脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Song】YOASOBI / アイドル [2023]


YOASOBIへの提言。

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星野アイの目の光り方を見ていると、すごいよマサルさんのキュピーンを思い出す。
あると思います。


みんな『推しの子』楽しんでますか?ちゃんと観てますか?
『推しの子』のアニメ観てない人は2023年エアプとか言われる勢いですよ?

ちなみに推しの子と鬼滅とガンダムとどれが今期の覇権アニメだと思いますか??


そうですね、私は『青のオーケストラ』が好きです。

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ノーブラの主題歌もキレイで好き。あと小桜ハルちゃんが昔の恋愛アニメのヒロインみたいなキャラで好き。推せる。俺の今期の推しの子は小桜ハルちゃん。ちなみに青のオーケストラは9月まで2クールあるみたいなんで、きっと来期の推しの子も小桜ハルちゃんかもしくは桜沢墨ちゃんになる予定。


そんな推しの子の勢いと共に凄い話題になっているのが御存じこの曲。

YOASOBIの『アイドル』だ。

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アメリカを除いたランキングとはいえ、ビルボードチャートで1位を獲得したという事実は素直に凄い。おめでとうございます。(日本語楽曲という書き方が回りくどいけどね…日本人だと既に獲得者がいるというわけかな)


さて、この曲『アイドル』が流行りまくってるのはもう今更俺が言及する事でもないし、小学生の娘も良く歌っているし娘が観ているキッズYoutuberたちも良く歌っている。
マジか。今の小学生って推しの子アニメ観たんか?あの一話観たんか??ちなみにウチの子は観てない。曲だけ知ってる。


『アイドル』という曲、実に『推しの子』という作品の事をよく考えて作られているのが良く分かる。YOASOBIはタイアップ曲も多いが、そのどれもが作品に真摯に向き合って曲を作る、言わばめちゃめちゃ信用できる請負型アーティストだ。分かる。自営業の俺も分かる。顧客からの信用ってめちゃんこ大事。

故に『アイドル』もアニメファンからの熱烈な支持に加え、圧倒的なYoutubeでのMVの再生回数、tiktokでのバズやニコニコ動画での「ゲッター!」人気など、多方面で話題になっているのだ。

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もういまやYOASOBIの勢いは留まるところを知らず、飛ぶ鳥を落とすどころか、飛行機とかヘリとか北朝鮮のミサイルまで落とせそうな勢いだ。


なんかみそきんみたいな事も始めるし

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こないだ俺も観に行ったミュシャ展のイメージソングにもなるし
(でも別に会場で曲が流れたりはしない)

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ついには今秋のColdplayの来日公演で客演を担当する事になっている。

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でも良く考えたらColdplayもYOASOBIもどっちも遊びだしな。お似合いかもしれない。

ちなみに前回のColdplayの来日時はRADWIMPSが出演したんだが、『前前前世』を歌わなかったせいで軽く非難されるという可哀そうな感じになっていたので、YOASOBIはちゃんと『アイドル』を歌った方がいいんじゃないかと少しだけ心配している。


そんなわけで最早向かうところ敵無しのYOASOBIと大ヒット中の曲『アイドル』なのだが、この度のビルボードチャートでの1位獲得によって「ついにYOASOBIが世界的な評価を得た!!」というのがなんかもうけつなあな確定みたいな状況である。YOASOBIの音楽は世界に認められた。これがもう社会通念。令和の新常識。

確かに面白い曲だとは思うしアニメも面白いし皆がハマる理由も分かる。

 


だがちょっと待って欲しい。

 

 

なんだか今って『アイドル』を批判したらダメみたいな、そんな空気出てない??

松本人志みたいな権威主義的状況になってない??みんなが良い良い言ってて流れ出来ちゃってるからダメ出ししにくい的な。いや俺もあっちゃん派じゃなくて松本人志派だけどさ。


俺は別にYOASOBIが嫌いなわけじゃないし、『アイドル』だって普通に聴いてる。


だが俺はこの『アイドル』のヒットに関する盛り上がりについては加熱しすぎというか過大評価なのではないかという立場である。ぼざろの結束バンドの時もそうだったけど、そんなに騒ぐほどの事か?みんな目の前のヒットに浮かれてるんじゃない??という感覚だ。

そう、今日の俺は冷静沈着。少し冷めた目で物事を見つめる賢者モード
ほらもう夏だしね。冷やし目線始めました。


あ?流行の歌を批判したいただの逆張りってか??

