【Album】カネヨリマサル / わたしのノクターン [2023]
スゴイヨマサルサン。
認めたくないが、30代後半になるとさすがに物覚えが悪くなってくる。
これマジだからな。俺より年下の方は気をつけて欲しい。
10年前ならAKB48の主要メンバーなんて九九みたいに言えたのに、
もう今じゃ新しい学校のリーダーズのメンバー4人すら覚えられない。
まだ政治家女子48党の方がメンバー言えそう。
ファンの方には申し訳ないが、chilldspotとchilli beansは今でも本気で良く間違える。
以前にはWONKとNOT WONKという相反するような名前のバンド2組を認識するのに海馬がショートしそうになった経験がある。
そんな要介護目前の俺が最近やっとちゃんと認知出来たアーティストがカネヨリマサルである。
何が問題だったかって、カネコアヤノとよく混同していた。
いやさすがにバンドとソロアーティストを間違えるわけねーじゃん!とか思った君。
甘いな。そして若いな。そういう話じゃないんだ。アーティストの文字をどう認知しているか、その文字情報をインプットする際の回路の問題なんだ。
ちなみに嫁はマカロニえんぴつとCreepy Nutsがどっちがどっちだったか分からなくなるらしい。曲のジャンルが全然違うのにそんなわけあるか!と思うだろ?俺も思う。でもそういう事じゃないんだ。本人曰く、食べ物の名前が入ったアーティスト名としてどっちもインプットしていたため、どっちがどっちか分からなくなるらしい。
つまり年を取るとはそういう事なのである。みんな覚悟しておけ。
ちなみにLinkin Parkは当時大人気だったLimp Bizkitに似たバンド名をつける事で、CDショップなどで近くに置いて貰って多くの人に認知されようとしたみたいな(本当かどうか怪しいが)エピソードを耳にした事がある。似た名前ってのもメリットになる場合もあるのだ。
ではどうやって似た名前のアーティストを混同しないようにするか。
それはやっぱりそのアーティストの音楽を聴くのが一番なのだ!
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今年発売されたカネヨリマサルのアルバム『わたしのノクターン』。
これがね、ステキなアルバムなのよ。
是非とも多くの人に聴いていただきたいアルバム。
チャットモンチー直系とも言うべきサウンドで、チャットモンチーに育てられてきた30代の我々にとってはもうお母さんみたいな音楽。グレートマザー・ミュージック。言うなればこれはユング心理学におけるアーキタイプの一つである。
※ちなみにユング心理学によると2000年代邦ロックのアーキタイプは「グレートマザー(チャットモンチー)」「アニマ・アニムス(BUMP OF CHICKEN)」「シャドー(ASIAN KUNG-FU GENERATION)」「トリックスター(東京事変)」となっている。
別に古参ぶるつもりはないんだけど、カネコアヤノもカネヨリマサルもどちらも以前からは少しは聴いていた。
このカネヨリマサルの『もしも』は結構流行ったし有名なんじゃないかな。
ただカネコアヤノはアルバムも聴いていたんだけど、カネヨリマサルは曲を何曲かyoutubeでつまんで聴いていたくらいで、アルバムとしてちゃんと聴いたのは今作『わたしのノクターン』が初めてだったのである。というかフルアルバムは多分これが初めてなのかな?
というわけでこの度、しっかりとカネヨリマサルに浸る事になったわけです。
とにかくバンドの音の鳴り方がめっちゃ俺好み。時代感覚的にはすっかりオールドタイプに分類されそうなギターロックなんだけど、これこそが我らのグレートマザーなのよ。シンプルでメロディックで、そして切ないの。
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ここでこう鳴って欲しい!という期待通りの音が予定調和のように鳴ってくれる。この安心感と心地よさよ。裏切りも急展開も一切ない、純粋無垢なそのサウンドがとてつもない信頼性に繋がっている。これぞ脈々と受け継がれるガールズ邦ロック王道の美学だ。
前衛的な音楽を評価したがる音楽評論家野郎共にはウケないかもしれん。しかし俺にはこれで良い。コレが好きなんだ。
そして一語一語丁寧に丁寧に言葉を乗せて歌っている、そんなとこにもグレートマザー(チャットモンチー)感がある。伸びやかに歌う部分はしっかり伸ばして歌うし、歌詞が聴き取りやすくてそろそろ耳の方のインプットも怪しくなってきたおっさんにはとても有難い。
今作のアルバムのリードトラックとして先行リリースされた『26』。
26というのが何かの大事な数字だったらしくこのタイトルをつけたらしいが、それが何の数字かは良く分からない。メンバーの誰かの年齢かと思ったけどどうもそれも違うっぽいし、歌詞を読む感じだと失恋絡み…??と色々気になる曲である。
水族館の水槽の前で演奏しているMVもかなり気合を込めて作ってあるらしい。
あとMVでギターボーカルのちとせみなちゃんはお顔をお出しになっているが、他の2人は髪でお顔が良く見えず、炎上した永野のあの状態になっている。
ちなみにMVに出演している女優さん、溝口奈菜さんはそのままアルバムジャケットとしても登場している模様(確認してないけど、ジャケット写真見る感じそうだよね!?)。
ただこのジャケットを見て彼女をバンドメンバーと勘違いする人はかなり多いと思われる。ジャケットの子が気になってライブに来た人が「おい!あのジャケットの子はどこだ!!」とキレ散らかさないかという点は少し心配である。
