脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】Mr.Children / 重力と呼吸 [2018]


上から目線のあなたにも。

重力と呼吸 重力と呼吸
Mr.Children

曲名リスト
1. Your Song
2. 海にて、心は裸になりたがる
3. SINGLES
4. here comes my love
5. 箱庭
6. addiction
7. day by day (愛犬クルの物語)
8. 秋がくれた切符
9. himawari
10. 皮膚呼吸

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会社の若手と音楽の話題をしているとこういう質問が出てきたりする。

「え?ミスチルってロックバンドなんですか?」

は?こいつは何を言ってるんだ?そこを質問するのか?
大阪なおみに「古い日本人像がうんたらかんたら」と質問する記者か?

…などと一瞬考えたりもするんだけど、
よくよく考えればこれって結構ナチュラルな疑問なかもしれない。

きっと若い世代が抱いている”ロックバンド”のイメージって
もっとガチャガチャしててフェスでウェーイ出来るバンドであって、
ミスチル辺りはもうロックという印象ではない、J-POPなんだろう。


さて、そんなミスチルさんの最新作『重力と呼吸』が出た。

正直、今回のアルバムは買うかどうか迷った
既に公開されていたリード曲『Your Song』が
あまり俺の好みでは無かったのだ。



でも前作の『REFLECTION』は好きだったので
あの路線なら買いたいなぁとも思っていたのだ。

で、ミスチルが大好きな人に新作アルバムどうですかーって訊いたら
「前作が好きなら好きになると思う」と言われたので
すぐに人に流されるタイプの俺はあっさりと購入を決めた。
きっと俺はそのうちオレオレ詐欺とかに引っかかると思う。

あとアメトーークのミスチル大好き芸人観て
ミスチルを改めて聴きたくなったのもある。
あの番組とジャパネットたかたは害悪だ。
俺みたいな意志薄弱人間に多大な影響を与えてきやがる。
しかしチャンカワイのミスチル愛はガチで凄いな…。


つーわけで他人の意見で購入した『重力と呼吸』なんだけど、
もうミスチルの感想なんてネット上のいたるところに転がっているし
Youtubeのコメ欄で「中学生だけど好き。周りに好きな人がいない。」 
みたいな大人の音楽分かるアッピールコメを拝読させて戴けるので、
その辺を読んだ方が色々と楽しめると思う。

だから俺の感想なんて読まなくてもいいし無視して貰って結構だが、
敢えて言わせてもらおう。今作の感想。

「ミスチルってロックバンドじゃなくなってるやん…」

これである。うーん、ちょっとねー、反応に困るね。
ポップスとしてはとても良く出来ていると思うけど、
俺がミスチルに求めている音楽とはまた違った作風になってしまった。

あの『REFLECTION』の時のような感動は無かった。
ごめんなさい。前作好きだけど今作好きになれなかった。
今度ミスチル好きの人に会ったらなんて言おう。
意志薄弱な俺は「うん、確かに良かったー!」とか言いそうだたはは。


前作『REFLECTION』について、
桜井和寿は「持てる球種を全て出しつくした」的な事を言っていた。
確かにそれくらいにミスチルの全力が感じられるアルバムだった。

そして今作『重力と呼吸』については
「若手がこのアルバムを聴いて音楽を辞めたくなるような、
もう僕らを目標にするなんて思わないくらいの音」
みたいな上から目線の強気な事を語っていた。

毎度毎度なかなかな煽り文句をおっしゃる。ボジョレーヌーボーみたい。


そんな今作が前作と明らかに違うのはまずその曲数である。

前作は”ミスチルのすべて”を聴いて欲しいという意図から
「CDってパッケージに制約される必要なんてなくね?」という
まさかの発想の大転換により23曲と言う規格外のボリュームを
マキアージュUSBに詰め込んでリリースするという試みを行った。

対して今作は真逆。
10曲で48分というミスチル史上でも類を見ないほどのコンパクトさ。
シングルの『ヒカリノアトリエ』も入ってないし、
ぎゅっと選び抜いた10曲で勝負しますといった感じだ。

…しかしその選りすぐりの10曲、どれもが印象が薄かったのね。
アルバムとしてまとまりが出来るように選んだ10曲なんだろうけど、
もう逆にそれがまとまりすぎててインパクトに欠ける結果になってる。

ずっと同じような調子、同じようなテーマのミスチルソングが続く。
コレもう桜井さん、自分モードに入っちゃってますね。

今作の収録曲のMV観れば分かる。
どれもこれも「愛ってこういう事だよね」みたいな
ショートムービー仕立てのMVだ。


『Your Song』のロングVer。トレンディドラマ感が溢れてる。



こちらは収録曲の『here comes my love』のMV。
10分という長丁場。でも曲が始まるのは半分超えてから。



これは『SINGLES』。youtubeではショートVerのみ。
アルバム購入者はプレイパスでフルが観られるよ。
ただ『SINGLES』という曲名はベスト盤っぽくて紛らわしい。


とまぁこんな具合にどれもこれもやたらドラマチックになってて
もう俺としてはお腹いっぱいなんです。ドラマの供給過多。
桜井さん、愛を伝えたいだとか臭いことばっか考えて、
後から悦に浸って走った自分を時代のせいにしたりしませんか?