いやだから俺は推しの子のアニメ好きだし『アイドル』も聴くっつってんだろ!


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ちなみに推しの子で一番好きな子は有馬かな。最近の話で一気に好きになった。

ただ今日は真面目に『アイドル』という曲について、俺が心の底から世界に誇りたい日本の代表曲としては”推せない”理由をここに書き記しておきたいと思ったのである。


そういえば以前にもネットで音楽評論家がYOASOBIを批判して炎上した事があったね。
批評家が炎上するなんてのは今や良くある光景だし、批評家に対して誰がどう思おうがそれは自由ではあるけど。

ただ薄々気付いてたけど、これだけSNSが発達した現代ではもう真向から批評なんてなかなか出来ないよねというのが本音ではないか。特に俺みたいに点数つけるヤツ。下手に低い点数でもつけてみろ。もし俺が有名人ならボロクソに言われまくってる。

だって批評家と名乗る人物がちょっとSNS上で流行を批判すると「お前は分かってない時代についていっていない若い芽を邪魔するな」とかオールレンジ攻撃されるやん。ニュータイプじゃないと避けられない。もうやだ怖い。

今みたいな皆がインタラクティブに発信する時代においては、純粋な批評家なんてものはもう存在し得ないし、ましてや否定的な意見を言うヤツは消し炭にされるんじゃないかとすら思うよ。


コレ、『君の名は。』がヒットした(けど評論界ではそこまで高評価では無かった)辺りから特にそんな感じが俺はするんだよなぁ。最近だとマリオの映画なんかもそうだけど。評論家なんて要らんかったんや!良し悪しは大衆が決めるんや!みたいな感じ。

特に日本は批評が弱いってのは昔から言われるしね。ある意味市民の意見が強いというポジティブな捉え方も出来るけど。

しかしそんな近年の雰囲気を感じ取ってか、ここ最近の批評からは厳しい意見を聴く事は非常に稀になってしまっている。そしてその反面、曲がヒットした後で”それがなぜ人気なのか”を分析するみたいなヒットの妥当性を補足するような内容は増えた。


あん?批評ってのはなぜ売れているかの謎を解き明かす仕事なのか?
お前らは探偵か?マーケターか?もうマッキンゼーとかに就職したらええんちゃう??
高給取りよ。音楽評論なんてもうこれから食えなそうだし、変わる、あなたと。マイナビ転職。

tenshoku.mynavi.jp



そりゃ楽だよね。曲が大ヒットしてるんだから、それを支持する批評を書くのは楽だよ。みんなからうんうんわかるわかる!と言って貰えてドーパミンどばーっで幸せだよね。誰も傷つけない。肯定し合う世の中。みんなぺこぱ大好きだもんね。



いや、俺は松本人志派だ。


『アイドル』という楽曲が世界にはどう映っているのか。


ここで俺が一つの説を唱えてやる。


それは『アイドル』≒『PPAP』説である。


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は?





ご存じピコ太郎の『ペンパイナッポーアッポーペン』。2016年に世界中で大ヒットしたあの曲だ。
PPAP』も『アイドル』も世界でヒットした。そして俺は『アイドル』の世界的受容はこの『PPAP』と似ているのではないかと踏んでいる。

敢えて極端に言います。それは「ヘンテコで面白い歌」という点だ。


すると間違いなくこういう反論が出るだろう。

PPAP』は歌ネタだけど『アイドル』は違う!
『アイドル』は音楽としてちゃんと評価されている!


ーーーふっ。


…なぜそう言い切れる?


ピコ太郎が流行ったときもめっちゃ真剣に曲を分析して音楽的に評価してた方々がいたけど、あれはみんな歌ネタの一発芸を大真面目に解説しちゃうという可笑しさでやっていたっていうのか??それに対して『アイドル』への分析はみんな真っ当にやっているというのか??

いや、違うね。本質的にはどっちも変わらない

違うとすれば我々リスナーの態度。
PPAP』の評価には「PPAPを真面目に解説してるw」くらいの態度なのに対して『アイドル』の評価には「そうだそうだその通り!YOASOBI凄い!」と興奮するというこの熱量の差。

それは『アイドル』がより音楽的に優れているという幻想を皆が勝手に抱いているからにすぎない!ばばーん!


