脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】ゴールデンボンバー / キラーチューンしかねえよ [2018]


ロックチューンしかねえよ。

キラーチューンしかねえよ キラーチューンしかねえよ
ゴールデンボンバー

曲名リスト
1. 口上
2. 燃やして!マイゴッド
3. やさしくしてね
4. やんややんやNighit ~踊ろよ日本~
5. 水商売をやめてくれないか
6. #CDが売れないこんな世の中じゃ
7. お前を-KOROSU-
8. スイートマイルーム
9. うれしいかなしい
10. 海山川川
11. 誕生日でも結婚式でも使える歌
12. あの日君を傷つけたのは
13. ドンマイ

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ゴールデンボンバーって存在は、
音楽業界的にとても特殊なポジションにいると考えられる。

元吉本ということもあってエンターテイナー的イメージが強いし、
世間的にはコミック(エアー)バンドって感覚が一般的だろう。
あと多分『女々しくて』の一発屋と思っている人が多そう。


しかし俺はゴールデンボンバー立派なロックバンドだと認識している。
ほら、ROCK IN JAPANフェスにも出場したし。
アイドルだってROCK IN JAPANに出場したらもうロックじゃね?

だが冗談抜きで「ロック」というジャンルの定義を
「既存のモノに対するカウンター」だとするならば、
ゴールデンボンバー程ロックしているミュージシャンはいないのでは?

そもそもエアーバンドというスタイル自体がロックすぎる。
「音さえあれば楽器隊のメンバーはいらないのではないか?」
という既存のバンド形態に対するカウンターがそこにはあるのだ。
そしてその疑問を鬼龍院のソロではなく、
敢えてバンド形態にする事で浮き彫りにしている。


そう、ゴールデンボンバーはロックなのである。

バラエティなどでの活躍で非常に見えづらくなっているが、
ゴールデンボンバーは常に既存の価値観への疑問を投げかけていた。


まず公式ホームページがロック。

pc.goldenbomber.jp


まんまWikipediaである。

しかしこれは単なるパロディでは片付けられない
Wikipediaさえあれば、 アーティストの公式ホームページなんて
実は必要ないんじゃないかという疑問を投げかけているのだ。


また今回のアルバムに収録されている
『#CDが売れないこんな世の中じゃ』も最高にロック。



この曲は、曲のダウンロードURLのQRコード
Mステの生放送ライブ中にテレビカメラに向かって映すという
サプライスによってリリースされた曲だ。

彼らは身を挺してCDという媒体の存在意義を我々に問いかけたのだ。


また今回のアルバムの収録曲ではないが、
過去にもシングル『ローラの傷だらけ』では
まっ白なジャケットに特典なしという形態で発売し、
売上がどれだけ変わるか実験していた(結果売上は明らかに落ちた)。

逆にシングル『死 ん だ 妻 に 似 て い る』ではとびっきりの特典として
各メンバー毎に体臭がついたカードを封入してみたり、
今作の収録曲『やんややんやNight ~踊ろよ日本~』では
都道府県毎の47バージョン発売というファン殺しのリリースをしたり、
常に「CDを売るとはどういう事か」と試行錯誤をしてきたバンドである。


そんなわけで「何故僕等はCDを出す?」と自問自答していた
ゴールデンボンバーは結局CDとしてこのアルバムを発売したわけだ。
なんだかんだ言ってアルバムもしっかり出す辺りは真面目である。
だが、ゴールデンボンバーがただアルバムを出すだけで終わる筈がない。

このアルバム発売に先駆けて今年の頭に
アルバムの先行披露ライブが開催されたのだが、
それはなんと曲を作ったキリショー以外のエアー楽器メンバーには
このアルバムの収録曲を一切聴かせておらず、
ぶっつけ本番でパフォーマンスさせるというメンバー殺しのライブだった。

これがエアーバンドならではの面白さだ。
通常のバンドなら楽器を演奏するので事前に曲を知らない事はないが、
エアーバンドならそんな事態も起こり得る。

というかキリショーが「いつも新曲作っても聴きやしない」という
他のメンバーに対する当てつけとして今回の企画を考案したようだ。
まぁ実際のライブではあたふたしながらもノリで乗り切ったみたい。


