脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】Ben Frost / The Centre Cannot Hold [2017]


エターナルフォースブリザード

The Centre Cannot Hold The Centre Cannot Hold
Ben Frost

曲名リスト
1. "1. Threshold Of Faith
2. A Sharp Blow In Passing
3. Trauma Theory
4. A Single Hellfire Missile Costs $100,000
5. Eurydice’s Heel
6. Meg Ryan Eyez
7. Ionia
8. Healthcare
9. All That You Love Will Be Eviscerated
10. Entropy In Blue"

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人間って不思議な生き物で、
いつどこでどんな出会いがあるのか分からないし、
何にハマるのか分からない。だからこそ面白いわけなんですけどね。

俺は青春時代にオルタナメロコア、ミクスチャーと
当時の大量生産された典型的なロッキンオン少年の一人だったので、
長らくバンドサウンドというものに慣れ親しんでいる。

勿論、ロック以外の音楽も普通に聴くし好きなんだけど、
でもやっぱり「ロック的な音楽が好き」というのが根底にある。

ところが突然変異的に「これ好き!」というものに出会う事がある。
今回のBen Frostとかがまさにそれ。ぶっちゃけ何で俺のような人間が
こんなアーティストに惹かれてしまったんだろうって思うもん。


これは決してBen Frostを馬鹿にしているのではない。

どういう事かと言うとジャンルがそもそも違うのだ。
俺のようなロッキン人間はまず交わらないであろう音楽。
それがBen Frostの音楽。キンキンに冷えたノイズ・ミュージックだ。

彼の音楽には前作『AURORA』で出会った。
YoutubeにあったこのMVを観て忽ち圧倒されCDを買った。

その時の精神状態がいつもと違ったとかそんな理由もあるかもしれない。
でも今でもやっぱり不思議と彼の音楽には惹かれるものがあるのだ。


ノイズってつまりは「雑音」なんだけど、
「雑」ってのはちょっと可愛そうな表現だと思いません?
雑音だって流しているとどこかしら脳内に迫りくるものがあって、
不思議な快感を感じたりするんですよ。

赤ちゃんがノイズを聴くと泣きやんだりするのは、
母親の胎内にいた時の音に似ているからだという説があるし、
ビートルズだって敢えてノイズを含めた音源を残したりしてる。
ノイズミュージックって実は人間の本能的な部分に訴える音楽なのかも。


というわけで彼の新作『The Centre Cannot Hold』を買ったわけです。

タワレコとか通販サイトって有難い。過去の購入作品から自動的に
「○○の新作が出ますよー」って教えてくれるんだもん。助かる。
というかその通知が無かったら絶対に気付いていないCDがいっぱいある。

洋楽のちょっとマイナーなアーティストなんかまさにその状態。

新作が出ても誰も教えてくれないし話題にもならない。
日本って洋画の話題作とかすぐテレビでも紹介するのに、
音楽になると邦楽ばっかりになりがち。ここは納得がいかない。
というか洋楽好きな人とかってどうやって情報仕入れてるんだろ…。


さてそんなベンさんの新作、相変わらずキンキンに冷えてます。

エレクトロノイズの鬼才なんてキャッチフレーズがつけられているけど、
俺からすれば彼は氷使い。氷属性。命中100%のぜったいれいど
というかよく考えたら名前にフロスト(霜)が入ってるやん。氷属性確定。

まずジャケットがもう寒い。白と青のシンプルなジャケット。
雪と深海を思わせるような冷めきったジャケットである。
案の定CDに触ったら冷たかった。

どうも今回の作品は「青」が一つのテーマみたいである。
MVもアートワークも観てるだけで寒そうな濃い色の青。
濃い青は確かに俺の好きな色だけどこの季節にコレはキツイ…。


内容も激冷え。雪山の修行僧って常時こんな気持ちなんだろうか。
前回のアルバムは金属音的な寒さを感じる音だったが、
今回は空気全体から底冷えするような厳しい寒さがある。
音の起伏も曲展開も吹雪いては静まりまた吹雪く風のようだ。

寒い冬には冬らしい曲を聴くのが正しい季節の感じ方なんだろうけど、
ここまで徹底的にキンキンに冷やされると感覚がマヒしちゃいそう。
脳内が寒さに侵されて正常に機能しなくなる。恐ろしいアルバムだ。


しかしこういう音楽ってどんな状態で
レコーディングしてるのか凄い気になるよね。
この作品で鳴ってる音って単なるノイズじゃなくて
明らかに怒涛の爆音ノイズである。

隣近所から絶対に文句言われる奴。
迷惑かけたからって後から菓子折り持って行くパターン。
白い恋人とか持って行くんかな。寒いですねとか言いながら。


でも寒い寒いといいつつも
たまにはこういう音楽を聴いてみるのもいいもんだと思うんです。

正直俺だってノイズ・ミュージックなんて理解出来ないと思ってる。
でもこれは理解するもんじゃなくて聴いてみて「こういうのもいいかも」
とちょっとでも思えたらそれでいいんだよ。そこに出会いがあるのだ。

情報山盛りのJ-POPから距離を置いて、
たまにはこういった違う音楽に浸ってはまた別の音楽を聴いて…
そういった触れ方をすればきっとそれぞれの音楽の持ち味に気付く。


ロキノン少年だった俺はそのままロキノン青年、ロキノン中年へと
徐々に悲しき退化を遂げていくわけだけど、
その途中途中の寄り道でこういった出会いがあるから面白い。

もし聴かなくなったとしても、それでいい。
色んな事を経て少しずつ自分の中の「好き」が具体的になっていく。
だから実は長い人生の消費活動の中で出会った作品には
すべて必然性があったんだって思うとワクワクしません??


というわけで何故か出会ってしまったBen Frost。
極寒の中でさらなる寒さを体感して修行僧のような境地に達するため
まだ俺はこのアルバムを聴いてみたいと思います。

あと氷ポケモンの不遇はなんとかなりませんかね任天堂さん。
俺氷ポケモン好きなんですけど。


【採点】
・激冷えノイズミュージック 30点
・たまにはこういう音楽も  20点
・マジの修行僧はこんなもんじゃない
              20点
・氷ポケモンの優遇求む   -2点
68点