脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】CORNELIUS / Mellow Waves [2017]


想定内は想定外。

Mellow Waves Mellow Waves
CORNELIUS

曲名リスト
1. あなたがいるなら
2. いつか / どこか
3. 未来の人へ
4. Surfing on Mind Wave pt 2
5. 夢の中で
6. Helix / Spiral
7. Mellow Yellow Feel
8. The Spell of a Vanishing Loveliness
9. The Rain Song
10. Crepuscule

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今年はオザケンが復活し、コーネリアスが11年振りの新譜を出し、
今をときめく40代の皆様にはなかなかに嬉しい年なんじゃなかろうか。
この勢いでフリッパーズ・ギター再始動とかなれば話題騒然なんだけど、
今のところそこまでの様子は無さそう。

というわけでそんなコーネリアスの11年振りの新アルバムね。
長かったようで早かったような11年。つまりはまぁ普通に11年。
ここ数年大御所の復活が多いけれど、ついにコーネリアスも復活だ。

でもEテレの『デザインあ』をしばしば観ている俺にとっては、
同番組の音楽を担当しているコーネリアスからは
そこまで遠ざかっていたという程の感覚はあまり無いんだけれど。
まぁそれでも新作となるとやはりワクワク感が違うわけよ。


今をときめく20代の方からすれば
「え?コーネリアスユーフェミアのお姉さん?
くらいの認識かもしれないので、すっげーザックリ説明すると
日本の音楽業界でやたら高評価な人」である。以上。
ちなみにユニット名みたいだけど一人だからね。バカリズム的な。

コーネリアスは海外でも評価が高い日本人の一人であり、
彼が取り組んできた音楽的アプローチは間違いなく邦楽の財産だ。
彼のファンには昔からのコアな音楽ファンが多いと思う。


そんな人のニューアルバムなわけだから注目されないわけがないし、
コーネリアスのアルバムを全部買ってきた俺も
買わないわけにはいかない。だから今回もちゃんと予約して買った。
コアな音楽ファン気取って買った。コーネリアス買うヤツは大体そう。

でも、正直に言わせてくれ。

皆さん。このアルバム、本当に満足でしたか?


あの天下のコーネリアス様だからって盲目的に甘い評価してません?
俺はね、ルルーシュ派だからね、ヒール役だからね、言いますけど、
ぶっちゃけ満足してませんよ。小山田さん、俺は納得しかねますよコレ。


正直、期待値を高め過ぎていたんだとは思うよ、無意識的にね。
コーネリアスならきっと時代の先を見せてくれる。
新しい音楽を提示してくれる。未来から来た音楽マン。
そんなドラえもんみたいな感覚をコーネリアスに求めていた。

でもコーネリアスは今までずっとそうだったんだ。
常に音楽が次に向かう方向性を指し示してくれる旗手。
不定形で変化に富む存在。洋楽でいうとレディヘみたいな存在。


だが今作はどうか。
11年前の『Sensuous』からの変化が殆ど感じられない内容。
まるで時代が前に進んでいないかのよう。そんな作風だった。

先行公開のMVから少しそんな気はしていたんだけど、
それでもアルバムにはもっと何かビックリする仕掛けが
あるに違いないと思っていたら…特に無かったんだよ。

そりゃ俺の勝手な願望だろと言えばそれまでだけどさ。
でも前作から11年も経ってるんだぜ?そりゃ期待しちゃうさ。
彼には想定内より想定外を求めちゃう。分かるよね、この気持ち。

確かに前々作の『Point』から前作の『Sensuous』のときも、
方向性的には同じような内容で続編みたいな印象はあった。
でも、それでも『Sensuous』には「おっ」と思うような
気付きもあったし発見もあったんだ。急所のような聴きどころが。
そしてそれこそがコーネリアスってやっぱ凄いと俺が思う部分だった。


俺のセンスが鈍ってきたんだろうか…。
今回特徴的だと思ったのはアコースティックな音が強かった事と、
歌を結構しっかり歌っている事。でもこれらの変化は今までの
コーネリアスが辿ってきた変化のルートを考えると違和感が強い。

彼の音楽はいつもテクノロジーの発展と共にあったと思うわけよ。
技術の最先端を走り、それを音楽に取り入れては実験してきた。
だからこそコーネリアスはリスナーに感動を与えてくれていたし、
彼についていけば未来が見えそう、そんな気がしていたのだ。

そう考えたときに、今回のアルバムは物足りなかった。
あれ?未来が見えない…?時代が止まってしまった…?
小山田さん、未来が分からないよ!俺には見えないよ!


でも穿った見方をすれば、
これこそが彼が描いた「これからの音楽」なのかもしれない。
テクノロジーは行きつく先まで辿りつき、音楽は原点へと回帰していく。
あの小山田圭吾が11年経っても大きな変化を見せなかったのだ。
そういう風に捉える事もできるんじゃないか。

そして彼のファンは音楽的な感動はなくても、
コーネリアスが新作を出したというその事実だけで感動している。
そう、11年越しに彼の新作を聴けたという事に喜びがあるのだ。
そういう「体験」こそがこれからの音楽の価値という事なのかも。


だがなんか悔しいんだ…。
確かにこのアルバムの音はコーネリアスの音だったよ。
それはすっごい分かる。『デザインあ』で聴いてたような音楽。
「ああ、コーネリアスっぽいなぁ」と思える音楽だ。

でも彼はずっと同じところに留まるようなアーティストではなかった。
だからこそ期待通りすぎる今回のアルバムはある意味で彼らしくない
なんだかもどかしい話だが、やっぱりコーネリアスってそんな存在なの。
みんなはいつものコーネリアスで満足かもしれないけど、俺は不満なの!


そしてジャケットもチープ。紙ジャケットも歌詞カードもチープ。
いや、紙ジャケットなのは『POINT』以降そうなんだけど、
今回のはなんかもう質感が安っぽい感じ。高校の文化祭みたい。

まぁ手作り感があると言えば聞こえはいいし、
洋楽的と言えばそうなんだけど、でも値段はしっかり邦楽的なの。
お得感が無い。3000円は安くないんだぞ。特に最近、冠婚葬祭続きで。


とまぁコーネリアスに変な期待を持ち過ぎていた分、
音楽の未来が塞がっていくような気分を勝手に味わったアルバムだった。
本当はそんな事はないと思いたいし、
勝手にコーネリアスに大きな期待を寄せていた俺が悪いわけだけど…。

ただ、個人的に今年の注目作だっただけに、喪失感がなかなか大きい。
そして世間的にはなんだかんだ言って結局、
このアルバムは今年の高評価アルバムになるんだろう。


うーん…でも俺はやっぱ寂しいよ。
願わくばコーネリアスには、ビックリするくらいのスピードで
次のアルバムを出して欲しいな。あっと驚く新作が聴きたいな。

じゃないと俺もオザケン派になっちゃうよ?


【採点】
・11年振りの新作      11点
コーネリアスらしい    25点
コーネリアスらしくない  25点
コードギアスの新作に期待  5点
66点