脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】Homecomings / WHALE LIVING [2018]


やさしさに包まれたなら

WHALE LIVING WHALE LIVING
Homecomings

曲名リスト
01. Lighthouse Melodies
02. Smoke
03. Hull Down
04. Parks
05. So Far
06. Corridor(to blue hour)
07. Blue Hour
08. Drop
09. Whale Living
10. Songbirds

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俺が高校に入った頃、2000年代の頭くらいだっただろうか。
癒しの音楽」がちょっとしたブームになった事があった。

ちょうどCDが売れなくなり始めた頃だ。
90年代にこれでもかってくらいに供給されてきた音楽が
次第に飽和し始めた事をどこかで皆感じていたのだろうか。
人々はヒーリングミュージックに癒しを求めていた。

まー当時斜に構えていた高校生だった俺にしてみれば、
癒しなんぞ求めるのはぬるい人間のやる事であり
ロックを求める人間こそが真に救われるべきだとか思ってた。
つーか今も割と思ってる。救ってくれ、こんな無様な俺を。


しかしですねぇ、もう齢30を超えるとですねぇ、
さすがに高校生の頃みたいな気持ではいられないわけでして…。
俺にも「癒し」ってヤツが多少は分かってきた気がするんですよ。

例えばこのHomecomingsというバンド。
女性3名と男性1名という黒一点構成のバンドだ。
ラノベみたいなハーレム構成が珍しい。

現在じわじわと人気拡大中のバンドで、
昨年リリースされたこのアルバム『WHALE LIVING』は
耳の早いリスナーを中心に注目を集めていた。




は~癒されるぅ~。

このアルバムの良さが分かるのは、きっと俺が大人になったから。
高校生の俺だったら「ぬるいっ!」で認めなかった類の作品である。
色々と疲れた最近の俺の心にはこのアルバムが良い癒しになったんだ。


俺はこの『WHALE LIVING』で初めてHomecomingsを知ったのだが、
このアルバム以前は英語詩で歌っていたそうだ。
でもこのアルバムを聴く限りでは日本語詩が凄い似合うと思うぞ。
昔からのファンはそうでもないんかなぁ?

ボーカルの畳野さんの声を最初に聴いた時の感想は、ユーミンだった。

柔らかいけども芯が通った安らぎのある声。
落ち着いて安定感のあるバンドサウンドも相まって
さながらユーミンとティン・パン・アレーのようである。

アルバムは夜が明けるような優しい『Lighthouse Melodies』から始まり、
ゆったりとした雰囲気を保ちながら聴く者を優しく包み込んでくれる。




まるで強張った心が溶けていくかのような感覚。
かつての俺だったらこんな音楽を「ぬるい」と一蹴していただろう。
良かった。疲れてて良かった。年取って疲れていくのも悪くないね。

形態としてはバンドだけれども、
形容するならアダルトなポップロックってとこか。性的な意味はなく。
懐かしくてホッとする憩いの場のような音楽世界である。

HomeComingってのは帰郷とか同窓会とかって言う意味なんだけど、
この安心感のあるノスタルジックな空気はまさにHomeComing感満載。
思わず「ただいま」とか「おかえり」とか言いたくなる。


ちなみにタイトルの『WHALE LIVING』は
「クジラが住む処」って訳になるけど、
そういう架空の町を舞台に作られたアルバムだそうだ。

だから意味的にはファンタジーなタイトルになってはいるんだけど
俺はすっごい近くで寄り添ってくれるような温かい作品だと思った。


例えば『So Far』の歌詞とかとても心に沁みる。

そこが君に合っているなら
日々はそれで回るから

合っていないなら回らないんですね。分かります。

僕がここで待ってるから
君は先を急ぎなよ

少年漫画の「ここは俺に任せて先に行け」っぽい歌詞。
なんか勝手に色んな場面を想像して泣けてしまう。

日常を肯定するようで、でもそっと背中を押してくれている。
しかも畳野さんのボーカルがまた変な説得力を持っているからこそ
うんうん、と結局納得してしまうようなそんな魅力があるのだ。


有難ーいお言葉をずらずら並べるて語るのではなく、
身近な風景や生活の中に自分という存在の輪郭を描いていくような
じんわりと安らぎと癒しを与えてくれるオーガニックな音楽である。

このHomecomings、ドハマりする人が多いというよりは
老若男女問わず幅広ーく聴かれそうな存在かな。
そう考えるとスピッツに近いかもしれん。

あーそういや俺スピッツ大好きだしな。
よくよく考えたらこのバンドを嫌う理由が無いや。
でもスピッツはですねぇ、ある意味でハードロックだから。
ぬるくないぞスピッツは。そこんとこヨロシク。


ただ最後の曲の『Songbirds』なんだけど、
これが英語詩なんですよねー。

映画『リズと青い鳥』の主題歌になった曲だ。



ここは好き嫌い分かれるとこだろうけど、
アルバムを通して聴いた俺は日本語詩で通して欲しかった…。
最後の曲のみ英語ってのは「アレ?」って感じだったんで。
無理矢理かもしれんが日本語Verとかにしてくれてたらなぁ。


凄い売れる!ってわけでもなく、革新的!ってわけでもないけど
今の時代には独特な存在感を持つバンドだなと思った。
あと評論家とかにウケが良さそう。俺には分かる。
この手のバンドは意識高い系のマウンティングに使われる。

あと「癒し」とは言ったもののロック的なものも感じる。

ロックとはなんぞやとかいう議論になるとこれがまた面倒なんだが、
俺はやっぱり自分の我を通す事がロック的なんだと考える。
聴き手が欲しいものに自分を合わせるのではなく、自分の美学を貫く。

そういった意味でこの『WHALE LIVING』は
確かに聴く人を癒してはくれるのだが
それはあくまで結果的にそうなっただけであって、
奥底にはこのバンドの表現欲求をひしひしと感じる一枚だった。

だからこそこのアルバムは「ロック」なの。
「癒し」でありそして「ロック」でもあるの。
一見両立しそうにない2つの要素が両立している。


個人的には今後の注目株なバンドです。
売れる!って予感はしないけど、でもそこそこ人気出て欲しいな。
そしてまた俺が疲れた時は癒して欲しい。


【採点】
・癒しでロックで懐かしい  30点
・大人だから分かる良さ   30点
・身近に感じるファンタジー 20点
・日本語詩でおK      -1点
79点