脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】マカロニえんぴつ / ハッピーエンドへの期待は [2022]


ハッピーエンドへの期待はへの期待は


令和ももう4年になった。
2020年代も3年目になった。
コロナによって音楽業界も変化を余儀なくされている。

そういや最近ロックキッズって存在しているんですかね??

2010年代はそこかしこにロックキッズが生息していて、やれ何のバンドが熱いとかどこのフェス行ってきたとか、さぞかし人生楽しいんだろうな~みたいな若者で溢れかえっていたじゃないですか。あいつら最近どこ行った?みんな社会人になって品川駅の広告に文句言うタイプの人間に成長した?


そう、フェスやライブが激減したのもあってか最近あの邦ロック大好きキッズたちの勢いが感じられなくなってしまったんです。あんなに人生楽しそうだったのに。バンドのシャツとかタオルを普段着にしてご満悦だったのに。部屋に浅野いにおの漫画並べてご満悦だったのに。どうしたのかなぁーおじさん寂しいなぁー人生楽しそうだったひとがかわっていくのがかなしいよー(棒読み)


というか、邦ロック自体が世界的にみて元気すぎたんだよな。
まぁ個人的にそれは全然構わなかったんだけど、2010年代って世界的にはロック不遇の時代だったという認識です。しかし我らが日本ときたらロックがずーっと根強い人気を保っていてまさに不思議の国の日本という状況だったの。

それが最近さすがにちょっと落ち着いてきたなという印象。日本は洋楽の空気が時間差で伝わるんでね。数年前までイキイキしていたロックキッズたちに対して、時代が「ちょっと落ち着けお前ら」と要請してきたのだ。

KingGnu派だとか髭ダン派とかで盛り上がっていた時代だってなんかもう既に懐かしくなってきた今日この頃。まぁロックキッズ達の喧騒が聞こえない日々と言うのもそれはそれで穏やかでいいのかもしれない。バンドなんて本来日陰者なんだ。そうそう流行るような音楽でもないんだ。ロックキッズ達よ、しばし安らかに寝ておくんだな。


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おい、キッズを起こすなマカロニえんぴつ。


「なんでもないよ、」じゃねーんだよ。なんでもないフリして大人しくしていたロックキッズ共に燃料注いでんじゃねーよ。なんかこのMV随分話題になってんな。結構な勢いでマカえんブーム来てんじゃねーか。寝ていたロックキッズ達がみるみる元気取り戻してきてんじゃねーか。待ってましたと言わんばかりに息を吹き返してんじゃねーか。日本に平穏は無いんか。


そう、2021年に大躍進したアーティストと言えば間違いなく彼らマカロニえんぴつである。もう殆ど誰も観てなかっただろうけど、昨年のレコード大賞で最優秀新人賞を受賞したバンドで、しかも受賞に対してボーカルのはっとりが「取れると思っていました」などという他のバンドマンを敵に回すような発言までして話題となった、いけすかねー奴らである。


しかしマカロニえんぴつというバンド、実は結構前から話題になっていたバンドではある。

最初に世間の目に留まったのはおそらくこの『鳴らせ』だろう。
コレ、なんともう8年前となる2014年の曲である。実はそれくらい前から言わば長らくの間「ネクストブレイク枠」的なポジションに居たバンドだったのだ。

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ちなみにこの曲の動画、今のマカえんの公式Youtubeにはアップされていない。どういうことだはっとり。やっぱりこの時代は切り離したい過去なのか。はっとりのちょっとやんちゃしてました的な過去が映っているからなのか。まあ多分インディーズとメジャーの括りみたいなのがあってYoutubeも分かれちゃったんだろうけど。


そんなマカえんがここに来てついにブレイクを果たしたと言ってもいいだろう。当時はバンドなのかお笑いコンビなのか分からないバンド名だなとか思っていたけど、前述の「なんでもないよ、」のMVを観てちょっとだけ泣きそうになって「ああ、良いバンドになったんだな」と思った。でもやっぱりお笑いコンビみたいなバンド名だとも思った。

そんなわけで、音楽に詳しくない人に向けて書いてる当ブログも彼らのメジャー1stアルバムが出たとなればスルーするわけにはいかないんですわ。
満を持してと言わんばかりのタイミングで発表されたアルバム、その名も『ハッピーエンドへの期待は』である。まさにみんなが期待して待っていた一枚だ。

