脱R論

一般人の一般人による一般人のためのゆるくテキトーな音楽ブログ。ロックから脱却出来るその日まで音楽ネタを中心に書き綴ります。

【Album】MUSE / Will Of The People [2022]


こういうのでいいんだよ!


分断が大好きな皆さまこんにちは!

今日も世間に溢れる様々な分断を観察して煽って楽しんでますか~??
はい、そろそろ老害サイドかなと自覚してきました☆四捨五入して40歳の男でーす。

今の世の中、若者の間で流行っているものに対して「何がいいのか分からん」と一言でも発しようものなら「出た老害老害確定!そうやってすぐ若い人たちを否定する!古い知識のままアップデート出来ていない!アップデートしろ!アップデート!」と文字数にして10倍返しくらいの勢いで反撃を喰らうわけです。


はぁ?うっせぇわ!


アップデートアップデートってお前らパソコンかよ。人間を機械みたいに言うな。いや俺も昔はカッコつけてアップデートとか言ってたと思うけどさ、もういい加減聞き飽きたわお前らのその「私は時代についていってる」アピール。いかに自分が先進的な人間か自慢するために、何度も何度も時代遅れの人間を馬鹿にしてさ。


もうウンザリだよ!

大体多様性がどーのこーの言うくせに老人の意見は多様性の括りに入らないわけですね。そして結局は助けてはくれないんでしょ?そうやって世代の分断を進めていくわけでしょ?悲しいよおじさん…。

つーか俺らが若者文化を分からないのと同じようにさ、若者だっておじさん文化を良く知らないっしょ??それに対して俺らは別に「この若害が!」とか言ったりしねーよ?互いに感覚が違うんだなって思うだけよ。それにおじさんだって本当は若者たちと仲良くお話したいんだよ。


「え~、じゃあおじさんたちが好きなモノって何?」



ハイ、待ってましたその質問!

俺らが好きなのはこれでーす!!





キタキタキタキタキタキタ、イギリスを代表するロックバンドMUSEの新作アルバム『Will Of The People』!!

これだよコレ!こういうのが好きなんだよ!俺らの世代はこういうのを待ってたんだよ!!!!


大がかりで派手なSF映画みたいなMV。退廃的な世界観。奏でられるギュイギュイしたギターロック。これこれ。これなんだよ!
思い出したよ。俺らの世代がMUSEに求めていたのはこういう音楽だったんだよ!



「え、、、古臭くてダサい、、、」



はぁ?この若害がっ!


お前らみたいなのがいるからロックが廃れんだよ。君たちはそもそもMUSEを知らんのか!?ロンドンオリンピックのテーマ曲も担当しためちゃめちゃかっこいいバンドだぞ!?2003年の3rdアルバム以降ずっと3年おきにアルバムを出してたんだけど、ここに来てその法則がついに乱れて4年ぶりにアルバムを出したんだぞ!?



俺達30代後半の人間にとって、お世話になった洋楽バンドの一つがMUSEだ。
特に2000年代のアルバムたちにはかなり思い入れが強い。勿論2010年代以降もリリースを続け英国ではチャート1位を獲り続ける人気バンドだ。

ただやはりどうしても彼らのようなギターロックは台頭してくる若い世代のトレンドに埋もれていき、俺も2000年代の彼らに見ていた熱狂は昨今ではあまり感じられなくなっていた。とりわけ前作ではかなりデジタルに接近していたのだが…


彼らのこの新作『Will Of The People』では、何か吹っ切れたかのようにあの頃の強烈なロックサウンドを携えたMUSEがまた味わえるのである!!





んほぉ~この感覚たまんねぇ~


この緊迫感とダイナミックさがMUSEのロックの持ち味よ。
分かる?オッサン達はね、みんな昔からこんな音楽でんほってきたんだよ。

1曲目のタイトル曲『Will Of The People』同様に2曲目のこの『COMPLIANCE』も歌詞がなんだか怖い。まるで暴走した独裁者たちの心理を表現するかのようなセリフで、この世のカタストロフ感を演出している。しかしこれがまたどことなくポップ。敢えて言うがポップな曲だ。

今の若者たちからすれば、MUSEの世界観の造り込み方はそれこそ80年代のメタルバンドたちみたいになんだか怖いものに思えるかもしれないが、MUSEは実は程よく大衆的でポップな感性を持ち合わせているバンドなのだ。ただそのポップな部分もなんかすんごいドラマティックに装飾するからちょっと怖く感じちゃうだけなのだ。

特にこの『COMPLIANCE』の「コンプライアンス!」と歌ってる部分なんてむしろ可愛さすら感じませんか?どこもかしこもコンプラコンプラ厳しい世の中ですよ。この曲は是非ともTVなどでコンプラを意識させる場面のBGMとして積極的に流して、視聴者に「何このBGM!?」と思われるくらいに活用して欲しい。

あとこの曲もMVって、あのピンクフロイドの『Another Brick in the Wall』に似てない??

