脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】Radiohead / The Best Of [2008]


Worst of Best

Best of Best of
Radiohead

曲名リスト
1. Just
2. Paranoid Android
3. Karma Police
4. Creep
5. No Surprises
6. High And Dry
7. My Iron Lung
8. There, There
9. Lucky
10. Fake Plastic Trees
11. Idioteque
12. 2 + 2 = 5
13. The Bends
14. Pyramid Song
15. Street Spirit (Fade Out)
16. Everything In Its Right Place

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ベストアルバムはオリジナルアルバムと同列には語る事が出来ない。

オリジナルアルバムというのは、
その時のそのアーティストが発揮した言わば瞬間的な感情の発露が
面白い作品となるわけで、とてもコンテンポラリーな作品と言える。

代わってベストアルバムというのは長い年月を経た中での
アーティストの変遷がアーカイブ化されているという点が特徴であり、
作品というよりはどちらかというと「資料」といった意味合いが強い。

よって作品的価値を論じる音楽評論等では
ベスト盤というのは避けられがちな傾向にある。
あとベスト盤は商業的匂いがどうしても強くなるしね。
嫌われる理由は分らんでもない。俺もどちらかと言えばオリアル派だ。


しかし、ここジャパンではベスト盤というのは歓迎される風潮がある。
それはベスト盤が単なる資料という位置付けだけではなく、
お手軽!お買い得!超便利アイテム!のような価値を持っているからだ。


なぜ日本人がそこまでベスト盤に価値を見出しているのか理由は簡単で、
日本は「シングル文化」が強いからである。

このブログでも何度か触れているが、
海外がアルバムありきで制作を進めるというスタイルなのに対して、
日本はシングルを定期的に発売して溜まったらアルバムを出すという
シングルを中心としたサイクルで音楽シーンが構成されているからだ。

そういうわけで日本におけるベスト盤の認識は
「そのアーティストのヒットシングルをおさらいできる便利な物」
という側面が強くなりがち。故にベスト盤で満足感が得られやすい。

つまり邦楽はベスト盤を聴けばもうそのアーティストの事を
ある程度攻略した気分になれるため非常にベスト盤の需要が高いのね。
まぁYoutubeサブスクリプションサービス等で昨今では
ベスト盤の価値自体もかなり様変わりしてきているようだけど…。

まぁいずれにしても日本人にとっての「ベスト盤」は資料価値以上に
「そのアーティストをおさらいして分かった気になれる」という
イメージが強く、まずベスト盤を求める傾向が強いと言えるわけだ。


というわけで今回のテーマはこれ、レディオヘッドのベスト盤。
ハッキリ言わせてもらいます。これはマジでもうクソベストである。
企画者出て来い。俺の使用後の靴下を口に詰め込んでやるから。

日本と違って海外のアーティストはアルバムが中心の場合が多いんで、
ベスト盤という編集が基本的に行いにくいのである。

しかし大人の事情とか色々あるんだろう、
ベスト盤が出る事も当然ながらある。
その度に賛否両論が巻き起こったりもするけど、
まぁなんだかんだでベスト盤だからそこまで酷い内容というのは少ない。


しかしだ、このレディへのベストの酷さったらない。

レディへを聴いてきた方なら言わずもがなだと思うが、
レディへはアルバム毎に作風が結構変わるので、
まず単曲で切りだして束ねようという試み自体にそもそも無理があるのよ。

数あるサッカーチームから優秀なメンバを集めるという話じゃなく、
サッカーとラグビーと野球のチームからメンバを集めるようなもんだ。
集めたところでなんの統一感も無い。異種格闘技戦しかできない。

それにそのベスト盤のラインナップも曲が発表順に並んでいて
歴史を年代順に振り返るような作りになっているわけでもなく、
てんでばらばらなのも意味不明。あの大名盤『KID A』の幕開けだった
『Everything In Its Right Place』がラストとかもう感覚がおかしくなる。
並び順にコンセプトを感じる事が出来ない点もヤバいのである。


そして何が大きな問題かって、
日本でこのベスト盤を聴いた人が「レディへってつまんね」
思ってしまう事だ。前述したように、日本人はベスト盤で
アーティストに対する評価を下しやすいのだ。

レディオヘッドと言えば
音楽好きならば誰もがその名を耳にした事がある程に有名なバンド。
大げさでもなんでもなく、2000年代以降の世界の音楽シーンに対して
多大な影響を与えたモンスターバンドであり、今も現役バリバリである。

だが「そんな凄いバンドならいっちょ聴いてみっか」と思った人が
このベストアルバムに手を出す事を想像すると俺はやりきれなくなるの。
こんなクソベストでレディへが評価されてしまう事を思うと悲しいの。

確かに選曲はそれまでのレディへのアルバム毎の人気曲である。
しかしどの曲もそのアルバムの空気の中で聴いてこそ
その真価を発揮できる曲だ。そんな曲をこんな異空間に集められて
まとめて聴かされたところで魅力は激減してしまっているわけよ。


だからここで俺はハッキリ言わせて戴く。
このベスト盤は聴くな。これ聴いてレディへの評価を下すな。
レディへを聴くならとりあえずは
『The Bends』『OK Computer』『KID A』の3作をまず聴こう。

ベスト盤という甘い罠。
しかしそれはとんでもない落とし穴だったりもするという事ですね。
最近は音楽を取り巻く環境も変わっているし便利になっている。
定額聴き放題サービスもあるわけだし、
そうなるとむしろオリジナルアルバムも手軽に聴けると言える。

だから皆、ベスト盤で評価せずにオリジナルアルバムも聴いてみようぜ!


【採点】
・ワーストオブベスト  -5点
・レディへ離れを推進 -10点
・ジャケットは結構好き 20点
・結局買った俺     50点
55点