脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】Vampire Weekend / Father Of The Bride [2019]


嫁のお父さんに何送ろう。

Father Of The Bride Father Of The Bride
Vampire Weekend

曲名リスト
 1.Hold You Now
 2.Harmony Hall
 3.Bambina
 4.This Life
 5.Big Blue
 6.How Long?
 7.Unbearably White
 8.Rich Man
 9.Married in a Gold Rush
10.My Mistake
11.Sympathy
12.Sunflower
13.Flower Moon
14.2021
15.We Belong Together
16.Stranger
17.Spring Snow
18.Jerusalem, New York, Berlin

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嫁のお父さん」と言われると、
皆さんはどんなイメージをお持ちだろうか。
人によってはちょっと恐れ多いという方もいらっしゃるかもしれない。

幸いにして俺の嫁のお父さんは色々良くして下さる方なので、
非常に助かっている。先日もミニトマトの苗をくれた。
有難う御座います。枯らさないように育てます。

俺の場合は俺の親より嫁の親の方がかなり近くにいるので、
結構な頻度でお邪魔してるし、なんならパンイチで嫁の実家を
うろうろしているレベルである。やめた方がいいとは思うけど。


さて、家族の数だけ嫁のお父さんの像も様々なんでしょうけど、
アメリカのインディーロックを代表するバンド
Vampire Weekendの最新アルバム『Father Of The Bride』、
つまりは「花嫁の父」がなかなかに話題を呼んでおりますね。


今や海外ではロックの勢いがどんどん衰えているわけなんだけど、
それでもやはりたまにこういう事があるからまた面白い。

2013年、音楽メディアから大絶賛された
Vampire Weekendの3rdアルバム『Modern Vampires Of The City』。
全米1位も獲得し、この年の洋楽の年間ベストと言える一枚だった。

そんな前作から6年もブランクが開いたけど彼らはまた戻ってきた。
小学生が入学から卒業まで経験する月日が経っていたにも関わらず、
前作とほぼ同じくらいの売上でまたもや全米一位を獲得

ますますロックバンドの存在感が薄くなる中での
前作と変わらぬこの人気っぷりったら!Vampire Weekendしゅごい。
ロックバンドとしての意地みたいなものを感じずにはいられないぜ。


と言いつつ、ジャケットデザインが
これまでの3作の流れと明確に異なるのはやはり気になるところ。
カニエのtwitterのアイコンに似てるとか言われているらしいけど。

ともあれ、あれだけ絶賛されたバンドの久しぶりの新作だけに
期待せずにはいられないのが本音でしょう。


オープニングトラック『Hold You Now』で
ちょっとゴスペル的(と言っても明るいタッチ)な幕開け。
そして次曲『Harmony Hall』へ。



やーいい曲やね『Harmony Hall』!

移り行く音楽シーンの中でもインディーロックのカラーを失わずに、
堂々と自分達の音楽を見せつけてくるその風格。うーん、さすが。

MVではボーカルのエズラがキッチンで料理してます。
ミルクを注ぐシーンがもこみちのオリーブオイルのそれ。
エズラって料理もできそうやな…。とにかくエズラの絵面が強いです。

そういやヴァンパイア・ウィークエンドって
この6年間の間にキーボードのメンバーが抜けたりして
色々あったっぽいけど、フロントマンのエズラさんがいれば
ヴァンパイア・ウィークエンドの絵面になるんですね。エズラ大事。


アルバムのリード曲とおぼしき『This Life』。



こちらはハーフパンツのエズラの絵面が決まっている。勝俣のそれ。

うーむ、しっかりヴァンパイア・ウィークエンドしてるなぁ。
アルバム全体としても前作よりもやや原点回帰して初期っぽい匂い。
でも『Sympathy』みたいな「おっ!?」みたいな曲もあって
やはりこれまでの彼らとは違うカラーも打ち出しているのは分かる。



廻る地球のMVがゴー☆ジャスさんのそれ。


しかし今回のアルバムタイトル『Father Of The Bride』は
エズラが映画『花嫁の父』を観た事からつけたらしい。
俺はこの映画を観た事はないんだけど、
アルバムのタイトルにするくらいだから相当影響を受けたのかね。

そういやエズラってほぼ俺と同世代なんやね。
あの傑作『Modern Vampires Of The City』の時って
20代だったんかよ…。エズラ…恐ろしい子!


しかしあのアルバムでの成功後、
やはりエズラにもバンドにも転機があったようだ。
売れるという事はそれはそれでまた別の苦悩が生まれるって話は
どんなアーティストからも良く耳にする話。

エズラもこの6年の間に様々な事を考え、
自分の中に落とし込んで準備をしてきたようだ。
それが今回のアルバムだと考えると確かに納得がいく事も多い。

他のアーティストとのコラボだったり、
あとアルバムの長さもこれまでのアルバムよりも明らかに長くて
かなり溜め込んでいた事も伺える。表現したかった事、
実験したかった事がいっぱいあったんだろうね~。



無邪気で軽快な『Sunflower』。Eテレで流れてそう
面白い。子どもとかがハマりそうな音楽だ。

そういやエズラはこの6年の間に子どもも出来たんだよね。
結婚はしていないらしいけど、パートナーって表現をしていたので
事実婚って形なのかな。そういう背景も今作の「花嫁の父」という
テーマに繋がっているんじゃないかと思われます。



あとエズラが日本のアニメ好きって知って勝手に親近感。ホント勝手。
しかしママレード・ボーイが好きってのは意外だ…。

ちなみに今作の『2021』という曲は、
なんと細野晴臣の『Talking』という曲をサンプリングした曲らしい。
細野晴臣が海外で再評価されているとは聴いていたが、
こんなところで使われているとはビックリ。

あとCDの歌詞カードの背面には日本の風景らしい写真が載っており、
日本の事にも思いを馳せながら(2021って事はオリンピック後?)
作られたアルバムなんて事を考えるとまた楽しい。


インディーロックの底力、まだまだ通用するんだという事を
見せつけてくれたヴァンパイア・ウィークエンド。
6年という充電期間は伊達じゃなかった!

しかし本来のロックバンドなんて
これくらいのポジションがある意味正解だったんだろうとも思う。
ルサンチマン精神というか、メインストリームに抗うポジションから
新たな風を吹かせてくるのがロックバンドの役割だったわけだ。

そう考えるとロックが下火の現状はチャンスとも言える。
ヴァンパイア・ウィークエンドの新作はそこを突いたような、
ナイスな一枚だったんじゃないかなんて事を考えた。

花嫁の父、色んな形があると思うけど
俺は感謝の心を忘れないようにしたいと思った。
今度の父の日は…何も考えてないや。


【採点】
・インディーロックの底力 40点
・エズラの絵面の底力   30点
・色々あった六年間     6点
・父の日のネタ切れ感   -2点
74点