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冒頭から「ん?髭ダン?」みたいな出だしで、いきなりもうポスト髭ダン狙ってますみたいな勢いだ。(※髭ダンもマカえんも結成は同じ年)時代の音ってヤツを分かってるなマカえん。

ちなみにヒゲダンはポストミスチルと呼ばれる事もあるから、マカえんはポストポストミスチルという事になる。さらにミスチルはポストサザンと言われる事もあったからマカえんはポストポストポストサザンとも言える。どうだ、マカえんが凄いポジションにいる事が分かるだろう。

この気合いの入ったタイトル曲『ハッピーエンドへの期待は』でアルバムは幕を開ける。これから大人になっていく若者の心情を「ハッピーエンドへの期待は捨てるなよ?」と歌うアルバムの一発目にしてなかなか重厚な曲である。

アレか、『ハッピーエンドへの期待は』といい『なんでもないよ、』といい、なんか途中で話すのをやめる的なアプローチがいいんか?そうなのか?マーケティングとかで使える手法??教えて、はっとりさーん!


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そして続くトラックは『生きるをする』だ。もう言葉の使い方がはっとり作文なのである。小学生の時点でこんな書き方をしていたら先生から大きくハネられて矯正させられているハズなんだが、きっとはっとり氏の先生はとても寛大な方だったんだろう。じゃないとこんな日本語を使う子に育ちませんからね。とてもじゃないが義務教育の成せる業じゃない。

この曲は子どもと俺ら世代に人気のアニメ、『ダイの大冒険』のOPで流れていたので個人的には一番良く耳にした曲でもある。ただダイ大の曲と言うよりはマカえんの癖が強くてアニメのOPとしてはあまり認識できなかった曲でもある。


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これはCMソングになった『八月の陽炎』。

ギターのイントロだったり全体的なバンドサウンドが2000年代っぽくて好き。そしてはっとりの個性的な歌への日本語の乗せ方が感じられる曲である。というかこの曲は本当に懐かしい音が鳴っていて、はっとり自身が聴いてきた音楽的趣向が強く出ている気がするね。

いいぞマカえん。
なんだかんだでロックキッズはこういうバンドサウンドが好きなんだ。最近はこういう音楽が元気無かったからな。みんなそろそろ今の流行に飽きていたんだよ。コロナもあってみんなボカロに行ってしまって、動画だって同じような構成のモノばかりが流行っててさ。ちょっと陰鬱な雰囲気を出してさ、手書きのイラストを動かして、字幕をつけた動画にしておけばウケるんだよ。マカえんはそんな安直なやり方しな


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陰鬱な雰囲気で手書きのイラストを動かして字幕をつけた動画やってんじゃねーか!


なんだよこんちくしょう。結局ソレが流行りなんじゃねーか。
しかもなんかまたちょっといい感じのMVじゃねーか。今の時代、音楽だけじゃなくMVも大事だからな。マカえんはマーケティングが上手だなホント。


というかこのアルバム、タイアップが盛り盛りで事務所も売り出す気満々という事がめちゃめちゃ伝わってくる。14曲中10曲がタイアップ曲と言う過剰な売り出し方である。

まぁその点に関しては商業感丸出しという事で嫌い人も多いだろう。
俺も正直タイアップばかりのアルバムというのはあまり得意ではない。というのもタイアップ曲というのはやはり対クライアントを意識して作られる場合が多いので、ビジネスの匂いを纏ってしまうからである。

それがアルバム数曲ならまあいいがここまでアルバムを覆ってしまうと、正直アルバムとしての一貫性が生じずに、色んな曲の寄せ集めに陥りがちだからだ。(それを「バラエティに富んだアルバム」という言い方でポジティブに捉える方法もあるが)

だからアルバムからそういう匂いをいかに払拭するかが一つの課題になってくる。

ちなみにこの『好きだった(はずだった )』は昨年の王様のブランチのテーマソングだったらしい。ブランチみたいな陰キャがチャンネルを合わせると網膜が焼けるような番組で良くこんな曲を流したなという感想だけど。


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JR SKISKIというこれまた歴史的に見ても強力なアーティストたちがタイアップしてきた案件にもガンガン絡んでいくマカえん。勢いがありあまっている。

この曲は本当に初期のマカえんからは予想出来なかったような広がりを持った仕上がりになっている。言ってしまえばベテランが作るような曲だ。キャリアがそこそこあるとは言え、メジャー1stの曲と言われると疑ってしまうような出来である。