そもそもがみんな「正当な評価」みたいなものに囚われ過ぎだ。

いいか、この世に正当な評価なんてものは存在しない
正当な評価があるように見えるのは、自分に都合の良い評価を正当な評価として扱いたいという人間の心理が働いてそう見えるだけ。

とにかく何度も言うが『アイドル』が世界的にウケているという事実は間違いない。
だがこの曲の音楽性が世界の音楽シーンへの突破口になるかというのは信じがたい。

何故なら『アイドル』は『PPAP』だから。

怒られても良いから言う。『アイドル』は一発ギャグなのだ。
なんか面白い曲流行ってんなーみたいな。


俺はこの曲に今後世界で普遍的になりうる音楽的展望性があるとは思えない。
だからこの世界的ヒットは危険なのだ。日本のみんなが勘違いしかねないと。

だから今回は俺が『アイドル』とYOASOBIに対して思っている事を勝手に提言するぞ。
これ見てる粗品くん、どう思う?(そういや青のオーケストラのEDを粗品が手掛けてて驚いた。)

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まずこれはもう多くの人がそう思っているだろうけど曲があまりにカオス
ネイティブではケィオス。そう、ケィオスなんです。

「それがいいんだよ!」「普通じゃないからこそ芸術だ!」みたいな声も聞こえてきそうだけどまず落ちつけ。


『アイドル』というか、だいたい最近の邦楽は転調・変拍子など曲調がコロコロ変わるのが当たり前である。暫く前は隠れ転調みたいな気付きにくい展開もあったけど、今やもう恥ずかしげもなく平然とやっている。これはやはりケィオスだ。

確かに曲調が目まぐるしく変わるのは日本の昔からのお家芸だという主張はある。

ただここに関しては俺は持論があって、元々こういったカオス展開はコミックソングだったり児童向けのお遊戯的な曲がよくやっていた手法で、つまりはコミカルな音楽のやり口なのである。

しかしそのコミカルさはネット動画のMADやボカロ文化と親和性が高かったため、自然とカオス展開の音楽はネットの同人音楽的な楽曲群と融合していった。そしてボカロがぐんぐん市場を拡大していく中で、だんだんコミカルな概念が削ぎ落されてカオスな部分が残り、いつの間にか人々は自然とそういう音楽を聴くようになった…というわけだ。

そしてこういうカオスな展開の曲は、そういう文化に触れてない人からするとやはり「子ども向け楽曲」と思われてしまう。そう、つまりこれは『PPAP』的なのだ。

…それってあなたの感想ですよね?そうだよ、俺の感想だが?

子ども向けだと思われてもヒットしたならいいじゃないか!!そうだね。それでいいと思う。しかしならば『アイドル』は『PPAP』的だという点は受け入れて貰おう。


加えてここで苦言を呈させてもらうなら、「奇抜=芸術的」というのは短絡的だという事。

別にAyaseは芸術点を狙っているわけではないと思うが、ただリスナーの中には音楽的評価を気にする方も多いと思うので敢えて言っておく。複雑怪奇な事をすればそれだけで芸術点が貰えるわけではない。

奇抜が評価されるのは従来の方法では表現できなかった何かを訴えるために敢えて奇抜な方法を選択したからで、奇抜で複雑だという手法そのものが評価されているわけでは無いのだ。複雑だからレベルが高いというのはあまりに思考停止ではないだろうか。

ただ日本で音をやたらこねくり回した曲が多い事については、小室哲哉とか最近では米津玄師あたりが土壌を作ってしまったんだろうなと思うところはあるけれど…



次にこの曲はアニメの内容にちゃんと沿った曲だから良いんだ!という点。
その気持ちについては分からんでもない。一流請負アーティストでもあるYOASOBIはその点は毎回しっかりしているしね。

というかむしろ最近のアニソンはアニメにきちんと沿った曲ばかりだ。以前は人気アーティストが歌っただけのアニメとは全く関係ないタイアップ曲が普通にあったからな。この辺はアニメの地位が向上すると共に変わってきたと思う。


しかしだ、アニメの内容にちゃんと沿った曲だからイコール「楽曲の評価が高い」とは俺はあんまり思わない。むしろそれならよっぽど昔のアニメソングの方ががっつりアニメの内容に寄せている

