【Album】Rina Sawayama / Hold The Girl [2022]
愛に気付いて下さい。
やってしまった…。
久々に俺はやってしまった。
この現代日本において最も忌避される行為の一つ、犯してはならない禁忌、令和の七つの大罪の一角、「ウザイ先輩ムーヴ」である。
自営業になってからというもの色んな人と話す機会がめっきり減ってしまった上に、コロナで気軽に人とも会えなくなった事もあった反動で、最近の俺は暫く会ってなかった人と所謂”コミュニケーション”ってヤツをとりたくなっていた。
それでちょっと前に久しぶりに前職の後輩たちを誘って呑みに行ったのだ。楽しかった。少なくとも俺は楽しんでいた。
しかしそこで俺はやってしまったのだ。別にアルコールも入ってない癖に、あの「ウザイ先輩ムーヴ」をかましてしまったのだ。
やらかした…。
その時は全然そんなつもりなかったし普通に会話してたつもりだった。でも帰り道で気づいた。「あ、あの時の俺、ウザかったかも…」と。俺はその日、家族とは違う部屋で寝て、まくらに顔を埋めて足をバタバタさせながら一人で泣きながら床に就いた。
「君たち、全然洋楽聴いてないでしょ!?」
これです。ハイ、やっちゃいました。
自称音楽に詳しい奴が言ってしまいがちなセリフ第4位。あんなに注意してたのに……場の勢いでついつい俺はこのセリフを言ってしまったのだ。ちなみに第1位は「それ2年前から知ってるわー」である。
ずっと人に会って無かった反動って怖い。。。しかも相手が後輩とかさ、ここが先輩風ビュンビュン吹かせるタイミング!とか思っちゃうんだろうな…まぁそこが俺の甘さって事…。衝動を抑えられなかった時点で俺の器の小ささが後輩たちにもバレてしまったってわけだ。
きっと俺がいなくなった後で「えーマジ洋楽厨!?」「キモーイ」「洋楽厨が許されるのは小学生までだよねー。」「キャハハハハ」などと言われてるに違いない。あーもうやだやだやだ!あーもう!
…ふぅ。こんな時は『ぼっち・ざ・ろっく』観て落ち着こう。
は~こじらせたロック好きの心が癒されていく~。
やっぱ孤独こそが最大の安心なんよ。そうだ、俺みたいなのが人と関わろうなんてのがそもそもの過ちだったのだ。音楽なんてのはな、ぼっちで楽しむのが一番なんだ。つーかぼっちちゃんクソかわいいな。
そんなわけで今日も俺は一人で壁に向かってボソボソと音楽の話をすることにした。
そう、洋楽の話である。
(K-POPを除く)洋楽がここ日本において殆ど聴かれなくなっている事実は、もう2010年代から顕著な傾向だし、今年出たハリー・スタイルズの『Harry's House』の本邦での認知度からもお察しである。
しかし洋楽厨の皆様なら、ここ最近の洋楽がアツい事も重々ご承知かと思います。
だから俺もその辺りの洋楽の魅力を是非とも人に教えたくて、あくまで親切心から俺は洋楽の話を後輩に伝えようとして見事に自爆したわけなんですケド(爆笑)、まぁ世渡り上手な皆さんはそんな地雷を踏むこともなく楽しい日々を過ごされているんでしょうね。クソが。
特に最近はThe 1975とArctic Monkeysという時代を代表する2組のバンドが立て続けにアルバムをリリースして話題になっている。
The 1975の新作は、前々作・前作が非常に良かったのもあって個人的には物足りなかったけどさすがという内容の良いアルバムだったし、アクモンは前作が個人的に「うーん…無理!」だったのに対して今回は聴き心地が良く(それでももうちょっと”重さ”が欲しかったな…)前作に比べりゃ全然好き寄りのアルバムだったと思う。
と注目の洋楽アルバム2作の感想を秒で終わらせて。
今回俺が壁に語り掛けるアルバムはそれらの話題作ではない。
リナ・サワヤマの『Hold The Girl』。コレである。
言い切っていい。これが俺の中の今年のナンバーワンアルバムだ。
今年もあと2ヵ月残した上で、俺の中でこれを超える作品はもう今年出ないだろうという結論に至っている。(一応アクモンとかを聴いた上で言い切りたかったのは内緒)
「…リナ・サワヤマ?」「え?日本人だよね?」「邦楽じゃないの?」
はぁー。。。。。(クソでかため息)。
…そうやっていつまでも名前で判断してっから時代を見失うんだよオマエラはあああ!