そんなユニークな先行企画が話題となった今作。
タイトルも『キラーチューンしかねえよ』という強気。

まぁ実際に聞いた俺は
「別にキラーチューンしかないわけじゃないな」
冷たい姿勢だったわけだが、
でもやっぱりキリショーって本当に勉強熱心だなと思った。

彼ほどJ-POPを愛して分析して再構築する事に長けた人物も
いないんじゃないかってくらいの努力が感じられる。

キャラクターのせいで見落とされがちだし
逆に「音楽を舐めている」なんて思われそうだけど、
キリショーは間違いなく音楽を愛している人物なのだ。

確かにゴールデンボンバーの初期の曲は
有名J-POPの露骨なパロディが多かったんだけど、
どんな事も最初は模倣から始まるものである。
模倣を経て自分の血肉として次第に自分らしさを手に入れていくわけだ。


今回のアルバムもゴールデンボンバーのルーツであろう
90年代J-POP黄金期の空気を目一杯吸い込んで綺麗に吐き出している。
そして一応ヴィジュアル系という事もあってやや切ない感じの曲が多い。
あとは優しい王道のバラードで癒してくれる曲もある。
そう、意外と優しい曲があるんよねゴールデンボンバーって。

でも特筆すべきはやっぱり『誕生日でも結婚式でも使える歌』だろう。

これは誕生日でも結婚式でも使えそうなふわっとした曖昧な表現を用い
「とにかくおめでとう」と言い続けている汎用性の高い曲だ。
あと卒業式や成人式でも使えそうで実に便利な曲である。

そしてこの曲は使用料フリーと発表されており、
楽曲に関するあらゆる権利が公式に放棄されている。
特に最近は著作権絡みで何かと問題になる話題が多かったので、
そういった時代にこういう曲で切り込んでいく辺りがめちゃロック。
キリショーの時代への鋭い嗅覚が光るロックチューンなのである。


さて、というわけでゴールデンボンバー
というかほぼキリショーが頑張ったアルバムなんですが、
他のメンバーだって実は何もしていないというわけではないのだ。

いや、「このアルバムに関しては他のメンバーは何もしていない」
ってのは事実なんだけど、ゴールデンボンバーって他のメンバーも
実はとてもストイックで俺はそこが彼らの凄いところだと思う。

例えば喜矢武は俳優としても活躍しており、
あとライブの道具やイラスト・告知動画はほぼ彼が制作している。
また歌広場はクイズ番組で活躍したり喫茶店を経営したり、
最近ではeスポーツに打ち込んでいる模様。
そして樽美酒は体を鍛え上げSASUKEに挑んだり
(SAUSUKEの2ndステージに進んでいるので凄いと思う)、
書籍を出したりEテレでレギュラー番組を持ったりしている。

キリショーが作詞作曲というバンドの屋台骨を担当する中、
他のメンバーも自分なりに活躍できる方向性を色々と考えて
キリショーの才能におんぶにだっこで終わらないようにしているのだ。


この姿勢はとても重要な事である。
それぞれが自分が属している組織のみに依存せずに
自分が持ちうる色々な能力を多方面で発揮するという事。

今年は「副業・兼業元年」などとも言われているが、
マルチに無駄なく個々のパフォーマンスが最大化されるようになれば
個人が輝き結果的に国全体も高生産化していくわけである。

そういった意味でゴールデンボンバー
メンバー各自が「自分も何かに打ち込まなければ」という意識を持ち、
互いに高めあう仲間として活動を続けている素晴らしいバンドである。

結局いつものようにアルバムの内容とは全く関係無い話になったが、
ゴールデンボンバーというバンドは只のエアーバンドではなく
まさしく時代を切り開くロックバンドと言える。

彼らの存在は音楽市場では異端かもしれない。
でもとても面白い存在でもある。
我々も彼らに学ぶべき点が色々とあるのではなかろうか。


【採点】
・実はロック    20点
・実は勉強熱心   20点
・実はストイック  20点
・とにかくおめでとう 5点
65点