 

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水木さん、ティアキンしたかっただろうなぁ…。


あくまでアニメソングとしてアニメの内容をちゃんと歌っている曲が好きなのは構わんけど、それが楽曲的な評価にまで繋がるのかは疑問だ。ならばアーティストの作家性を殺して徹底的にアニメに寄せた楽曲の方が評価が高いのか??それもまたなんか違うだろう。

アニメソングとして合っているかどうかという見方と、その楽曲が音楽的に評価されるかどうかはやっぱり別軸で考えたい。アニメソングという括りでの評論ならばアニメに合っているか否かを持ち出すのも分かるけど。


そしてこれもきっと多くの人が指摘しているポイント。

ikuraちゃんのラップである。冒頭からいきなり始まるラップ。
J-POPでは聴き慣れた感じのあのラップだ。だがこれも海外の人からすると…きっと『PPAP』的な要素なんじゃないかと思う。すなわち「ヘンテコで面白い物」。

んまーそもそも日本語でラップってのがとにもかくにも難しいし言語的にも不向きだ。
しかしちょっと申し訳ないけど、ikuraちゃんのラップはお世辞にも上手いとは言えないというかいやむしろコレAyaseのせいじゃないか??

ikuraちゃんはしっかりラップの曲を練習して歌えばそれなりに歌えそうでむしろ『アイドル』のラップ問題はそもそもの楽曲構成に難があったのでは??あれはもうラップパートというより単なるOASOBIですよ。

洋楽をそれなりに聴いてきた人なら分かるだろうけど、『アイドル』のラップ部分、うまくリズムに乗れていないのよ。体で歌うのではなく口で歌っている感じ。ただ韻を踏んだダジャレを歌っているだけ。

ラップってのは体を使うんだよ体を!肉体言語なんだよ!(違
もうこれは『アイドル』やYOASOBIに限った話ではなく、安易にラップパート入れてくるJ-POP全般に言えるんだけどさ。


さらに『アイドル』はその韻の踏み方も残念なわけで。

冒頭の

無敵の笑顔で荒らすメディア
知りたいその秘密ミステリアス
抜けてるとこさえ彼女のエリア 

ここはまぁなんとか文末で韻を踏めているので俺はそんなに悪くないと思う。
ただ「抜けてるとこさえ彼女のエリア 」というのは日本語的にかなり無理がある感じがするが(チャームポイントという意味でエリアという言葉を使うのは…かなり強引な持って行き方かと)。

対して2番の冒頭部分

はいはいあの子は特別です
我々はハナからおまけです
お星様の引き立て役Bです


…もう諦めてますやん…。


あんだけ無理矢理なんとか違う言葉で韻を踏んでいた1番に対し、
全部「です」に統一して楽して韻を踏んでる感を出そうとするこの2番。

あれか?アニメでは1番しか流れないから2番はお手軽に済ませようとしたな?
もうね、申し訳ないけどこういうところで「手を抜いたな」と思ってしまうんだよ。

そもそもなぜこの曲でラップを採用したのか?

例えばBメロのバックで鳴る掛け声はアイドルオタクを意識したものだろう。
この部分は確かに面白いしアイドル文化を表わしていてナイスだなと思う。

だがこんなに無理してまでラップに拘った意味がイマイチ分からない。心情の吐露という意味では確かにラップは向いているかもしれないけど、結果的にikuraちゃんうまくノれてないし歌詞も粗さが目立つし曲はカオスになるしで正直要らんかったじゃなかろうか。

ちなみに英語詩の方も頑張って韻を意識しているのは分かるが、やはりどうしてもOASOBI的なラップに思えてしまう。イッツアペンパイナッポーアッポーペン

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でもこの英語Verについては、日本語に聴こえる英語っていう切り口は面白い。
英語に聴こえる日本語というアプローチは割と耳にした事はあるけど、逆というのはほぼ聴いた事が無い。椎名林檎が昔やってたよな程度だ。