上記のアルバムタイトル曲『Hold The Girl』聴いたか!?
とりあえず曲を聴けば分かるだろ!?こんなの邦楽には無いだろ!?
洋楽の魂を感じただろ!?つまり彼女は洋楽って事なんだよ!!
(※洋楽厨は邦楽を下に見る傾向にあります。)
実際にリナ・サワヤマは新潟生まれのイギリス育ちの日本人で、ロンドンを拠点に世界に向けて音楽活動を繰り広げるまさに正真正銘の「世界で活躍する日本人」というわけなのである。
そしてなんと彼女、このアルバムで全英3位を獲得したのである!
おらおらおら、「世界で活躍する日本人」ってワード、みんな大好きだろ?だからもっと盛り上げんかい、リナ・サワヤマを!まだ足りねぇんだよ日本国内での彼女の話題がよぉ!!せめてリナ=インバースくらいの知名度になってくれよおおお!!!
そんなリナちゃん、実は朝の情報番組、スッキリに出たらしいね。
スッキリはたまーに洋楽アーティストを紹介してくれるよね。残された良心かもしれない。でもごめん、我が家の朝はNHKかEテレなんだ。
そしてそのスッキリで披露された、今回のアルバムにも収録されている曲『This Hell』。テロップに表示されていた歌詞のなかなかの強烈さにお気づきであろうか。
「こんな地獄でも、あなたと一緒ならまだマシ」
スッキリもさぁ、折角だからこういうところを掘り下げて欲しいんだよなぁ。だからいまいちスッキリしねーんだよ。Eテレのピタゴラスイッチでギミックが完走した時の方がよっぽどスッキリするんだよこっちは。
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曲の中で繰り返される「This hell is better with you」のフレーズ。これがとても特徴的で、『This Hell』を彼女のアンセム的な位置づけとまで言える曲たらしめている要素だ。
そして邦楽恋愛脳連中は、この曲をも「地獄でもあなたを愛するなんてステキ♡」みたいな単純なラブソングとして受け取ってしまいそうだから始末が悪い。
(※洋楽厨は邦楽を下に見る傾向にあります。)
彼女はとても社会的・政治的なアーティストなのである。
勿論それだけではないところが彼女の魅力なのだがそれはまた後述する。
彼女は今年サマーソニックで来日したのだが、そのステージ上で同性婚の法制度化を訴える等のMCを行い話題になった。
そんな彼女が歌う『This Hell』は、性的マイノリティが置かれている状況を「Hell」と呼び、でもそんな地獄の中でもあなたと一緒にいる事の幸せを歌っている曲なのだ。それも、カッコよくスタイリッシュに。力強く、ポップに。
実際に彼女自身、創作活動を行っていく中でLGBTQのコミュニティと何度も関わっていたそうで、そういいう体験からもこの曲はより説得力と深みを増している。だからこの曲はLGBTQのコミュニティに捧げるアンセムでもあるのだ。(ちなみに彼女はパンセクシャルだそうだ)
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そしてまたこのアルバムは音楽性も素晴らしい。
この『Catch Me In The Air』は往年のカントリーのようなすがすがしさと流麗さを感じる気持ちいいナンバー。特に日本人には人気が出そうな曲である。
2020年の前作『SAWAYAMA』も当時そこそこ話題になったし評価も高かった。俺も当時評判になった時に聴いて確かにカッコ良いなと思った。ただ、ちょっと”彼女らしい音楽性”という面が弱かったように感じた。
イギリスは最近女性ソロ・アーティストの活躍が目立っており、ビジネスライクな言い方にはなるがいかに他と差別化できるかというのは重要だったのだ。そういう観点からは彼女の前作は確かにカッコ良かったが、良くも悪くも流行のオルタナポップ。音楽性としてはシーンに埋もれがちかもなという印象があった。
だが、そこを鮮やかにブチ抜いてきたのが今作とも言える。
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明らかに曲の幅が広がっている!!!
