脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】台風クラブ / 初期の台風クラブ [2017]


故きを温ねるお勉強。

初期の台風クラブ 初期の台風クラブ
台風クラブ

曲名リスト
01.台風銀座
02.ついのすみか
03.ずる休み
04.ダンスフロアのならず者
05.相棒
06.春は昔
07.42号線
08.処暑
09.飛・び・た・い
10.まつりのあと

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本当に今更ながらCDショップ大賞の話とかするんですけども。
すんません、いつも旬がすぎた話題をこねくりまわしちゃって。

さて、CDショップ大賞2018の大賞は米津玄師という
いやマジでもうそれこそ今更って感じな結果だったんだけど、
今回の話題はこちらですね。『初期の台風クラブ』。
CDショップ大賞2018の準大賞受賞作品となったアルバムっす。

www.cdshop-kumiai.jp


自分で言うのもアレなんだけどさ、
俺はまぁごくごく一般的なサラリーマンの身としてはですね、
人よりも音楽を聴いてる方だと思ってるし
人よりも音楽にお金をつぎ込んでいる方だと思うんです。

というかそれくらいしかアイデンティティがないの。
俺が明らかに世間の平均を超えている要素ってあとはもう体重くらい。
だから俺はRIZAPには行かない。アイデンティティを一つ失うから。


しかしそんな俺はこの「台風クラブ 」というバンドを
このCDショップ大賞が発表されるまで知らなかったんですわ。

これはアカン。「一般人の一般人による一般人のための音楽ブログ」
なんて看板を掲げておきながらなんという体たらく。音楽ブログ失格。
こうやって俺はまた自分を失っていく。もう絶対RIZAPには行かない。


そして自分の無知を認めたくないあまり
「言うてもそんなメジャーなアーティストやないんやろ?」
とか思ってたらレンタルショップにもしっかり置いてある始末。
っっっくそがっ!

というわけで借りるしかない。勉強しなきゃ。
これぞ今話題のリカレント教育。ちゃんと教育して叱ってくれ。


というわけで話題のバンド、台風クラブの『初期の台風クラブ』。
聴きました。ははーん、なるほど。そーゆーことね。完全に理解した。

では参りましょう、アルバム一発目の曲『台風銀座』。

お分かりいただけましたでしょうか。

そう、これは間違いなくウケるでしょ。
特に評論家筋のおっさん達からウケそうでしょ。
というわけで理解できたの。彼らがCDショップ準大賞の理由を。

もう最初のイントロからして「おお?」って感じ。
シンプルなベース音にからっとした味付けのギターリフ。
そしてのっぺりとしたボーカル。つまり古い。俺よりも年上の音。
そう、明らかに生まれた時代を間違えている音楽だ。


音楽って物凄くコンテンポラリーな要素が強い娯楽だ。
まー漫画や映画と比べると、音楽を楽しむ際に
その時代性を意識するって事は少ないかもしれないけど。

でも例えばストロークスの1stアルバム『Is This It』なんかは、
ニューメタルやらデジタルサウンドやらの重装備音楽が主流の時代に
まさかのノーパン参戦という時代錯誤の音楽スタイルで挑んだわけで。

Is This It
Is This It
<ノーパン参考資料>

しかしこの鮮やかなまでの装飾音の脱ぎ捨て方は
情報過多になり過ぎていた当時の音楽シーンにインパクトを与えた。
そして結果的にこのアルバムは2000年代を代表する作品となったのだ。


と考えたときに、この台風クラブの音楽はまさしく時代錯誤だ。
オシャレだったり奇をてらったり分厚かったりダンサブルだったり
とにもかくにも盛り付け上等な音楽が人気の現世において、
タイムリープしたかのようなどストレートなシンプルなサウンドだ。


こいつぁやられた。俺も一曲目聴いた時にニヤリとした。
確かに今こんなシンプルな音楽やってるヤツはそうそういねぇ。
しかもとびっきりに時間軸が狂ってる。
90年代とか80年代のレベルではない。70年代、下手すりゃ60年代だ。