ここについては俺はまだ開拓の余地がありそうだなと感じている。


さて、この英語詩の曲についてなんだけどこれについてはもう一つ語るべきことがあって、それは戦略的にチャートを狙いに行ったという点である。

そもそも、今回の『アイドル』についてはAyaseが明確にトレンドやチャートを意識したと言っている。SNSでウケやすい、歌ってみたや踊ってみたでバズりやすい、そういう傾向を分析しつつ完全に「売れる事を狙って」作られた曲でもあるのだ。

英語版をリリースしたのもそうだ。
ビルボードの仕組み上、別の言語のバージョンが投入されるとオリジナル楽曲のチャートにポイントが加算されるというルールがある。これを利用してタイミングを見て英語版をリリースし、ビルボードのスコアを底上げしたわけだ。

楽曲の人気があるのは間違いないとはいえ、しかしこのチャート1位獲得も実はかなり戦略的に獲りにいった結果なのである。

 

かつてインディーズバンドブームの頃は、メジャーな音楽は商業主義のうすっぺらい音楽、インディーズの音楽こそがホンモノだみたいな事を言う若者たちがいた(うぅ…頭が…)。

ネット動画で数々のボカロPが活躍していた頃は、ヒットチャートにランクインする曲はどれもつまらない。ネットで俺達が楽しんでいる音楽こそが面白いという若者たちがいた。

そして今や、ボカロが源流の音楽がメインストリームになった途端「ほら売れた!ほらヒットした!俺らの音楽が天下の時代が来た!」だとぉ!??

笑わせてくれるじゃないか。何故自分たちの好きな曲のヒットだけは正当性があるなんて思っている??チャートの良さで音楽は語れないってみーんな言ってきたし言われて来たんだよ!そっくりそのままブーメランが返って来てるんだからしっかり受け取りな!

というわけで、いつの時代も語られる事はおんなじなんですよね。


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そういや今回はあのikuraちゃんのお家芸「Ah-」が少ないよね。
サビでちょっと入っているだけ。あの「Ah-」が入っているとYOASOBI感あるんだよな。


さて、ボーカルのikuraちゃんは歌が上手い。そこは間違いない。
あんなAyaseがSっ気丸出しで作ってきた難解な曲を「あらら今回はこんな感じなのねうふふ」みたいな感じでさらりと歌えるんだもの。そりゃAyaseもどんどんエスカレートする。

そしてikuraちゃんの歌い方はストーリーテラーに向いている。
Eテレで絵本読んでそう。YOASOBIという音楽ユニットのスタイルにばっちりのボーカルスタイル

この手の歌手は聞き手が勝手にキャラクターを想像して憑依させやすいという特徴がある。木村拓哉みたいにどんな役をやっても本人のキャラに引っ張られてしまうような強烈さとは対照的。ikuraちゃんのボーカルは聴き手が感情を挟む余地が広いのだ。


確かに鈴木愛理もうまかったけどさ。

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でもikuraちゃんのようにスッと感情移入するには難しい。
鈴木愛理も間違いなく上手いんだけど、でももう鈴木愛理の歌になってしまっているのよ。


勿論、今回の『アイドル』のように一人称の印象が強い曲だと、聴き手によっては逆にikuraちゃんのボーカルだと癖が弱くそこにギャップが生まれるという可能性も孕んではいる。

しかし、この『アイドル』に関してはikuraちゃんが歌っているからこそ、あの楽曲の癖が中和されて一般的に受け入れらている点も大きいと考えている。これはikuraちゃんの魅力だ。


例えばこの曲にめちゃめちゃオタク向けアニメ声のボーカルがのっていたらきっとここまで一般的には広がってない。アニメ声を否定しているわけではないぞ。あくまで広く聴かれるかどうかがポイントだ。早まるなアニオタ共。

ただやはり『アイドル』は明らかにikuraちゃんのボーカルはカワイイ声を意識して歌っているし、語弊を恐れずに言えば敢えて幼稚な歌い方にしている。もっと大人っぽい歌い方も出来るだろうがでもそれは曲のテーマに合わないから。だから方針として納得できる。


そして、ここもまた海外へのウケポイント!

日本人のカワイイポップスが人気なのは周知の通り。外国の人は邦楽のカワイイ声が好きなのである。つまり敢えてikuraちゃんに今回こういうボーカルを取らせたのもつまりこれ戦略なんですよ!