それもカラフルポップとかバラエティーに豊んだみたいな、そんないかにも月並みな音楽ライターが使いそうな言葉では失礼に値する程の内容。
いうなれば豊潤である。
どの曲もがじっくり聴き入るに値する純度と密度をもって構成された、これぞ「ザ・リナ・サワヤマ」と呼べるオリジナル・オルタナティブ・ポップ作品に仕上がっている。
埋もれるとか言ってマジでゴメン。前言撤回。もしタイムリープできるようになったら、真っ先に1年前くらいに戻ってリナ・サワヤマの件で過去の俺にローリングソバットしてくる事を約束する。
今回のアルバム、敢えて誤解を恐れずに言えばとてもJ-POPに接近したアルバムだと思った。
彼女は音楽のルーツとして邦楽(宇多田ヒカルや椎名林檎)を挙げている。勿論、イギリスでの生活が長いので洋楽からの影響も多大にあるわけだが、この彼女の経歴の独自性がきっと今回のアルバムの作風に結実しているのだろう。
おそらく前作までは、彼女もイギリスという音楽の最先端の環境の中でいかに流行の音楽についていけるかといった試みをしていたのではないだろうか。だがそれが吹っ切れたかのような解放感が今回のアルバムには満ちている。
邦楽のエッセンスが流行の洋楽に自然に溶け合っている。リナ・サワヤマはそれが自然体で出来てしまうんだろう。洋楽とJ-POPの見事なまでの融合。これはもうブルーアイズ・アルティメットドラゴン。
俺には分かる。彼女はきっとこういう音楽を自分の中に「見つけた」んだ。だから多分このアルバムには彼女もきっと自分で満足している。武道の師範っぽく言えば、今の彼女には迷いが無い。迷いが無い、すなわちそれは最強。私は最強。リナは最強。今のリナはジャンプ黄金期並みに輝いている。
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アジアンテイストを感じさせる導入から静かに立ち上がり、ビョークのような不穏さをちらつかせながらも、しっかりとポップの下地に足をつけている『Your Age』。
こういった多国籍、いや最早これは無国籍、そんなリナサウンドの世界が味わえるのもまた彼女のサウンドの魅力だ。
そしてちょっと聴いただけでは分かりにくいかもしれないけど、細かい部分に感じる「J-POP味」。おそろしく細かいJ-POP味。俺でなきゃ聴き逃しちゃうね。
しかし「J-POP」というと親の仇みたいに嫌う洋楽厨も昔から一定数いる。
そしてそういう層は仮に前のアルバムを評価していたとしても、この『Hold The Girl』はおそらく響かない。多分「昔のが良かったなー」と自称音楽に詳しい奴が言ってしまいがちなセリフ第2位を吐いている事だろう。
確かにAメロBメロサビと分かりやすいJ-POP的な構成の曲が多いとは思う。そしてその展開をベタだと評する向きも分かるっちゃ分かる。まあそれでもいい。それも立派な感想だ。そういう方々がこのアルバムをスルーするのは致し方ない。
だったらそこで俺はそういう奴らを「リナちゃんの魅力が分からないのは悲しい事なんだよなあ~」とか思いながら、憐れんだ目で見てやるし。洋楽を崇拝し邦楽を馬鹿にしてきたやつら、そうやっていつまでも殻に閉じこもっていればいいさ。
あ~~勿体ないなぁ~~!こんなにステキなのになぁ~~!
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この『Hurricanes』なんか特に日本人には分かりやすい良さがあるだろう。
MVもカッコ良い。リナ氏が尊い。こんなストレートに良い曲もJ-POP憎しの連中には分からんのだろうなぁ~。
しかしだな、近年は世界的なスターとなったBTSの余波もあって、少しずつ海外からもJ-POPに目を向ける人がじわじわ増えてきた。するとなんだ、今まで邦楽を貶していた評論家気取りのヤツの中にも掌をくるっくる返して最近J-POPの再評価をする空気も出始めているのではないか??
お前らそういうとこがホンット信用ならねぇ!