そしてそれこそが彼らが評価されている理由でもある。
おじさん達にウケが良さそうってのも当然あるんだろうけど、
それよりも今の時代にこの音楽をやったという時代性である。

こってりな家系ラーメンばっかりを食べさせられている時に
ストレートなめんつゆでさらっと食べられる冷たい素麺が出されたら
飛びつきたくなるでしょう?人間ってそういうふうにできているの。


彼が昔ながらの日本のロックを目指しているのは
これまた明らかに時代錯誤なジャケットからも伺い知れる。

この『処暑』のMVなんかもレトロ感が素敵。
瓶のコーラとかのレトロアイテムがさりげなく登場してるのも素敵。


つーかこの『処暑』もイントロからしてもう仕上がってます。
なんつーか生粋の古き日本のロックの体現者って感じだ。

ちなみにタイトルの『初期の台風クラブ』は多分だけど
あのRCサクセションの1stアルバム『初期のRCサクセション』の
オマージュだろう。がっつり70年代フレーバーがする。

ただ「台風クラブ」というバンド名については
1985年の同名映画『台風クラブ』が由来なのだとしたら、
そこだけやや時代が下ってしまい統一感が無い気がするけど…。

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しかし、しかしだ。しかしですよ。
残念ながら俺は正直このアルバムがCDショップ準大賞である事には
個人的にはかなり疑問が残る。そんなにこのアルバムは凄いのか??


確かに最初にアルバムを聴いたときは俺も「おお!」と思った。
勿論面白かったし楽しんだ。だがそれは長続きしなかったのだ。
アルバムを一周した後はネタバレした後のような爽快感だけが残った。
つまりまさに台風の様に一過性の「消費」で終わってしまったのだ。

このアルバムを暫くしてまた聴きたいかと言われると多分ノー。
「面白いバンドがいるなぁ」という発見ではあったけど、
でもかといってストロークスのような後進への影響力が見いだせない。


それは多分、彼らが本当にかつての音楽を見事に体現していて、
しかし逆にそこに忠実になりきり過ぎていたが故に、
ただただ「どこかで聴いた事があるような音楽」と思ったからだろう。

昔ながらの音楽にリスペクトをする事は全然いいんだけど、
ただやっぱりそこに+現代的なナニカがあって欲しかった。
あったのかもしれないが少なくとも俺にはあまり感じられなかった。

結論、ちょっと昔の音楽の再現率が高すぎる気がするんですよね。
だからこのアルバムがシーンにどれだけインパクトがあるかは微妙で、
すごく嫌な言い方をすると「珍しい事をした一発屋」的な印象だった。

そういう観点からすると、面白いんだけど準大賞は高評価すぎる感。
やっぱり上の世代へのウケが良かったんだろうかねぇ。
でもまぁ勉強になりました。こういうバンドも活躍してるって事ね。


しかしこのまま彼らは本当に台風の様に過ぎ去ってしまう存在なのか。
いやいや、きっと台風の様に忘れた頃にまた現れて猛威を振るう。
なんとなくそんなゲリラ的な活動をしそうな雰囲気のあるバンドだ。

何せ今回のアルバムは「初期の」台風クラブだからね。
つまりこれからも活動しないといけない縛りを彼らは作ったんだ。

もしかすると彼らは今後80年代~90年代を横断するかのように
ニューミュージックやらヴィジュアル系やらミクスチャー音楽を
やり始めるかもしれない。俺らに過去の時代の追体験を提供し
そして「後期の台風クラブ」でついに時代を追い越してしまう、と。

そんなバンドだったりしないかなという妄想。

あ、遅れましたがCDショップ大賞2018準大賞おめでとう御座います!


【採点】
タイムリープバンド   30点
・CDショップ2018準大賞  30点
・完璧なまでの再現性   10点
・もっと勉強しなくちゃ… -1点
69点