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こういう部分が気になっちゃう時点でもう完全におっさんです。えへへ。



さて、今回のアルバムなんだけど、なんとすべての収録曲にMVが存在している

元々そういうコンセプトで制作が始まったアルバムなのか単純に資金力があるのか詳しくは知らないけど、とにかくすごいやる気なのは伝わってくる。

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ラウドなMUSEもいいがマシュー・ベラミーの繊細なボーカルが響き渡るこういったバラード曲もまたMUSEの魅力である。おっさん世代にはお馴染みのお天気お姉さん、チカちゃんこと高樹千佳子MUSEの大ファンなのもきっと彼のボーカルに魅了されたからに違いない。

ゴリゴリなロックが展開されている中でバラードが入ると少しテンションが下がってしまいそうなものだが、そうならないのがMUSEだ。常にダイナミズムを怠らない彼らは、バラードでも決してしんみりする事が無くパワフルだ。バラードもパワフルにこなす。これぞMUSEの流儀。


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もうね、こういう雰囲気のMVが好きな時点でおっさん確定です。
おっさんのリトマス試験紙に使えます。今思えば昔は結構流行ってたんだよね、こんな感じのSF映画の一場面みたいなMV。最近も意外とあるのかな?俺があんまり遭遇しないだけか??

この過剰な演出がダサくて古臭いんだよとか言われるかもしれないが、俺はこれをダサいと思わなくてもいけなくなるくらいなら、自分をアップデートなんかしたくない。いつまでもWindows7のままでいい。なんならvistaでもいい。例えサポートが切れても化石と呼ばれても構わない。いつだって俺は自分が好きなものをちゃんと好きと言い続けたい。


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アルバムも中盤に入り、マシュー・ベラミーの美しいボーカルが堪能できるバラード。シンプルなピアノ演奏だが相変わらずのカッコ良さ。マシューって年を重ねる毎に歌も上手くなっているのではない??一時期は声が出てないみたいに言われた事もあったけど、確かに以前ほどの迫力は無くなったかもしれないがその分丁寧になったように感じる。

ちなみにMUSEももうかなり長く活動しているので、気になってマシューの年齢を調べてみたらまだ44歳だったのね。1999年デビューなので当時は21歳だったわけか。凄いな。今の若い人からすれば44歳は十分おっさんかもしれないが、俺の感覚からすればまだ全然若い。

ちなみに蜘蛛が大嫌いらしい。カワイイ。
あと靴下フェチらしい。靴下を履いた女性に魅力を感じるとか。らしいぞ高樹千佳子


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2000年代おじさんなら伝わるハズ。このゴシック感、スリリングな曲展開、タイトな演奏、B級映画っぽい映像。これでこそ俺らの世代のロックである。待ってたぜMUSE。今の若手アーティストには無いゾクゾクをくれる。そこにシビれる!あこがれるゥ!

そして今回のアルバム、彼らにクイーンっぽさを感じたのは俺だけじゃないはず。
映画『ボヘミアン・ラプソディー』の大ヒット以降、かつてのグラム・ロック音楽を再評価する空気が生まれたがその影響も少なからず受けているのだろうか。

それで最近は若者の中でも結構クイーンのような時代のロックへの憧れを抱く者も増えてきたらしい。今作はそういった層にも響く内容になっているので、案外若手もすんなり聴いちゃってたりするのかもしれない。うん、ごめん、若手ディスはよくないな。


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「殺るか殺られるか」。物騒なタイトルではあるがとてもドラマチックな一曲。

演奏が熱を帯びていき、徐々にエネルギーが溜まっていくような展開でボルテージが高まる。この高カロリーでガツンとくるこの感覚こそが俺らのロックなんだよ!いくら時代遅れと言われようが、俺らはこの圧倒的なロックを耳に流し込んで育ってきた人間なんだ。面構えが違う。

というか、MUSEって今の世代の若手バンド達からはヒーロー的なバンドで多くのリスペクトを集める存在だと聞いている。俺にとっては青春時代に聴いていたバンドなんだが、リスペクトされる側にバンドになっていたんだと思うと時の流れの早さを実感する。なんだかんだ言ってもMUSEは後進に並々ならぬ影響を与えているバンドってわけだ。


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アルバムも終盤に近付き、ここで哀愁を感じるMVの一曲。

今回のアルバムのMVに超打率で出現している仮面の男たちだが、アルバムの前半のMVでは怖くて無機質な存在だった彼らが、この曲では何かを悟ったような自分の中の感情に向き合ったような一面を見せる。

抑圧から解放され、そして人間の温かさと愛を知る、そんな優しげな歌。
ツンデレがようやくデレフェーズに入ったような心地がする。


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あああああカッコイイいい!この緊迫感!スピード感!ワクワク感!