だがそれはまた「子ども向け」的な印象を強める事にも繋がり『PPAP』的要素にもなり得るという諸刃の剣でもあったというわけ。


いずれにしても『アイドル』の世界的ヒットでJ-POPが世界的に認められたとストレートに解釈するのはやっぱりどうも色々問題があるように思うわけですよ。

そもそも海外のチャートをみんな特別視しすぎじゃないか。

海外のチャートだってそれこそ日本のチャートと案外変わらないような性質もあって、
例えばチャートアクションはそれほど跳ねなかったものの人々の記憶に残り続け今や評価の高い名曲となっている洋楽曲も沢山あるし、一方で逆にチャートアクションは派手だったのにもう過去の曲扱いで殆ど見向きもされない曲もある。

海外のチャートだからって実態は意外とそんなもんなんで、音楽的にどうのこうのみたいな過度な反応をするより、あくまでヒットチャートはヒットチャートなんだと捉えた方が良いんじゃないかと思うわけですね。そっちが健康的よ。寿命も縮まない。


さて、ここで『アイドル』に限らず、YOASOBIというアーティストの楽曲についても思う所があるので触れてみたい。

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USJのイメージソングであるYOASOBIの『アドベンチャー』。
実は今年USJにも遊びに行った我が家族にも馴染みのある曲だ。
娘も好きで良く歌っているし、俺もたまに口ずさむ。

この曲は非常にYOASOBI的特徴が出ているなと思っていて、それは何かと言うと「間の無さ」である。

とにかくYOASOBIというよりAyaseは”間を嫌う”傾向がある。
音符が連続していないと気持ちが悪いのか休符が勿体ないのか。

上記『アドベンチャー』を聴いて戴ければ良く分かるが、小節毎のつなぎ目に絶え間なくメロディを挟み込み、ここで一旦メロディが落ち着くかな?と思った部分でもスキあらば音をねじ込んでいる。言わばとてもせわしない曲だ。

多分これはAyaseの作曲の癖になっているし、それがそのままYOASOBIの特徴にもなってしまっている。美麗な旋律の連続性を重視しているのだろう。そしてそのメロディの1音1音に綺麗に等間隔で言葉をあてはめていくのがYOASOBI的音楽だ。


常にメロディは途切れるべからずみたいなYOASOBI家訓でもあるのか?だがその見えない呪縛のようなルールで構成された曲は、聴いてる側としてはどうしても落ち着かない。わんこそばみたいに次から次へと音がやってくるので、もう胃袋が減退期に入ったおっさんたちは食傷してしまう。

少し上にも似たような事を書いたが、音が詰め込まれているものはクリエイティブに”聴こえる”というだけで、その実はただ感情が起伏して余韻も大して感じられず、結果的に煩雑な印象が残ってしまう。

じっくりと音楽の余韻を感じる事を阻害するような曲は(俺がおっさんだからというのもあるかもしれんが)、まぁエンタメとてしてはいいかもしれないけれどクリエイティブ性を感じるかと言われると残念ながら感じない。


それってあなたの感想ですよね?ああだからそうだっつってんだろーが!!


ただ、YOASOBIの曲には「メロディ偏重」というJ-POPの大きな特徴が如実に表れているという事。普段はリズムで感じとる部分さえもメロディで上書きしている、まさにメロディ重視のJ-POPという音楽をより尖らせた形態、それがYOASOBIの音楽。そこはなんかこう伝わって欲しい。

それが今流行りの若者文化なんだからそれで良いだろ!と言われれば…確かに。ハイそれまでヨ。ただYOASOBIに感じたものをおっさんが言ってるだけです。そうですね、おっさんの耳が最近の音についていけていないという、それだけの話ですね。さーせんした。


あとさ、『推しの子』の話に戻るんだけど、女王蜂のEDテーマ『メフィスト』についてももっとみんな話題にしてあげてくれ!

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アニメの内容に合ってる!しゅごい!だの騒ぐならまさにこの『メフィスト』がそうだろーが!!

毎回アニメのラスト部分でこのメフィストのイントロが流れ出すタイミングが最高じゃろがい!
やっぱアニメと内容がリンクしてるどうこうってのは後付けで、結局みんな自分が気に入った音楽の理由の一つにアニメとの関連性を持ち出しているだけじゃん!ずるーい!