ミスチルって昔はもっと世界と時代とボクみたいな切り口で
結構コンテンポラリーな内容もテーマにして歌ってたし、
人間の内面と外面の矛盾を突いてハッとさせるような曲も多かったのよ。

しかしこのアルバムはただただ人間の内面にフォーカスを当てて
愛とか希望とかをストレートに惜しげもなく歌う。
そう、限りなくJ-POPに近いスタイルなのである。

そこが俺がインパクトに欠けると思った点である。
ロック的な面白みが薄い。桜井さんってこんな人だったっけ?
もっと上手い言い回しでガツンと来るようなメロディーで
そこらのアーティストにマネ出来ないような表現をやっていたはず。
メジャーでありながらちょっと危ないそのバランス感覚が魅力だった。


そう、この『重力と呼吸』はキレイ過ぎるのだ!
むしろ敢えて深みに入りそうなところを避けている感すらある。
綺麗すぎる水で生きていけない魚がいるようにこれは俺には辛かった。

確かにあまりに整いすぎているので
この完璧主義は若手にはマネできないとは思うが、
でもこれで桜井さんが言うように
「若手が音楽を辞めたくなる」とは全く思えないなー。
むしろ「ミスチル、まるくなってね?」とか考えそうな気がする。

俺みたいに色々こじらせた統合こじらせ病みたいな人間はね、
ミスチルが放つこじらせソングがドンピシャにハマるときがあって
それにとてつもなく共感を覚える事があったわけよ。

だが今回は良くも悪くも一般的すぎる。
共感するとか言う以前に当たり前すぎる。
すまん、俺が欲しているのはそうじゃない。そうじゃないんだ…。


ただ、音に関しては結構好きだった。
前作はまだコバタケが関わっていた曲があったわけだけど、
今作からは完全にセルフプロデュースに移行している。
そしてそのバンドサウンドは前作に続き比較的くっきりしている。

でもなぁ~ミディアムバラードがやたら目立つんよね~。
せっかくのミスチル完全セルフプロデュースなのにさ、
ハネた曲が無いなんて勿体ないと思うんだ…。


そんなわけで『重力と呼吸』。
タイトルを最初聴いたときスピリチュアルな本みたいだと思った。
でも言葉の印象からなんとなく重くてずっしりくる一枚だと
勝手に想像してた。しかし内容はそうでも無かったって感じかな。

そう、ミスチルはロックじゃなかった。確かにJ-POPだったよ。
つまり会社の若手のいう事は正しかったんだね。


というかよく考えたらさ、
「若手がこのアルバムを聴いて音楽を辞めたくなるような~」
みたいな上から目線で語っている時点で既にロックじゃなかった

ロックってのはメインストリームに対するカウンターであり、
いつまでも若きチャレンジャーの気持ちを忘れない
その姿勢こそがロックの源泉なのである。

つまりはあの発言をした時点で今作がロックではない事を
桜井自身が告げていたという事でもある。
実は俺らは釘をさされていたんだ。「今回はロックじゃないよ」って。


とまぁこのアルバムについて結構批判的に書いたけど、
それでも新作をいつもまでも作り続けるのはやっぱり凄いと思う。
ホントのホントに大御所気取りになってしまうと、
新曲は発表せず昔の曲だけでやっているなんて状況にもなりうるわけだ。

そう考えるとまだまだ新曲が聴けそうなミスチルは
ロックの炎までは消えていないと言える。
次は20枚目の記念すべきアルバム。何を繰り出してくるのか期待です。


で、最終的に買って良かったのかという話だけど、
ジャケットの装丁がかなり好み(壁とかに飾ってもいい感じ)だった
ので実は満足です。美術作品みたいでオサレよね。

そして次作を買うかどうかは…また誰かに相談しよう。


【採点】
・キレイなミスチル  30点
・凝縮された10曲48分 30点
・ジャケットはオサレ  5点
・松本に相談しようか -1点
64点