脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

育休を取った俺はファーストペンギンかつエンドペンギンになるのか。


男も黙って育児休業
NHK 「おとうさんといっしょ」うたのアルバム ガッタン&ゴットン

 
お題でブログを書くなどという行為は、
馴れ合いを拒絶する事を是とするロケンローな俺からすれば
ある意味では自分への背信行為とも言える所業だ。

しかし大賞がAmazon10万円ギフト券ともなれば話は別。

「わたしの転機」をテーマに記事を書くというブログコンテスト。
これまでも何回か記事を拝読した事がある「りっすん」さんの企画。
ホントりっすんさんはいいWEBマガジンだと思います。さすがです。

賞金が貰えるなら、もう俺はロケンロー魂を投げうってでも書く。
株価は回復しているというのに我が家の持ち株が軒並み不調という、
超個人的な事情を鑑みても乗るしかないこのビッグウェーブに!


…というこれでまでのくだりで既に入賞は絶望的な気もするけど、
どこまで需要があるか分からないこの俺の「わたしの転機」、
折角なので書いてみたいと思います。

結論から言っちゃうけど、俺の転機は3年前の「育休」
この話はそのうち書こうとは思っていたのでここでやっちゃおう。

30年以上続くまぁまぁの規模の会社で男性社員初の育児休業
約半年ほど取得したんだけど、その時に体験した話や感じた事を書こう。

男の育児休業がギャグとなる世界。


俺の会社はいわゆる地方の中規模の企業なんだけど、
それなりの歴史があるせいか旧態依然とした雰囲気が漂っている。

3年前、娘が産まれたときに俺は半年間の育休を申請した。
その時の俺は男が育休を取る事をそこまで大袈裟に考えておらず
「別に取りたきゃ取ればいいじゃん」くらいのノリだった。

いや、そのスタンス自体は今でも変わっていないし
男の育休取得が話題になる事がむしろ変な話だと思いませんか?
つーかこのネタでこんな記事を書けるのが不思議な話ですよねぇ~。


でもその時の俺の姿は
人によっては時代に切り込んでいく幕末志士のように見えたようで、
でも人によっては空気が読めないポンコツ社員にも見えたようだ。

まず驚いたのが、
「え?男って育休取っていいの?」という反応が多数あった事だ。
これマジで。今はまだ違うかもしれないけど3年前はこんな感じ。

ウチの会社の幹部ですら
「女が育休とってるときに男が取っていいんだっけ?」くらいの
認識だった。いちからか? いちからせつめいしないとだめか?

あ、ちなみに嫁は1年2か月くらい育休取ったので
我が家は暫くダブル育休体制だった。


とにかくねぇ、俺はこんなに騒がれるとは思ってなかったんだよ!

つーかウチの会社でもさすがに過去に数人ぐらいは
男で育児休業取ったヤツいるだろとか思ってたら
どうやら俺が初めてだったらしく愕然。めちょっく。

それでまぁなんかもう色々言われるんですわ。
またその話ですかもう何度も質問されたよ時間の無駄だし
もういっそのこと会見開いていいですか?みたいな。


そしてですね、ギャグみたいなコメントがどしどし寄せられるんですね。
こんなに反応があるなんて、日本ってなんて美しい国なんでしょう☆

というわけで以下、俺の周囲の様々な発言をお楽しみください。

上司①「育休から戻ってきたらお前の仕事は無くなっていると思え」


うわーまじっすかーそんときはじゃあヤメサセテモライマス…
つーかそんときは解雇して貰っても構わないんですけどねー。
で、結局俺の仕事は途絶えることなく今に至るんですけどねー。

上司②「俺たちの払った血税で…!」


俺が育児休業給付金を貰っているという話をした後のコメント。
いやまぁ冗談だったとしてもそういう空気が日本を少子化にするよね。
ちなみに育児休業給付金は夫婦同時に戴けます。

同僚①「よく男の育休の申請なんか通ったよね」


マジか育休って労働者の正当な権利かと思ってたわ。
もしかしてそういう申請を跳ね返すチート技持ってる人がいるのか。
いやーホント通って良かったっす!運が良かったんすね!