たまにあるよね、EDへの入りがゾクゾクするアニメ。俺はEDがいいアニメこそ強く印象に残ると思っている。去年だったらリコリス・リコイルとか良かった。『メフィスト』こそもっと評価されるべきだし、みんなED曲の重要性も広めていこうぜ!


あとYOASOBIなら今年出た『セブンティーン』こそもっと聴かれるべきですよ。

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このメリハリのある躍動感にikuraちゃんの緩急ついたボーカルが見事にマッチしている。マイナー調で入り、サビ前でボーカルにもエフェクトがかかり不穏な前兆を見せておきながら、サビでパッと開けるように転調するのがAh-気持ちいい。

一番が終わった後にAメロに戻るまでに差し込まれるインターリュードの使い方も上手いし、イントロのメロディの調子がラストサビ後に一瞬フワっと変わる部分もキレイ。急展開だが感情の運び方がまるで計算されているようで無理が無く無駄が無い。

正直、取っ散らかった『アイドル』より断然この『セブンティーン』の方が、曲としての一貫性も意外性も高く充実した音楽体験が出来ると思う。しかしyoutubeの再生回数は『アイドル』の1/20程度という大差をつけられている。


ホントね、何がウケるかなんて分からないもんなんですよ。


最近とにかく明るい安村もイギリスでウケているしね。

mdpr.jp


ホントね、何がウケるかなんて分からないもんなんですよ。



そんなAyase、お次はるろ剣アニメのテーマをR指定と一緒にやるらしい。

まさかのR指定という予想の斜め上のコラボだが、PVで聴く限りは互いの個性があんまり出てない気がしてなんとも言えないけど…実際にアニメを観てみないと分からんね。

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しかしAyaseはこんなに多作だと過労死しないか心配だ。同じく多作で過労死ライン超えてそうだった川谷絵音と一緒に組合つくって労働環境の改善を訴えていって欲しい。

あとるろ剣も声優は一新なのね。まぁそりゃそーか。
内容を知らずにテキトーにOP曲のそばかす作ったジュディマリの面々に改めてOPをお願いする事は…まぁ無理か。


というわけで長々と『アイドル』のヒットについて私見を述べてきたわけですが、結局ね、評論家がヒット曲についてヒットした理由をずらずら並べて音楽的にどうこうとかそれっぽい事言ってみんなで「うんうんそうそう」なんて言うの、ぶっちゃけあんなん全員バカです(※注:ひろゆき風)。


俺は『アイドル』のヒットは『PPAP』的「物珍しさ」とアニメ効果と商業的戦略に因るものだと思っています。でもそれも俺の感想です。以上。


実際、何がウケるかなんて事前に分かんないし、ヒットなんて結果論。

でも実は一番言いたかったのは「音楽批評なんてもう無理かもね。特に批判的な態度のヤツ」という事かもしんない。言いたいことも言えないこんな世の中じゃ。戦う事も必要なのさ、ってね。


そういや最近の邦楽シーンを示したGacha Popなんて言葉が出てきた。

SpotifyがJ-POPをまとめたプレイリストを公開していて、これを「Gacha Pop」と呼んでいるらしい。ただ収録曲にジャンル的なまとまりがあるわけじゃなく「何がでるか分からないガチャガチャ感」という意図らしい。

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J-POPという言葉の意味も出てきた当初から変わりまくって今は漠然としたものになっているし、もう強引にまとめる言葉を作ってしまえというコンセプトは面白いと思う反面、でも本来の純粋な音楽としてのジャンル分けを無視したカテゴライズは乱暴だなとも思う。

でもより多くの人に色んな音楽を聴いて貰うという目的を果たすには、こういったやり方も一つのアイディアとしてアリなんだろうな。近くに「K-POP」という、よりくっきりはっきりとしたポジションでかつ巨大なジャンルがあって、J-POPというネーミングではもう対抗できないわけで。

邦楽は果たしてどこに向かうのか。
そして今後、評論の役割と意味はどうなっていくのか。

とりま本業の音楽ジャーナリストの方々、頑張ってください。もしくは転職先探しましょう。

俺?俺はほら、音楽ジャーナリストじゃなく音楽漫談家(自称)なので。


【採点】
・推しの子は小桜ハル      30点
・次の推しの子は桜沢墨     30点
・推しの子の推しの子は有馬かな 20点
・もしかしてだけど音楽評論なんて出来ないんじゃないの
               -10点
70点