しかし日本にはガールズバンドは沢山いるわけでつまり供給自体もかなり多い事になる。ここでビジネスっぽい話に持って行くならば、みんなそれぞれ他のバンドとどう差別化されているのかがポイントになってくる。
カネヨリマサルについて言うと、サウンドメイクに関しては時折牙をむくギターの音に「キュン♡」となるなど結構男性バンド的な面を感じる場面も多く、ただそんな中でも優しさと可愛さが宿るボーカルとガーリーな歌詞にもまた「キュン♡」となるわけで、カッコよさとかわいさの両面からのダブルキュンを感じられるというのが個人的な推しポイントである。
チャットモンチーの系譜と前述はしたものの、カネヨリマサル本人たちは自らを”青春ロックを追いかけるバンド”みたいに称している(ちゃんとチャットモンチーの「ファンを公言もしているけど)。
青春ロックという言葉を聴くと、世代的には2000年代前半に大流行した「青春パンク」というジャンルを連想してしまう。
俺自身は別に大して青春らしいエピソードはなんも無かったんだけど、とにかく当時は青春をテーマにストレートに歌うパンクバンド(音楽的には純正のパンクというよりもメロコアとミックスされたようなバンド)がいっぱいいた。
彼らは大人になってもいつまでも青春を忘れずにピュアな気持ちを歌い続けるというヤング精神・瑞々しさを持っていた。ただそのフォーマットも程なくして廃れ、以降はむしろ「あのブームは何だったんだ」みたいなややネガティブな振り返りをされる事も多かったように記憶している。
勿論カネヨリマサルのメンバーたちは本質的には「青春パンク」とは異なるのだが(それでも青春パンクの影響下にも多少はあると思う)、”青春”を標榜しパッケージングするそのスタイルに、俺はどうしてもあの頃の青春パンクのバンド達の面影を重ねられずにはいられないのだ。
「いつまでも青春を追いかけていたい」そんな青臭い想いを今の時代に掲げるバンドが現れるなんて、なんだか嬉しいじゃないですか!
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この『I was』は個人的にもお気に入りの曲でシングルで公開されていたときから聴いていた。アルバムの中でも攻めの曲でとってもクールだ。これもカッコイイギター音の中にふと可愛い表情をみせるボーカルがあって良い感じのコントラストになっている。
最近の流行曲の傾向からすると、若い人には音の情報量てんこ盛りのマシマシ音楽がやっぱりウケが良いみたいで、バンドの人気曲にしてもシンプルな構成のバンドサウンドじゃなくて色んな音が絡んでいる曲の方がより支持されやすいようだ。
ウチの娘もすっかりTikTokの流行曲を気にするようになって、俺も最近はTikTokの流行を頑張って追いかけているところだ。TikTok界隈はヤバイ。まず自分をパリピだと思い込ませる自己暗示と精神統一から入らないと、マシマシ音楽の洪水に俺の鼓膜が耐えきれない。
そんな事情の中、バンド剥き出しのある意味オールドタイプのような音でシーンに挑む存在、カネヨリマサルがこれからどんな人気を獲得していくのかは注目したいし応援したい。
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そんな勝手な俺の期待を背負ったフルアルバム、長さも40分無いくらいにまとまっていて聴きやすい尺で、それも昔の青春バンド達のコンパクトなアルバムサイズを想起させる。何より時間以上にそれぞれの曲に勢いがあって、あっという間に聴けてしまうのでおススメだ。
しかしアルバムタイトルは『わたしのノクターン』となっているわけだが、ノクターンというのは夜想曲、つまり夜を思わせる抒情的な曲という意味だ。ショパンのノクターンを思い出して戴ければ分かるが、ゆったりとした流麗な音楽がノクターンであって、とてもじゃないがこのアルバムの音楽とはかけ離れている。
だが、これは”わたしの”ノクターン。
つまりカネヨリマサルにとってはバンド音楽こそがノクターンなのである。きっと夜寝る時もバンド音楽で寝ているのである。マジか。耳鼻科行った方がいいんじゃないか。
でもそれくらいにバンド音楽を身近に感じている、メンバー達のそんな気持ちが込められたアルバムタイトルなのだろう。
そういや映画の新曲も決まったみたいだ。
上記動画の後半で曲が聴けるけどいい感じじゃん!
カネヨリマサル、これからの活躍にも期待しています。
そういえばカネヨリマサルというバンド名、誰もが「お金に勝る」みたいな意味をすぐ連想してしまう(俺もそうだった)のだが実はそんな意味は一切なく、人の名前みたいなバンド名にしたいという事で50歳の会社員の優しいおじさんをイメージしてつけたらしい。なんじゃそりゃ!
つーか若い女性はいいよなーそういう自由があって!これ、逆におっさんがバンド組む時に「20歳くらいの女性の名前みたいなバンド名にしようぜwwwぐへへwww」とか言ったらフェミニストに叩かれまくるに決まってるんだよ。あぁ、おっさんにももっと自由を分けてくれ。
ただボーカルのちとせさんは一時期バンド名が本気で嫌になって後悔してたようで。今はもう後戻りできないと諦めているみたいですが。俺はカネヨリマサル、響きは悪くないと思うけどな。
でもさ、あの[ALEXANDROS]だってバンド名変わってるんだし(※外圧によって)、思い切って変えちゃってもいいと思うよ!
そうだなー。そこはやっぱり流行りの人気バンドのそばにCDを置いて貰えるように…Official髪Feminismとかでどうでしょう?
【採点】
・期待のガールズバンド 50点
・両面キュンアタック 30点
・カネコアヤノもいいよ 5点
・ヒゲダンはバンド名後悔してたりしないかな
-1点
84点