままにバンド名からガールズバンドを想像して聴くと、
まずその叫びまくりの男ボーカルに度肝を抜かれる。
そしてそのボーカルをかき消さんばかりに鳴りまくる
楽器隊の轟音に鼓膜がやられる。

次に「なんて激しいバンドなんだ!どんな人たちなんだろう!」と
期待に胸を膨らませてメンバーの画像を見たら
ボーカルが役場にいそうな眼鏡のおっさんである事に網膜がやられる。

そんな三段構えで急所があるのがナンバーガールの魅力である。
海外のピクシーズソニックユースに似ていると語られる事もあるが、
個人的にはそこまで似ているとは思えない。
ナンバーガールナンバーガールだ。それ以外の何物でもない。

その強烈な個性からロッキングオンやスペースシャワー等の
音楽メディアからも注目を浴び、何度も扱われてきた。
売上に対する存在感の大きさは今思えば異常だったとも言える。

現在は各メンバーそれぞれ音楽活動を行っている。


透明少女

ナンバーガールと言えばこの曲は外せない。
多くのロックボーイ、ロックガールを教育した曲であり、
アジカンベボベ星野源もこの曲をカバーしている。

このギターイントロが始まった瞬間に体中の血液が騒ぎ出す人間は多い。
だってそういう風に教育を受けているから仕方ないのだ。
それくらいに2000年代以降のバンドに影響を与えた一曲だと思う。

その曲の暑苦しさから全然透明感は感じそうにもないのに、
慣れてくると透明感も感じるし夏も感じるようになる。
そしてあの子の事を何でも見透かしてしまえそうな気分になる。

そのまま聴いても良い曲なんだけど、
ライブ盤でボーカル向井のMCを聴いてからこの曲に入るのも良いよ。
あとカラオケで知らない人の前で歌うと大概空気が変になる。実績あり。


鉄風 鋭くなって

大好き。曲名もさる事ながら曲全体から感じる硬質感が圧倒的。
俺はナンバガの最後の辺りの曲はそこまで好きではないんだけど、
(同じ理由で向井が後に組んだZAZEN BOYSもあんまり好きではない)
その一歩手前のこの曲は最大瞬間風速が出ていたんじゃないかと思う。

発狂した飼い猫を川へ捨てに行って
念仏唱えてさようなら 中古の戦車を拾って帰る

 
この導入部だけでご飯3杯はイケる。妄想が捗って止まらない。
謎めいた世界観を想像させるこの言葉のセンスに
和のテイストを散りばめた重厚なロックサウンド。

時代設定も何もかもが混沌としている独特な内容だが、
只ならぬ何かがそこにありそうなパワーを感じる曲。
これぞ向井ワールドだ。本当に奇跡的な融合比率で成立している曲である。

OMOIDE IN MY HEAD 1 ~BEST&B-SIDES~
ナンバーガール NUMBER GIRL
B0007KWPDI

おわりに

 さてさて、くるりスーパーカーナンバーガール
3組を懐かしんでみたわけだがいかがだっただろうか。
フルカワミキちゃん萌えー」だっただろうか。それでもいいぞ。
それなら一緒にナンバガの田淵ひさ子のギターっぷりにも萌えて欲しい。

これらのバンドがいてくれたという事実、
それだけで2000年代のバンドシーンが支えられたと言っても
決して過言ではない3組だったわけだが、逆にこの3組の様な
ポジションのバンドって彼ら以降はあまりいないような気がする。

バンプアジカンチャットモンチーなんかは
間違いなく以降のバンドに影響を与えたけど、
彼らは十分に売れてるしアンダーグラウンド感は正直感じない。
残響レコード系はそれに近いのかもしれないけど
やっぱり上記3組の位置とは違う気がする。

まだCDの売上こそがバンド生命に直結していた
2000年代初頭の音楽シーンにおいて、
そこまで売れていなかったのにも関わらず人気を博し
20年近く経った今尚若者にも支持され続けている97年組。

でも2000年代以降に音楽の趣味が細分化されていった中で、
この3組はこういうスタイルもアリだよという
新たな道筋を切り開いた存在という事になるのかも。


音楽的影響や評価が固まり始めるにはある程度の醸成期間が必要だ。
つまり今地道に活動しているバンドの中にも、
後年これらの3組のように語られるバンドがいるのかもしれない。

何がきっかけでどこにどう繋がっていくのかが予想できないのが
この手の話の面白いところだ。後にならないと見えてこない部分は大きい。

だから今後もきっと、
そんな新時代の担い手であるようなアーティストは生まれてくるハズだ。
そんなワクワクを楽しむために今があるんだろう。

と、この3組がいたあの頃の音楽シーンを振り返りながら考えた。
当時だってこんな事を振り返る日が来るとは思っていなかったわけだしね。