脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】清 竜人25 / WIFE [2017]


また一つの愛が終わる。

WIFE(通常盤) WIFE(通常盤)
清 竜人25

曲名リスト
1. 愛してる♡キスしたいHしたい
2. My Girls
3. アバンチュールしようよ
4. 25
5. ChristmasSymphony
6. Sundayはわたしのモノ
7. Coupling
8. マリッジブルーを抱きしめて
9. マイワイフイズアイドル
10. ねぇねぇ...
11. LOVE&WIFE&PEACE

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清竜人25が解散する。6月のライブで解散するそうだ。
悲しいようで、でも確かにここが引き際のようで、
プロジェクトが終わった後のような感覚に見舞われている。

この絶対的な一夫一妻制の世の中にあって一夫多妻制を取り入れ、
どうかしている」と世間からも俺の周りからもさんざん言われていた、
変化球というかもう完全にデッドボールなアイドルユニット清竜人25。

2ndアルバム、その名も『WIFE』にしてラストアルバムとなる。


真面目な話。結婚というものには実に様々な形があると思う。
昨年大ヒットしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』もある意味、
「結婚ってなんだっけ?」といった疑問を投げかける内容であった。

実際に、この現行の結婚制度を疑問視する動きは
最近結構目にするようになったと思う。

結婚制度ってのは言ってしまえば、扶養や相続等の制度を
きちんと適用させるための法律的な枠組みでしかないわけで、
どんな形であれ本人達が一緒に生活を共にしているのであれば
本当はそれはもう「結婚」している状態なのだろう。
あとは制度の恩恵が受けられるかどうかで違いが出るだけだ。

そんな「結婚制度」に対して一石を投じるような話題が多いここ数年で、
一夫多妻制という巨石を投げたのがこのグループ、清竜人25だったのだ。

でもこの一夫多妻制は、共感はせずとも理解しておきたい事案である。
国によっては採用しているし、日本も近代化以前は結構普通にあった話だ。

それに日本でも、
結婚は出来なくても1対多の恋愛を楽しんでいる人間は結構いるらしい。
これは決して浮気とかではなくて、
本当に全員に了承の上で複数の人間とちゃんと付き合っているそうだ。

この人にはこの愛し方、この人にはこんな愛し方、
そんな風に器用に愛の使い分けが出来る人も実在するのである。
愛ってのは「自由形」なんだよ。ね、J-POPの歌詞っぽいでしょ?


というわけでこの一夫多妻という独自のスタイルを貫いた
異色の自由恋愛主義アイドルが清竜人25だった。

センターボーカルが清竜人の男性1人で、
第1夫人~第7夫人までの女性が残りのメンバーという
石油の国とかにいそうな構成のアイドルで話題となったのだ。

1stアルバム『PROPOSE』から1年半して『WIFE』で解散という
円満解散なのかなんなのか良く分からない状況だ。
日本で一夫多妻はやはり難しい、そういう事だったんだろうか。


しかしこのアルバム、前作同様なかなかに面白い。
恋愛のドキドキワクワクを歌う曲ってのは35億くらいあるけれど、
既婚者がキャッキャするような曲ってのはパッとは思い浮かばない。

でもよくよく考えれてみれば、キャッキャウフフな曲ってのは
世に出しにくいジャンルだと思わないかい?

流行音楽のメイン消費者層はおそらくまだ結婚していない若者だろうし、
かといって既婚のアーティストが既婚者の幸せな曲を出したところで
「はいはい、仲がよろしいようで」みたいな冷やかな反応が返ってくる。

それにキャッキャして浮かれた曲を発表しリア充扱いされたら最後、
「他人の幸せなんざ聴きたくもないFacebookで報告してろ」と罵られ、
折角の幸せ気分を害される危険性がある。だから難しいジャンルなのだ。

でもこれが倦怠期とか熟年離婚とかの曲だったらみんな注目しそうじゃね?
音楽って不思議。日本人って怖い。他人の不幸を糧に生きてるぜ皆。

しかし清竜人25からは不思議とそんな幸せアピール感は感じないのだ。
曲は凄いキャッキャしてるし寒い程にウフフしてる。でも嫌悪感が無い。
そこにはやはり「一夫多妻」という構成がうまく働いているのだと思う。


1対1だとよりリアルに想像してしまいやすい曲のキャッキャ感も、
1対nになる事でいい感じに薄まっているので鼻につく感じがしない。
また日本においては一夫多妻って時点で
既に出落ちのようなギャグっぽさ(というかギャグ)になっているので、
第三者的な目線で笑えるようなそんな距離感が生まれているのだ。

さらに多妻である事で、
「どの妻とのカップリングが一番楽しいか」といった
ごくごく一般的なアイドル的視点も生まれている。
嫌いな夫人がいても好きな夫人がいればより多くの人が楽しめる。
そんなリスクヘッジも兼ねているのがこの構成の優秀なところなのだ。


だからこのアルバムは他のアーティストではマネ出来ない程に、
思う存分にキャッキャしまくって愛が爆発しているアルバムだ。
こんなにキャピキャピした音楽を惜しげもなく出来るのは清竜人25だけ。
曲名のハートマークの多さが何よりの証拠である。

ただ1stの時もそうだったけど、MP3データのタイトル編集する際に
編集ソフトでハートの文字が読み取れずエラーとなる事案である。
タグエディタはそんなにも♡が嫌いですか。愛なんていらねえよですか。

でもそんなハートマークでイライラが多発しても、
清竜人25なら微笑ましくて笑って許せてしまうのだ。
それくらいにピンク色感が満載の、超攻めているアルバムなのである。

ロックだ。この日本においてはこのユニットは間違いなくロックだった。
結婚制度にもアイドルにもロックにも他方面に石を投げまくった。
聴く方を「降参」と言わせる程にキャピキャピに溢れているのだ。


だが彼らは解散してしまった。幸せいっぱいの姿を見せつけて終わった。

ここまでやりきったという事で、もう次の一手も難しいだろう。
作戦勝ちだった反面、長続きはしないスタイルでもあったし
もともと清竜人も長くやる予定なんて無かったんだと思う。

確かに一過性のプロジェクト的なアイドルとして終わらせた方が、
「あれは凄かったなぁ」と後々語られるアイドルになるのかもしれない。


でも彼らが結婚という形について改めて考えさせてくれた事は確かだ。
「かつてこの国には清竜人という一夫多妻制アイドルがおってじゃな」と、
語られる日が来るかもしれない。そんな台風のようなアイドルだった。

でも時代を経て世の中の制度が変化していく中で
また彼らの姿がどこかで見られるかもしれないし、
もしかしたら次は石油の国とかで活躍しているかもしれない。

だからその日が来るまで彼らの事を記憶に刻んでおこうじゃないか。
「あいつら、ロックだったぜ」と。


【採点】
・結婚観への挑戦 20点
・幸せ絶頂の解散 20点
・惜しげもない愛 20点
・石油の国で流行って欲しい
          5点
65点