結局お前らが好きなのは「音楽」じゃなくて「情報」なんだよ。色んな評論を読んで知識はあるのに肝心の自分が無えんだよ。
これでリナ・サワヤマがさらなる世界的評価を得て見ろ。どうせ「昔は良かった」とか言ってたやつらも「やっぱ今もいいな」とか言い出すに決まってんだ。てかもうアルバム出て1ヵ月経ったしとっくに掌返して悔しがってんじゃねーの???ぷぷぷ。
などと言いつつ、前作『SAWAYAMA』が悪かったのかというとそんな事は全然無い。
前作の収録曲のこの『STFU!』は彼女が注目を集めた曲の一つ。MVを観れば分かるように、アジア人への差別をテーマにした非常に社会的な楽曲である。バキバキのロックサウンドを織り交ぜながら、怒りのエネルギーを楽曲にぶつけている強烈な曲。
彼女はイギリスの名門ケンブリッジ大学に通っていたが、そこで人種差別を体験している。やはり白人の集団の中にいるアジア人というのは差別対象になりやすいのだろう。日本での外国人差別も問題になるが、日本人だって海外に行けばやはりそういう目に遭う可能性はあるのだ。彼女はそういった自身の経験から楽曲を制作している。
冒頭で紹介したアルバムタイトル曲『Hold The Girl』のMVをご覧になられただろうか。
何度もリナが家の外に飛び出そうとしても引き戻される演出がある。観た方の中にはもしかしたら一瞬「なんかコメディみたい」と思った人もいるかもしれない。だが彼女が置かれていた立場を考えれば、あの演出も抑圧させる女性たちの苦しみを描いたものだと容易に想像できるのだ。もし一瞬でもコミカルに思ったヤツがいたら、正直に謝っておきなさい。ごめんなさい。
つまり、彼女のアーティスト像をある程度理解していれば、彼女の楽曲がよりリアルにそして強固なイメージをもって感じられるようになるというわけだ。
勿論「そんな堅苦しい事考えずに音楽なんだから楽しもうぜ!」みたいな鑑賞スタイルも別に否定はしない。というかむしろどちらかというと俺もそっちが好きなんだよ本当は。
だが真面目な話、昨今の世界的な音楽事情というのは単純な音楽性では語れない状況にある。アーティスト自身に何かしらの哲学・信念があるかどうか(そしてそれを強く感じられるか)という点がとても重要視されるようになっているのもまた事実なのだ。
本日解禁されたばかりのMV『Frankenstein』。
2000年代のロックっぽさとスリリングなスピード感でゾクゾクさせてくるエッジの効いたナンバーだ。これも彼女の個人的な体験を軸に、人が誰かに依存する事とそこから脱却する事の苦しみを表現していると思われる。
彼女の楽曲は強いメッセージ性を帯び、それは時にとても政治的・社会的だったりするのだが、そのどれもこれもがとてもパーソナルな心情に結びついているのが特徴。これが彼女が単なる社会派アーティストで片づけられないポイントなのである。
彼女は「世の中のために歌います!」などと掲げているわけではなく、出発点がいつも自分自身の中にある。自分で自分と対話を繰り返してきたアウトプットとして楽曲を作り、それが結果として社会へのメッセージへと紐づいていたというだけ。そのナチュラルさ、個人と社会とのバランス感覚こそが彼女の強みになっている。
さて、そんな話を聞いた後だと「リナ・サワヤマってちょっと近寄りがたいかも…」みたいに思えるでしょ?なんか職場とかでも「語りかけんな」的なオーラ出してそうな、すっげえガチガチなアーティストに見えるでしょ??だってアルバムのジャケットからしてもう友達になれるハードル爆上げな恰好してるもんな。
でもね、このアルバムの告知をするリナちゃんを観てよ。
しゅ…
しゅき…♡
このギャップ!ヤバイっしょ、こんなんズルいってリナちゃんっ!!
あんなに滅茶苦茶本格派なアーティストの空気を纏っておきながら、こんなフレンドリーさも持ち合わせているなんて、あああああもう最強すぎる。リナは最強。
という事で彼女のアーティスト性は以前からキチンと一貫している。
でもこの『Hold The Girl』は、以前と一体何が違うのか??