みんながみんな「変化しろ!変化についていけない人間は去れ!」とか言う、うるせー時代においてこの実家のような安心感を感じさせてくれる音楽。俺自身、洋楽のトレンドも昔と比べると随分変わったなぁと思っている中で、MUSEのこの安定感には頼もしさすら感じています。マジでいつかお中元とか送りたい。


ちなみにユーフォリアは『多幸感』という意味だ。でも歌詞の内容はそのまま幸せを歌ったわけではなく、ややディストピアを想起させる内容。あのユヴァル・ノア・ハラリ氏が『ホモ・デウス』で言っていたような未来(それでも人類にとっては幸せかもしれないが)に近いものを感じる。

MUSEは今回のアルバムを制作するにあたり、昨今世界を騒がせている様々な問題にとても影響を受けていると語っていた。勿論音楽として楽しむのもいいんだけど、彼らのそういう真面目な部分もちゃんと受け取っていきたいね。


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そしてラストの曲。確かに全部の曲にMVがある!スゲー!
…と思いきや、なんかさっきの『EUPHORIA』と多分同じ場所で撮影してそうなMVである。コストカットの波はMUSE程の大物にも襲い掛かっているのか…。ただ先程とは服装は変えているっぽい。

「FUCKING FUCKED」とかいうまるでコンプラを意識していないワードが気になる曲名である。まぁ「我々はカオス状態だ」みたいなニュアンスだろうか。最後の曲なのだがだからと言って綺麗に締めるのではなく、敢えてZガンダムのラストみたいな不安で不穏な空気で終わらせてくる。良い。さすが俺たちのMUSEである。


総じてかなり満足度の高いアルバムだった。
特に最近、洋楽の大御所たちの作品が自分の感性に合わなくなってきているなと感じる事も多かった中で、こういったアルバムは自分みたいな老害化が始まった人間にとってはとても嬉しい一枚だ。

新しい事だからってそれが手放しに良い事だとは限らない。「古き良き」という言葉もあるように、古い事にもまた良さがある。実際にMUSEはこのアルバムでもしっかり全英1位を獲得し、その人気は今も尚健在という事を知らしめた。彼らの魅力はまさに時代を超えていると言える。


「時代は変わったんだ!オールドタイプは失せろ!」


そんな事を言われても、やっぱり”ホンモノ”ってのは格が違うんだよなぁ。


「まだだ!まだ終わらんよ!」


(令和にZガンダムネタやってるのがもうおっさん…)

(あと来月から始まる新ガンダムも楽しみ…)



ただちょっと不満を言わせてもらうと…ジャケットはダサいと思います…!



なんだろう、とてもB級映画っぽい…。ジャケットは昔が好きだったなぁ。
もう亡くなったけどストーム・ソーガソンが手掛けていた時期は大好きだった。


あと収録時間だけど、アルバムトータルで40分に満たないのも個人的にはスマートで良ポイントだ。

なんか最近の洋楽アルバムってなんか冗長的で長尺の作品が多かったんだよー。特に誰とは言わんけどさ、大物ほど長いアルバム作ったりね。まぁ別に長くても良い物は良いんだけど、どちらかってーとスパッと曲を捨てきれていない、折角だから収録しときたい精神みたいなのを感じてしまったわけよ。

だから今回のMUSEのアルバム時間には好感が持てた。

特にタイパ重視の現代人にとっては、これくらいの長さがちょうどいいのかもしれない。昔ならCDにいっぱい曲が収録されているとお得!みたいな気持ちもあったかもしれんが、サブスク時代になってその感覚すらなくなってきたし、もっとみんな勇気をもって断捨離しよう。


ちなみに来月はまた洋楽の注目作が色々リリースされる月なので楽しみだ。
ロックおじさん達のささやかな楽しみ。アップデートなんかできなくたっていい。やっぱり俺らは俺らの世代の音が好きなんだ。それを改めて認識することが出来たMUSEの新作だった。ありがとう、MUSE


【採点】
・これぞ俺らのMUSE   50点
・全曲MVで聴けちゃう  30点
・来月のガンダム楽しみ  5点
・ジャケットはちょっと…  -1点
84点

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