同僚②「なんで育休取ったの?」


いやお前それ女性に対しても同じ事言えんの?
女性だって産後暫くしたら子ども預けて働いてる人もいるんだけど、
育児休業中の女性にも同じ事いちいち訊いてんの?
こういう「男性の育休なんて変だ」という意識が前提の言動が
男性の育児休業取得率を下げるんだよ?


とにかく爆笑必死の面白エピソードに事欠かなくて、
結構楽しませて貰ってたんですよね。

ほら、お笑いって一般感覚との間の認識のズレとか裏切りによって
生み出されるって言うじゃないですか。
だから男性の育休って笑いが量産されるコンテンツなんですよ。ウケる!


とまぁ会社では笑いが止まらない俺だったんですけどね、
でもそうじゃない友人とか近所の人とかは凄い賞賛してくれまして、
嫁の家族からも「凄い!」と言われてとても嬉しかったんだよね。

まぁそれと会社との反応のギャップでまた笑いが生まれるんですけど、
とにかく「よくやったね」とか「君みたいな人が増えるといいね」とか
普段会社で言われることがない褒めフレーズを全身に浴びてしまって
ちょっと発疹とか出てしまって皮膚科行ったりもしたんだけど。

会社以外で学ぶ事の方が圧倒的に多い。


さて、この育休取得は俺に色々な「気付き」を与えてくれたんですね。

上記のような周囲の反応があったという事も大きな気付きだったし、
あと会社から離れる事で得た気付きというのがとても大きかった。

休業期間があると良く言われるのが「キャリアに傷がつく」とか
「昇給が遅れる」とか「経験値が上がらない」みたいな話だと思うけど、
俺の実感としては全くそんな事は無かった。
いやむしろ会社離れた方が成長できるんじゃねくらいの感覚だった。

あ、ただ昇給は遅れた。
それはまぁ休業中に会社への貢献が無かったから当然だろうけど。
でもそんなの長い人生の中では誤差範囲程度のもんでしかないよね。


当たり前だが「学び」というものは会社で経験する事が全てではない。
本当に頭が良い人はどんなものからでも学び自らの血肉としている。
というかまずそれを「学び」とすら認識していないんだと思う。
「勉強を苦痛と思わない人こそが最強」みたいな話あるじゃない?

おっと、やや話が逸れたけど
結局は会社の中でしかキャリアアップできないという姿勢が
大前提としてまず間違っているわけ。ブッブーですわ!

会社は単なるライフワークの1つで自分を構成する要素の一部なのです。
むしろ「勤務中=成長、休業中=停滞」とか考えちゃう人こそヤバイ。
俺が育休中にどんだけマンガ読んで心の汗をかいたと思ってる?


勿論、この辺の事は頭では分かっている人も多いだろうし
俺も分かっていた筈だ。でも育休を取って俺はそれが確信になった
この世界は実に「学び」に溢れているのだ。知らない事が多すぎだ。
忙しい会社員ではまず得られない「学び」が辺り一面に転がっていた。

生後間もない子どもの世話を嫁と一緒にやるのもそうだし、
出産や子どもに関する様々な制度や社会のしくみを知るのもそうだ。
あと食品の表示なども気にするようになったし、
子ども向け番組を観るようになった(←ここはあまり変わっていない)


「でもそれは会社務めしながらでも学べたのでは?」

答えは「否」だね。


確かにある程度の知識は会社に勤めながらでも入ったかもしれんが、
それらの話題に向き合う時間、注ぎ込めるリソースが圧倒的に違う。
俺自身、半年でもまだ足りなかったと感じているくらいだし。

あと母親の大変さが良く分かるし近くにいるので凄く伝わる。
会社にいたら家の状況なんて分からないのでほぼ伝わらないだろう。
あと俺がどこまで手伝えてたかは分からないんだけど、
でも嫁だって誰かがそばにいるってだけでも精神的に楽だった筈だ。

