脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】cero / POLY LIFE MULTI SOUL [2018]


平成最後の最新型ミュージック。

POLY LIFE MULTI SOUL POLY LIFE MULTI SOUL
cero
1. Modern Steps
2. 魚の骨 鳥の羽根
3. ベッテン・フォールズ
4. 薄闇の花
5. 溯行
6. 夜になると鮭は
7. Buzzle Bee Ride
8. Double Exposure
9. レテの子
10. Waters
11. TWNKL
12. Poly Life Multi Soul

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サチモスが過去のスタイルにもうGood Nightしたわけだが、
サチモス程では無いとはいえ彼らもまた微妙に変わったな~
と思ったのがこのceroの最新作『POLY LIFE MULTI SOUL』だったり。

新作とは言え去年リリースされたアルバムなんですけどね。
ゴメン、CDショップ大賞を見て新作出てたの知ったんですわ。
遅ればせながら最近聴いたのです。んもぅ、誰か教えてくれよ。


ceroと言えば一昔前は良くサチモスと同じような括りの音楽として
語られる事が多かったバンドだ。ceroの方がかなり先輩だけどね。
そしてヒジョーに音楽評論的なウケが良いバンドでもある。

彼らの前作『Obscure Ride』は今や2010年代の名盤として
色んなメディアで語られるほどのマスターピースとなっている。


俺もこのアルバムは好きだったなー。

きめ細かくて丁寧に造りこまれたアルバムで、
シルクのような舐めらかな肌触りの音楽を実現していた一枚だ。
まぁ上級国民じゃない俺はシルクの衣類なんざ持ってないんだけどな。
綿とポリエステルで生きている。下級国民なめんな。


しかしceroのこの『Obscure Ride』については、
今聴いても時代の最先端を走っていた音楽だと感じられるし、
それと同時に「評論家ウケしそうだな」とも感じられる。

そう、音楽にはやっぱりあるんです。”評論家が好きそう”な音楽が。
長年音楽聴いてるとなんとなく分かってくるんだよ。
あーこれ評論家が好きそうなヤツね」という匂いを。



ceroはもうそういうスメルが漂いまくってるバンドだったわけですよ。


勿論、音楽評論家の視点というのは面白いものもいっぱいあるし
やっぱり普段から邦洋問わず時代の先を行く実験的な音楽を
色々聴いている方々の意見というのは下級国民には参考になる。

だが一方で当然ながら評論家が支持する音楽だけが良いモノでは無く、
最終的は皆それぞれが良いと感じた音楽が大切にされるのが平和的だ。
皆の趣味趣向が細分化している現代では特にそうなんだと思う。


では、ぐだぐだと前置きをたっくさん並べたところで本題。
そんな高評価バンドceroの最新作『POLY LIFE MULTI SOUL』から
リードトラック『魚の骨 鳥の羽根』です。



…うぐぐぅ…。
これまた小難しい音楽をやりおってからに…。

こういうとこだぞ!ceroが評価が高いのは!
なんとなく分かるでしょ。「あーこれ評論家が好きそう」ってのが。

とにかく曲の全貌が掴みにくい。
目まぐるしく音やグルーヴのバトンリレーが発生して、
ボーカル高城さんの声によりうまく繋ぎ合わさっているような音楽。
あと何度見ても曲のタイトルが一瞬「馬の骨」に見える。


この『魚の骨 鳥の羽根』だけじゃない。
今回のアルバムは全体がもうこんな感じで捉えにくい構造になってる。
前作に比べると非常に複雑で何とも形容し難い曲のオンパレードなのだ。

ちゃんと昔からのceroっぽさもありはするんだけど、
しっかし変わったなーと思う。平成もいよいよ大詰めになって、
意識的だか無意識的だが知らんけど皆が変化を意識しているのか?


そして曲から飛び出してくる音の要素が最早バンドのそれじゃない。
サポートメンバーの音、コーラス、そして織りなされる変則リズム、
どれもが一般的にバンドと呼ばれる形態から発せられる音楽ではない。

もうみんな分かるでしょ?これぞ「音楽的評価高ぇ~」って話だ。
良く分からんけど飲み込まれてしまう空気感。これが最新型cero。
聴きなさい!圧倒されなさい!なんてったって高評価バンドcero様だぞ?


ただ正直な感想を言うと、これまでのceroの中でもかなりディープで
とっつきにくいアルバムだなと思った。スーッとは入ってこない。
上級国民には入ってくるんだろうけど下級国民には入ってこなかった。


それでも『Double Exposure』や、
ラストを飾る8分半の壮大なタイトル曲
『Poly Life Multi Soul』はノリやすくて気持ちいい曲である。



特にやっぱこの『Poly Life Multi Soul』は、
ceroの集大成的な感じがしていいですわー。
直前のちょっと落ち着いたナンバー『TWNKL』からの流れも
アルバムのラストを飾るに相応しい展開で聴き応え十分だ。


今作は以前にも増して”凝った”アルバムである事は間違いない。
間違いなくceroは進化し続けているし、支持される理由も分かる。
けど俺の好みの話をすると、やはり前作『Obscure Ride』が良かったな。

話は少しそれちゃうけど、この前見事にCDショップ大賞を獲得した
折坂悠太の『平成』もね、凄いんだろうけど好きでは無かったんよ…。

このアルバムもceroのこの『POLY LIFE MULTI SOUL』や
星野源の『POP VIRUS』と並んで2018年の傑作と評されている作品。
でもやっぱ俺が好きになるかどうかは違うよねーという話で。

つーかこの『平成』、全然レンタルショップに置いてないんですけど。
Spotifyで聴けるからいいけどさ、一応音楽データも欲しいんっすよ。
あ、買えって話ですよね。すんません。下級国民はそんな余裕無いの。


つまるところ音楽評論には振り回されたくはないけど、
でも逆に自分の好き嫌いは一旦置いといて
「なるほど、こういう音楽が最先端なのか~」みたいな
聴き方もしたいですね。そうすると見えてくるものもあるというか。

そんな事を改めて考えされられた『POLY LIFE MULTI SOUL』。
でもこういう難解なアルバムに限って
後から好きになったりする場合もあるのでそれもまた面白いところだ。

平成の終わりに、聴いておきたい一枚なのかなと思います。
「沢山の人生、多くの魂」に幸あれ。


【採点】
・音楽的評価高ぇ  50点
・平成の集大成   20点
・既にバンドを超越  5点
・やっぱり馬の骨に見える
          -3点
72点