にしてもMVはメンバー間でソーシャルディスタンス取りすぎじゃないかな。


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こちらは映画クレしんの曲である。はっとりらしい言葉遊びとクレしんをしっかりと意識した歌詞。クライアントに対して誠実に仕事をこなす姿勢が感じられる。もうバンドマンというよりビジネスマンがお手本にしたいバンドである。

ちなみにボーカルはっとりの本名ははっとりではないらしいです。ユニコーンのアルバム『服部』から拝借したそうな。そして髪の毛のセンター分けは奥田民生意識だそうだ。彼の世代的にはもっと後なハズだが、音楽的ルーツは以外にも90年代初頭くらいまで遡るらしい。近年のバンドの中ではなかなか面白い音楽性だ。


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ただこうやって聴いているとマカロニえんぴつがここに来て台頭してきた理由も分かる気がする。レコ大の最優秀新人賞受賞を取れると思っていたという発言などから、ちょっとイキった口の悪いロックバンドのような印象を受ける方もおられるだろうが、そんなことはない。彼らの音楽は2010年代の邦ロックシーンを盛り上げていたバンドたちとは毛色が違うのである。

そもそも最近は「ロックかどうか」という視点ではあまり見られないし語られなくなってきた。特に若い人達はジャンルレスに好きな音楽を聴いているので、ロックがうんたらという意識を持って聴いてるのは俺らみたいなおっさん連中ばかりなのだ。


ここに掲載している彼らの楽曲を聴いて貰えれば分かるように、かつてのフェス中心だったバンド文化の時代から比べると、マカえんの音楽はインパクト重視の音楽ではなく繊細に聴かせる音楽となっている。そういう風にシフトしてきたのだ。

非日常感を味わう音楽と言うよりも、どちらかというと日常的でそばにいてくれるような安心感が感じられるだろう。マカえん自身も初期と比べると、そういった音楽を意識して作っているように見える。これこそが今の時代に受け入れられる邦ロックバンドなのかもしれない。


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こういう話になると「それは本当にロックバンドと言えるのか?」という面倒臭いおっさん連中も現れるのだろうし、まぁ確かにその気持ちは俺は良く分かる。基本俺もロックに煩いおっさんだからな。

ただ、かつてウジャウジャ蔓延っていた邦ロック好きと繋がりたい連中が元気がなくなっていた時期に、新たに群がる先として見つけたマカえんというバンドを「ちょっと毛色は違うかもしれないけど…ロックという事にして自分たちが楽しむ領域に巻き込んじゃえ!」的に(無意識的に)扱っているような、そういう捉え方も出来そうだ。

ロックって昔からいいように範囲を広げては「これはロックだ」と自分たちの仲間に仕立て上げて地位を保ってきたという歴史があるからな。これがロックの悪い癖だ。ロックってそういうとこある。


しかし、マカロニえんぴつは公式に自分たちをこう形容している。

「全年齢対象ポップスロックバンド」

そういう事だそうだ。ちなみに本人たち曰く、ジャンルはマカロックらしい。

全年齢対象なんだよ。大人も子供もおねーさんも対象だ。
そしてポップでもありロック。もうこれでいいだろ。マカロック最強。そういうこと。
邦ロックはマカロックへと時代を進めたんだ。かつてのロックはもう過ぎ去った。だから前時代を駆逐したという意味ではちゃんとマカえんもロックなんだよな。ああ何言ってるのか自分でも分からなくなってきた。


結論、マカえんはロックなのかポップなのか、はたまたバンドなのか芸人なのかは分からないし些末なことなのである。ただ一つ、確かなのは本人たちが自称しているのはマカロックという事。だからそれでいいだろ。マカロック。全年齢対象という驚きのジャンルだ。小さいお子さんにも安心して聴かせられますね。


タイアップ祭りでビジネス臭はあるものの、インパクト重視から脱却し繊細な方向へとシフトした現代の邦ロックシーンを象徴するアルバム。もちろん好みはあるだろうが、少なくとも今もっとも支持を得ているバンドの一つが彼らだという事は間違いない。なんだかんだで俺も結構聴いているし、是非とも今年聴いておきたいアルバムの一つだ。


ちなみに洋楽は数年前から再びロックシーンが賑わってきている。そして今年はさらに盛り上がりそうな機運もある。

という事は…邦楽でもこれから時差的にロック人気に火が付き始めるか…??

マカロックの今後に期待しつつ、次の時代に備えよ。


【採点】
・邦ロックを再起動   40点
・対象年齢全年齢    30点
・怒涛のタイアップ    5点
・はっとりは芸名    -2点
73点

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