こういった気付きは育休を取らないと得られなかっただろう。
他にも普段の会社務めでは見る事が決して出来なかったであろう
様々な世界を見る事が出来た。育休で俺は間違いなく成長できたのだ。


というわけで3年前の俺の育休取得は、
俺の人生においてとても大事な転機だった。
育休をとって後悔した事なんて一度も無いしこれからも絶対に無い。

だが俺がファーストペンギンとなって
会社で初めて男性社員の育児休業を取って以降3年、
どうやらまだセカンドペンギンは生まれていないようである。

俺の育休取得の話は、俺が会社にいない間に
「あいつやりやがった」みたいに社内を騒然とさせていたらしい。
知らんがな。というか男性の育休程度で騒いじゃうくらいだから
俺にこうやってブログで旧態依然とか書かれるんですよふっふっふ。

まぁそれは3年前の話だし当時の社内の空気はこうだったって事だ。
でも結局それ以降誰も男性の育休取得者がいないというならば、
俺がこのままファースト&エンドペンギンになる事も考えられる。

 

これからは会社に頼らない人が増えていく。

 

俺は今の若い人はとても優秀だし、世間の変化に敏感だと思う。
これは時代の必然でもあるんだよね。下の世代は上の世代よりも
最新にアップデートされた教育を受けているので間違いなく優秀だ。

俺が育休を取った時、ウチの幹部社員達はどうやら
「あいつは仕事しないでお金は大丈夫なのか」とか
「男が無給で恥ずかしくないのか」とか本気で考えていたらしい。

きっとこの辺の話、若い人ならば自然と「???」となると思う。

そう、昔ながらの経営者って良くも悪くも
「社員のプライベートも自分達がサポートしてやらないといけない」
と考えているのだと思うの。面倒見が良いと言えばそうだが、
逆に他人の考える力を甘く見過ぎているとも言える。

俺だってちゃんとお金のやり繰りが出来るから育休取ったんだし、
別に無給でも恥ずかしくないしというか会社辞めても暫くは困らんし
なんかこう本当に若い世代のポテンシャルを
低く見積もる傾向がありそうなんだよね…。


でも多分昔は本当にそうだったんだと思う。
社員は皆家族で社員の生活を守るために金を稼がせないといけない。
ウチの社員は給料が少ないと他所で言われたりしたら恥ずかしい。
だからいっぱい稼がせる事が社員の幸せに繋がるんだ、と。

しかし皆さんご存知の通り、旧来の幸せの定義は崩壊しつつあります。
若い人程それを知っているし頭もイイから自分の身の丈に合った
快適な日常生活のシステムを彼らはいとも簡単に作り上げていくのだ。

これは勿論、時代が進んで色々なもののコストが低下して、
何でも便利に手に入るようになった事の影響も大きい。
その点については上の世代の頑張りに感謝したいと思っている。


さて、これからの若者は会社に何から何まで面倒を見て貰わなくても
きっと自分で考えて勝手に行動して生きていくようになっていくわけ。
会社という肩書は個人の属性のほんの一部に成り下がるし、
皆が必要時に応じてインカムを調整しながら自由に生きる時代に入る。

少し嫌らしい言い方をすれば会社は「利用される」側になったと思う。
多くの人が自分のパフォーマンスのベクトルを変えながら生活する。
そのベクトルの先がずっと今自分が勤めている会社である必要は無い。

経営者が本気で社員の幸せを願うならば、
それはお金を与える事ばかりではないと「学ぶ」べきだ。
特にこれからの若い社員は俺らが思っている以上に賢いぞ!
会社が知らないとこで社員が大活躍しているなんてザラにあると思う。

だからそんな社員たちのライフスタイルに柔軟に対応する事こそが
これからの「真の」社員の幸せに繋がると考えるのです。
社員との距離感がどーとかなんて最早どうでもいい問題でしょう?


最終的には育休とかわたしの転機とはやや違う話になったけど、
つまりは育休を取るとめちゃめちゃ色んな気付きがあるという話ね。

会社に勤める事でしか成長できないなんて、そんな事あるわけがない。
ファーストペンギンでそのままエンドにならない事を願っています。