脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】YEN TOWN BAND / diverse journey [2016]


時をかけるバンド。

diverse journey(通常盤) diverse journey(通常盤)
YEN TOWN BAND

曲名リスト
1. Fantasy
2. コオルS.O.S
3. イェンタウンクラブ
4. EL
5. 君が好き
6. I’ll Love You So
7. my town
8. アイノネ (diverse journey mix)
9. Kiss me with your eyes
10. オレンジ色
11. Romance

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1996年、今から20年前に『スワロウテイル』という映画が封切られた。
俺は小学生だったからリアルタイムでは観てないけど大分前に追って観た。

スワロウテイル [DVD]
スワロウテイル [DVD]

概要はもうWikipedia先生から引用させて戴く。

"円"が世界で一番強かった時代。一攫千金を求めて日本にやってきた外国人達は、街を"円都(イェン・タウン)"と呼び、日本人達は住み着いた違法労働者達を"円盗(イェン・タウン)"と呼んで卑しんだ。そんな円都に住む、円盗たちの物語である。

さっすがWiki先生。最強の説明キャラである。

あと俺の方でざっくり補足すると、
資本主義的価値観に捉われすぎる人々へのアンチテーゼ的な映画で、
まぁ正直テーマとしては割とありふれている題材なんだけど
これがなかなかに人気が高くて長い間愛されている作品である。


しかし公開当時の興行収入は6億円であり、決して成功とは呼べない数字。
まぁストーリーも上記のような内容だし、そこまで面白かった記憶も無い。
だがこの映画の名を未だに多くの人が口にするのは音楽の力が大きい。

今年は映画『君の名は。』が大ヒットを記録して
そのテーマ曲となったRADWIMPSの満満満足も大ヒットとなったが、
この『スワロウテイル』からも20年前に大ヒットした曲が生まれた。

映画の劇中バンド「YEN TOWN BAND」名義で発売された
『Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜』である。
劇中に登場したCharaがボーカルをとる架空のバンドの曲だ。

これまで数多くのアーティストにカバーされている90年代J-POPの王道曲。


うーん、今聴いても良い曲だね。この曲はオリコン1位を記録し、
その後YEN TOWN BANDはアルバム『MONTAGE』をリリース。
こちらは劇中の登場人物名義のアルバムでは史上初のオリコン1位となった。

そして個人的には小林武史のプロデュースが一番光ってるのは、
ミスチルでもレミオロメンでもbacknumberでもなくこのバンドだと思う。


そんなYEN TOWN BANDが、なんと今年2016年に復活していたのだ!
20年ぶりに発売されたアルバムがこちら『diverse journey』だ。
ジャケットが好き。なんかジブリ的なファンタジー感がある。

実は俺、このYEN TOWN BANDの復活を最近知ったの。
深夜にTV観てたらこのアルバムに収録されている『my town』が流れてて、
最初Charaの新曲かと思って良い曲だなーと聴いていたら、
良く見ると画面の右上に「YEN TOWN BAND」の文字。

?????
俺は混乱した。深夜のテレビからあやしいひかりをくらった。
その時はまさか新曲とは思わなんだ。だって復活知らんかったし。

そして俺は深夜に時空の狭間にでも迷い込んだと錯覚した。
もしかして俺、20年前に戻った?これが今流行りのタイムリープ
やっほい!今の知識と記憶のまま戻ったんなら、やりたい放題じゃん!

でも調べてみたらYEN TOWN BANDが普通に復活しただけだった。
いや、いいんですけどね復活。おめでとうございます復活。


そんなわけで現代に蘇ったYEN TOWN BANDの新作ですよ。
いやコレね、良いよ。はっきし言って『MONTAGE』より全然イイ。
小林武史はもうずっとYEN TOWN BANDやってくれ。

『MONTAGE』は映画との調和を意識していたのか、
アコースティックでオリエンタルテイストな内容が多かったんだけど、
このアルバムはまさに今現在の音が鳴っている。
そしてそのどれもが丹念に作り込まれており躍動しているのだ。


先行シングル曲の『アイノネ』『my town』もいいが、
他の曲も伸び伸びと自由にやっていて実に聴き心地が良い。

1曲目『Fantasy』の冒頭は前作っぽい雰囲気で始まるんだけど、
『コオルS.O.S』『イェンタウンクラブ』に入るとノリノリである
そして4曲目『EL』はヒット曲「あいのうた」のようなしっとりバラード。
懐かしくてほっとする場面と攻めてる場面とがバランスよくやってくる。

「あいのうた」のようなビッグナンバーと呼べる曲は無いけど、
アルバム全体の雰囲気が良い。油断して聴いたら完全にやられる。


映画音楽という意味では前作の『MONTAGE』の世界観は正解だった。
しかしあれから20年の時を経て再構築されたYEN TOWN BANDは、
もう既にあの映画の世界を飛び出しているのだ。

アルバムタイトル『diverse journey』つまり「それぞれの旅」の通り、
映画のYEN TOWN BANDの登場人物達はあの映画の後20年の間、
色々な場所を旅をして色々な音楽を手に入れて舞い戻ってきたわけだ。


グローバル化が進み多国籍な価値観が入り乱れる時代になった。
日本にも外国人観光客は勿論、様々な国籍の人が色々な目的で訪れる。
資本主義的価値観も徐々に変質を始めている。こんな時代だからこそ、
あの円の都イェンタウンのバンドは戻ってきたのかもしれない。

そんな想像を働かせると今回このアルバムのために
再び彼らがスケールアップして揃ったというのはとても素敵じゃないか。
俺が観た深夜番組は20年前ではなく現在だった。それで良かったんだ。


次に彼らが活動するのはいつになるんだろう。
また20年後だとしたら小林武史はもう80歳近くになるのか。

頑張れ、小林武史。にんにく卵黄とか摂取して頑張れ。


【採点】
・まさかの20年振りの復活  40点
・スケールアップした音楽  30点
・ジャケットは初回盤もイイ 10点
・夏休みのある小学校時代に帰りたい
              -3点
77点