前作の段階ではコロナの影響もまだ大きく、リナ自身の気分もかなり内向きになっていたうようだ。実際にコロナ禍にある時はセラピーを受けたりしていたような話もしている。
だが内向的というのはアーティストにとっては創作の原動力になる場合もある。コロナの状況下でもあっても良い音楽が色々生み出されたように、それは捉えようによっては新たな刺激になるケースもあるのだ。リナ・サワヤマもそんな鬱屈した環境の中で台頭したアーティストと言えるかもしれない。
だから彼女のバックグラウンドを強く打ち出した剥き出しの音楽性というのが、リザ・サワヤマの大きな注目点だった事は間違いない。そこでリナの事を好きになったリスナーの方も多いだろうし、彼女のストロング・スタイルに魅せられたファンはきっと彼女に勇気を貰っていた。
そう、言うなれば前作アルバム『SAWAYAMA』は「勇気」であった。
だとすれば今回の『Hold The Girl』は何か。
俺は「愛」だと思った。
そう、愛なんです。このアルバムは。
そしてそれがとてもつもなく大きい。大きくて優しい。
社会的なメッセージを込めるアーティストは沢山いる。先に述べたように、現代の世界の音楽シーンで戦っていくためにはアーティスト自身がストーリー性、伝えたい想いをどれだけ発信できるのかというのがカギになっているとまで言える。
だがそれだけでは一歩抜けられない。差別化ってのはどの業界でも重要。他の人ではない自分ならではの何かが無ければ埋もれてしまいがちだ。
そこで「愛」なんですよ!
これがシンプルながら素晴らしいアイディアだった。
俺はこの『Hold The Girl』に愛を感じた。リナ自身が辛い状況の中でも感じてきた愛、気付いた愛が楽曲の至る所に詰まっており、これが前作からの飛躍となり、明確な違いになっていると感じた。
今、時代は「愛」を求めている。
厳しい状況の中でも、いや厳しい状況だからこそ愛を見つける事が大事なのだ。リナ自身も色々な苦難を乗り越えてきたし、今だって苦悩の中にあるのかもしれない。もっと色んな愛を求め続けているのかもしれない。
しかしそれでも彼女は様々な愛に気付き、伸び伸びと自由に歌う歓びに気付き、それがリナ・サワヤマというアーティストのオルタナティブなポップの地盤を固め、確固たるアイデンティとなった。『Hold The Girl』はリナ・サワヤマの魅力が存分に発揮された傑作アルバムだと確信している。
つまり、みんな、愛に気付いて下さい!
イギリスの有名なある音楽賞の受賞資格に「英国籍」という条件があり、それに該当しないリナ・サワヤマがSNSに問題提起したという事件があった。
英国内でもエルトン・ジョンなどから称賛され人気を博していたリナだが、彼女が「受賞資格」が無い事でノミネート候補にすら選ばれていなかった事実がSNS上で拡散されていった。そして議論が巻き起こり、最終的には受賞資格が緩和される方向で変更される事となる。
リナ・サワヤマがきっかけで英国の賞までもが変わる事態になっていたのだ!
確かに音楽に国境はない。
そういえば「洋楽」「邦楽」に該当する意味の言葉って日本にしかないと聞いたことがある。つまり海外では音楽の出自は関係なくどれも一緒に「音楽」なんだ。日本は「邦楽」と「洋楽」でショップのコーナーが分かれていたりするけど、良く考えればそもそもそこにラインを引く事自体がおかしいのだろう。
なるほど、これは考えなければならない。
みんな変に洋楽だの邦楽だので拘りすぎなんだ。そうやって無意識的に音楽を区別するから、洋楽で邦楽にマウントするみたいな悲劇が起こる。言葉として、ジャンルとして、邦楽と洋楽を使い分けているうちに、自然とどこか別の扱いをしていたんだ。同じ音楽なのにね。
そしてリナ・サワヤマはそんな垣根を軽く飛び越えてくる存在だ。彼女の音楽は洋楽だの邦楽だののラインをぐちゃぐちゃにしてくれる。これはとてつもない事件である。彼女がこれからもっともっと活躍してくれる事を切に願っている。
ははっ、後輩に「お前ら洋楽を聴けよ」なんて言ってた自分が恥ずかしいぜっ…。
そうだな、洋楽も邦楽も関係ない、おんなじ音楽だもんな!
だったら俺が後輩に言うべきだったのはやはり違うセリフだったわけだ。
「もっと音楽を聴けよ!」
………結局クソウザイ先輩やん…。
【採点】
・2022年最強の一枚 50点
・国境を軽く超えてくる 30点
・もっと日本人に知って欲しい 5点
・第3位は「売れてから変わったよねー」 3点
88点