脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Song】サカナクション / アイデンティティ [2010]


一億総踊り。


今更な話だけど、先月『Sky Jamboree 2017』に行って来たんですわ。

長崎の稲佐山で行われている夏フェス。くそ暑かった。
30歳を超えたデスクワーカーおっさんにとっての夏フェスは、
禅の修行体験と同じようなモノ。思い出づくりと苦行とが同居している。

しかしスカジャンもかなり人が増えたし出演者も豪華になったなー。

かなり前に1回行った事があったんだけど、
その時と比べると明らかに人が増えているのが分かった。
あと前より明らかに暑い。気温って普通に37度とかまで上がるもんなの?
体温を超えてるんですけど。俺の小さい頃は32度とかだったと思うんですけど。


というわけで低体力自慢のおっさんが無理して挑んだ夏フェス。

先発のヤバTで「ありぼぼちゃーん!」と叫んで早速疲れ果てた俺は
後は友人と後ろの方でシート敷いてまったりと過ごしながら
トリのサカナクションまでずっと観ていたんだけど、
いやーサカナクションは良かった。初めて観たけど本当に良かった。
あとトリだともうさすがに涼しいし良かった。暑いのもぅマヂ無理。

そんな次のアルバムがなかなか出ないサカナクションですが、
それでも改めて彼らの人気と底力を知った。さすがだね彼らは。
今年は8つのフェスでトリを務めたらしい。かなりの大御所感だ。

サカナクションも人気に火がついてから大分経つし、
その間にも色々なバンドが台頭してきたわけなんけど、
サカナクションにはもう「ここに有り」といった風格がある。


そんなサカナクションは、
スカジャンの舞台でこの『アイデンティティ』を演ってくれた。
かなりベタではあるんだけど、まー俺も大好きな曲である。

サカナクションと言えば大体がコレか『アルクアラウンド』か
『ミュージック』だろう。どいつもこいつも横文字ばっかだな。
意識高いビジネスマンか。レジュメでエビデンスコンプライアンス

つーかこの曲って調べたら発売からもう7年も経ってるのね。
そりゃ俺も30歳過ぎるわ。その間に結婚もしたし子どもも生まれたわ。
俺のライフスタイルもニッチなニーズでアクティビティだわ。


しかしそんな意識高いバンド、サカナクション
意識高めの曲、『アイデンティティ』なんだけど改めてイイね。
ライブで久々に聴いて凄い良かったから、その後暫くコレを繰り返し聴いてた。

俺はサカナクションの大きな功績って、
それまでの邦楽シーンでは見られなかった
新たな「ノリ」の価値を生み出した事だと思うの。

サカナクションの音楽は「踊れる」とは言われるものの
実はそのノリはかなり独特であって、
疾走感のあるバンドの「イエーイ!」といったノリや
ダンスミュージックなパリピの「ウォウウォウ♪」とかのノリでもない。

それは言うなれば「静かなノリ」である。
言い換えれば大人のノリ。意識高めのノリ。

テンションが上がると言うよりは、音楽が体に沁み込んでいき
内部から自然と体がリズムを取り始めるようナチュラルなノリだ。
だから能動的に「踊っている」というより受動的に「体が動いちゃう」、
そんなノリをメジャーな音楽シーンに持ち込んだのが彼らだ。

本来、この手の音楽はそこまで売れる事が無い音楽だったのだが、
サカナクションはそんな壁を突破し見事に大衆化させ、
フェスでも従来には無かったこの「ノリ」を提供し続けているのだ。
これってかなり凄い事。そう、俺らは彼らに踊らされているのだ。


このアイデンティティ、曲の展開がとにかくべらぼうにカッコイイ。
カラオケで出だしがやや難しい位置からいきなりのサビで始まる。

アイデンティティがない 生まれない らららら


歌詞も凄い。
アイデンティティが無いという悩みを「ララララ~」と歌っている。
山口一郎のセンスが既に爆発している。

電子音とバンドサウンドが折り重なり入り混じり絡み合い、
一気に沸き立つ音楽。意外性と予定調和が同居しているような音楽。
あのサカナクションワールドに一気に引き摺りこまれるのだ。

特にサカナクションはバンドサウンドの切り込み方が絶妙に上手い。
電子音が入ったバンドは沢山いるけど、サカナクションは実に巧妙。
曲の急所となる位置でバンドサウンドを前面に出してメリハリをつける。

カッコ良く、スマート。彼らの芸当に圧倒されていると
気付いた時には自然と体が動き出しているわけだ。
ああ、俺は踊らされている。まんまと踊らされているのだ。


また、先にも少し触れたがこの曲は歌詞もエッジが効いてて好きだ。

好きな服はなんですか?好きな本は?好きな食べ物は何?
そう そんな物差しを持ち合わせている僕は凡人だ

うげぇ、耳が痛い。多分一億総耳が痛い。
日本人のアイデンティティって所詮こんなもんだよね、みたいな
そんな辛辣なメッセージをこんなノリで奏でられたらたまりまへんがな。

またこの曲はサビが2つあるような構造が面白い。
サビらしい部分が過ぎたと思うと再度盛り上がりを見せ
アイデンティティが~な~い♪」のリフレインが始まる。
やめてくれ。もうこれ以上俺のアイデンティティを壊さないで。


でもこの曲を生で聴けたのはとても良かった。
アイデンティティが無いという曲を皆が一様に踊っている姿は
冷静に見れば矛盾を孕んでて滑稽な図なんだろうけど、
結局のところアイデンティティなんて求めても意味が無いのかもね。

だってサカナクションの山口一郎ですら
アイデンティティが無い」って言ってるんだぜ?
じゃあ俺みたいな一般人にアイデンティティなんてあるわけないじゃん。
山口クラスが凡人なら世の中のほぼ全員が凡人なんだよ。諦めようぜ。

だったらもう、
踊らされてると分かっていても踊ってる方が楽しいじゃん?
”踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々”って言うじゃない。

小難しい事なんて考えないで、意識低くして行こう。


【採点】
・意識高いバンド   30点
・夏フェスで再燃   30点
ナチュラルなノリ  20点
・みんながみんな凡人  3点
83点

DocumentaLy(通常盤)CD DocumentaLy(通常盤)CD
サカナクション

曲名リスト
1. RL
2. アイデンティティ
3. モノクロトウキョー
4. ルーキー
5. アンタレスと針
6. 仮面の街
7. 流線
8. エンドレス
9. DocumentaRy
10. 『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』
11. years
12. ドキュメント

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